金融庁は25日、金融審議会「暗号資産(仮想通貨)制度に関するワーキング・グループ」の26日の議事次第(第6回)を公表した。
ワーキング・グループにおける審議の結果をまとめた報告書(案)も公開しており、その中の「業規制」の項目に、仮想通貨交換業者による「販売所」の運営に関する懸念点を記載。「取引所」の形態よりも収益性が高いため、顧客に対して販売所での取引を誘導しているのではないかとの懸念も指摘されていると報告した。
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現在、金融庁では仮想通貨に金融商品取引法(金商法)を適用する議論が本格化している。金商法の対象になれば、仮想通貨が分離課税制度へ移行して税率が最大55%から20%に下がる可能性も高まることから、最近の議論は投資家からも大きな注目を集めている。
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上述した販売所に関する懸念も金商法の適用を見据えたものだ。これは、報告書の「業規制」の項目の「個別論点」のパートに書かれている。
このパートに、交換業者には販売所と取引所の2種類の形態によってサービスを提供する企業も存在するとし、販売所形態での取引の方が交換業者にとって収益性が高いため顧客に対し販売所での取引を誘導しているのではないかとの懸念が指摘されていると記載した。
そして、金商法では、最良の取引の条件で顧客の注文を執行するための方針および方法を定めて実施する最良執行義務が設けられており、そうした観点から交換業者の顧客へのサービス提供が適切なものとなっているか検討されるべきであると述べている。
金商法の改正案は、2026年の通常国会に提出される予定だ。
報告書の最後では、今後も規制対応が必要であることを強調した。今回の報告内容が一層の利用者保護と取引環境整備、仮想通貨取引市場の健全性や国際的な信頼性の向上に寄与することが期待されるとしつつも、これで仮想通貨取引の全てが健全になるわけではないと述べている。
今回の規制見直しは、利用者保護と取引環境整備を図る必要性が高い、日本の交換業者での取引を主眼に置くものであると説明。そして、その規制見直しが及ぶ範囲はグローバルな仮想通貨取引の一部に過ぎないという点も認識すべきだとした。
交換業者を通じない取引に関しては、匿名性が高く、DEX(分散型取引所)をはじめとして、現時点でグローバルに十分に規制を及ぼすことができない領域が残っていると述べている。
その上で、今後もグローバルな規制当局間で連携を図りながら必要な対応を検討していくことが求められるとともに、今回の規制見直しについても適切にフォローアップを行い、技術や実務の進展等を踏まえて規制の過不足が認められた場合には不断の規制見直しを行っていくことが求められるとした。
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