米デジタル資産運用会社NYDIGのグローバルリサーチ責任者、グレッグ・シポラロ氏は5日付の週次レポートで、ビットコイン(BTC)および仮想通貨市場全体を圧迫している複数の要因を分析した。
単一の触媒では現在の下落を説明しきれないとしたうえで、マクロ・仮想通貨固有・テクノロジー市場にまたがる5つの逆風を整理している。
第一の要因として挙げられるのが、AI(人工知能)分野へのリスク資本の競合だ。シポラロ氏によれば、過去18カ月でAIは株式市場・ベンチャー投資・企業支出のいずれにおいても主役の地位を占めるようになり、仮想通貨と同じ投資家層を引き寄せている。変革的技術への投資機会を求める資金が、相対的にパフォーマンスの高いAI関連資産へ移動しているとみている。
第二の要因は、大型IPOによる流動性圧迫だ。スペースX、OpenAI、アンソロピック(Anthropic)、Databricks、アンデュリル(Anduril)などの大型非公開企業が今後数四半期以内に上場するとの観測が広がっており、機関投資家が既存ポジションを削減してIPO参加資金を確保する動きが、仮想通貨市場のフローに下押し圧力をかける可能性があると指摘している。
第三の要因は、米政府によるイランの仮想通貨資産差し押さえに関する報道だ。スコット・ベッセント財務長官がイランに関連する約10億ドル相当の仮想通貨資産を差し押さえたと発言したと伝えられており、政府が仮想通貨ウォレットへの可視性と制御力を従来以上に持つ可能性が示唆されたことが、「検閲耐性」という仮想通貨のコアな価値観に疑問を呈する形になっている。ただし現時点では追加の詳細情報が公表されておらず、NYDIGは市場がこの問題を評価するための証拠が不足していると指摘する。
第四の要因は、ストラテジーの市場における役割の変化だ。同社は先週、 32BTCを売却したことをSECへの提出書類で開示した。経済的な規模は軽微なものの、2020年以来継続的な買い手として機能してきた同社が売り手に転じたことへの心理的影響は大きく、市場関係者はその後の追加売却の有無を注視しているとしている。
第五の要因として、量子コンピューティングへの警戒感が再浮上していることも挙げられている。グーグルの研究者が楕円曲線暗号を解読するために必要な計算リソースの見積もりを大幅に引き下げたことを発表したのに続き、フランスの暗号研究者が同様の性能特性を達成する詳細な回路アーキテクチャを公開した。実用的な脅威の段階にはないものの、理論上の脆弱性と実際の実現可能性の間の距離が縮まっているとの認識が、追加的な不確実性として意識されている。
レポートの第二部では、現在の調整局面を過去の4年サイクルと比較分析している。BTCの現在の高値比下落率は52.7%で、2021〜2022年の77.6%や初期3サイクルの84〜94%を大きく下回る比較的浅い調整にとどまる。
オンチェーン指標では、MVRV比率(時価総額と実現価値の比)が1.2倍と過去サイクルの底値水準に近づいており、含み益保有比率(PSIP)は49%と底値形成の目安とされる50%を割り込んだ。長期保有者の損益比率(LTH-SOPR)は0.95と1.0を下回り、短期コインを含むaSOPR(移動コイン全体の平均損益)はほぼ1.0に位置している。
市場関係者の分析によると、これらの指標は投機的な過剰ポジションの解消が相当程度進んでいることを示しているとされる一方、過去の主要底値で見られたような完全な投げ売りの兆候は確認されていないと指摘されている。