DAT企業資産が20兆円規模に拡大も懸念浮上、ボラティリティ依存が課題=VanEckレポート
資産運用大手VanEck(ヴァンエック)は3日に発表した9月の月次レポートで、デジタル資産トレジャリー(DAT)企業のブームが継続しており、保有資産規模が約1,350億ドル(20兆円相当)に拡大したと報告した。そのうち53%は米ストラテジー社が保有する資産となっている。
DAT企業は、株式や債券の発行・販売を通して資金を調達し、それをビットコイン( BTC )やイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)購入に充てる「金融化」を活用することで、普通株の仮想通貨へのエクスポージャーを高める。
一部のDAT株は、将来的に一株あたりの仮想通貨が増加するという期待から、保有する仮想通貨の価値を上回るプレミアムで取引されている。
DAT企業は、さらなる仮想通貨購入の資金を得るため、自社株のボラティリティ(価格変動)に連動した証券を発行する際に、オプション取引の予測変動率(インプライドボラティリティ)よりも「はるかに低い価格」を設定。熟練した投資家は、株式や転換社債、ワラントなどを通じて「割安なボラティリティ」を購入し、「割高なオプションポートフォリオ」との間でヘッジすることで、利益を狙うことが可能になる。
しかし、多くの新興DAT企業は、特にオプション市場の流動性不足という問題に直面しており、投資家に対して大幅なボラティリティの割引を提供せざるを得ない状況となっているとレポートは指摘した。
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ボラティリティの大幅な割引の例として、VanEckは最大のイーサリアムトレジャリー企業であるビットマイン・イマージョンを取り上げた。
ビットマインは、株価61.39ドル時に、70ドルで普通株式を販売したが、この普通株には、追加購入権を行使できる2つのワラント(それぞれ21.61ドル相当)が含まれていた。本来なら合計104.61ドル(61.39ドル + 21.61ドル x2)相当のパッケージを70ドルという大幅な割引価格で販売したことになる。
110億ドル以上のイーサリアムを保有し、株式の取引量が最も多いDAT企業であるビットマインでさえ、ボラティリティを約75%過小評価する必要があったと、VanEckは指摘。トレーダーにとっては大きなチャンスだが、DAT企業がさらに仮想通貨を購入するためには、継続的なボラティリティが必要となることを、投資家は留意すべきだと付け加えた。
ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は、仮想通貨の価格変動に依存するDATを「ボラティリティ・リアクター」と呼んでいる。
仮想通貨のボラティリティはこの10年間低下しており、この傾向が続いた場合、DATによる仮想通貨購入資金の調達能力が脅かされ、mNAV(1株あたりの仮想通貨保有量)が低下することになるとレポートは指摘した。
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さらにレポートは、DAT企業がインプライド・ボラティリティを積極的に圧縮し、オプション(およびワラント)を売却することで収益を生み出す可能性について言及した。
セイラー氏は、ストラテジー社のmNAVが1未満となり、株式を発行できない状況下では、このアプローチを採用する方針であると述べた。
実際、セムラーサイエンティフィック(SMLR)やストライブ(ASST)などの大手DAT企業の株式が、mNAVを下回って取引されている現状があるとレポートは説明。
ビットコイン価格が大幅に下落した場合、その影響で他のDAT企業も同様の手法を取ることも予想されるため、セクター全体のボラティリティが減少する可能性があるとレポートは警告した。
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レポートでは、DAT企業の拡大に関連する懸念事項として、機関投資家によるイーサリアム( ETH )の蓄積とステーキングの影響について言及した。
ビットマインに代表されるようなイーサリアムに集中したDAT企業やETPを通じて利回りを得るために、機関投資家が長期的にイーサリアムを保有し、積極的にステーキングも行っているとレポートは指摘した。
機関投資家がイーサリアムをステーキングすると、ステーキング報酬として新たに発行されたイーサリアムが付与される。ステーキング量の増加に伴い、イーサリアムの供給量も増加することになる。
そのため、ステーキングされていないイーサリアムを保有する投資家は、報酬を得られないことに加え、価値の希薄化のリスクが高まることを認識すべきだと注意を促した。
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