次世代金融カンファレンス「MoneyX」では27日、「3メガバンクが語る金融の未来」と題したパネルセッションが開催された。
三井住友・みずほ・三菱UFJの3メガバンクグループからデジタル戦略の責任者が登壇し、AI活用の現在地からブロックチェーン・ステーブルコインが銀行ビジネスをどう変えるかまで、幅広い議論が展開された。
金融庁監督局銀行第一課長の三浦知宏氏がモデレーターを務め、以下の三名がパネリストとして登壇した。
三浦氏がAI活用の展望を問いかけると、各行から具体的な取り組みが報告された。
三井住友FGの磯和氏は、2024年10月に4年半分の予算として500億円をAI投資に充て、部門横断で誰でも予算を取りに来られる「CDIOミーティング」を毎月開催してきたことを明かした。1年間で約70件に予算を付け、「AI中島社長」のような社内向けAIアバターの開発やOlive(オリーブ)のコールセンターのAI化などを推進。
現在は200人規模の部門横断チームを組成し、優先順位の整理と「AI-Ready」なデータ基盤の構築に着手していると述べた。AI導入における課題として「自分の仕事が楽になるところまでは積極的にやるが、仕事が無くなると感じ始めるとケチをつけ始める。心の問題が結構大きい」と率直に語った。
みずほFGの上ノ山氏は、来期からCDOの肩書に「T(トランスフォーメーション)」を加えCDTOに変更することを明かし、AI・データマネジメント・ブロックチェーンや量子コンピューターを研究する「情報数理工学研究所」・CVC投資の4領域を管掌していると紹介した。バブル世代の大量退職が約5年に迫る中、「オペレーショナルモデルを本当に変えてこないと、今のビジネスすら維持できるのか」という大きな危機感を示した。
一方、コンタクトセンターの入り口にAIを導入した実験では、顧客の多様な問い合わせに対応する難しさが見えてきたと報告し、顧客接点でのAI活用は「少しずつチャレンジしていく」姿勢を示した。
三菱UFJFGの野呂氏は、ステーブルコインを銀行ビジネスの文脈で整理した。銀行が「金融サービス業」から「金融インフラサービス業」へトランスフォーメーションする中で、ステーブルコインは極めて重要なアセットだと位置づけた。具体的には、預金の流出を守る手段、KYC(本人確認)・AML(マネーロンダリング防止)などのノウハウを新たなレイヤーとして提供する保証機能、信託受益権型のスキームによるバランスシートの効率活用、そしてRWA(実世界資産)を通じた新たな投資機会の創出を挙げた。
一方で、QRコード決済の台頭を「みすみす見逃してきた大きな反省」と振り返り、足元で3メガバンクがステーブルコインの規格統一に向けて金融庁とともに取り組んでいることを明らかにした。「次世代の決済インフラであり、社会の構造改革の中に金融が一助となり得る入り口に立っている」と述べた。
磯和氏は、JPYCのトランザクションの約95%がAIエージェントによるものだと紹介し、「AIが主に使うお金がステーブルコインで、人間が主に使うものが現金という時代が来る可能性がある」と指摘。AIエージェント同士の取引における法的整理や、AI間の詐欺被害への対応など、既存の法制度では想定されていない課題が山積していると問題提起した。
上ノ山氏は、テクノロジー起点でユースケースを探す議論では「お客様が不在になってしまう危険がある」と警鐘を鳴らした。金融機関の根源的価値は仲介機能と信用創造にあるとし、「貯蓄から投資へ」の流れの中でも産業育成や社会の福利のために金融機関が果たすべき役割を常に考える必要があると語った。
野呂氏はまた、2年前にはステーブルコインの社会実装に確信が持てなかったと率直に振り返った上で、「ブロックチェーンの弱さをAIが補完する関係が出てきた」ことで状況が大きく変わったと指摘。「脳みそがAI、手足がトークン。この補完関係によって活用の余地が劇的に変わる」と述べ、金融機関は「金融インフラサービス業」としてレイヤー構造の中に組み込まれていく時代がすぐそこまで来ているとの見方を示した。
MoneyXは、ステーブルコインの正式認可が切り拓く「通貨の新時代」をテーマとした次世代金融カンファレンス。国内外から金融業界の有識者、大手金融事業者、スタートアップ、投資家、規制当局が集結し、技術革新・制度設計・社会実装をめぐる議論を展開する。参加登録は無料・承認制。日本最大のWeb3カンファレンス「WebX」を主催するWebX実行委員会が主催し、JPYC、Progmat、SBIホールディングス、CoinPostが企画・運営に携わる。


