次世代金融カンファレンス「MoneyX」では27日、「ステーブルコインが切り拓くリテール決済の未来」と題したパネルセッションが開催された。
Visa加盟店で使えるステーブルコイン対応カード、QRコード決済による店頭実装、ウォレットを軸とした手数料ゼロの決済基盤など、この1年で急速に広がったリテール決済の具体的なユースケースが報告された。
一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)代表理事会長の小田玄紀氏がモデレーターを務め、以下の三名がパネリストとして登壇した。
SLASH VISIONの佐藤氏は、USDCを即時チャージして全国のVisa加盟店で利用できるクリプトカード「Slash card」を紹介した。加盟店側は通常のVisaネットワークで日本円を受け取るため、ステーブルコインを意識する必要が一切なく、「社会実装に一番近いものではないか」と語った。
ネットスターズの安達氏は、同社が運営する決済ゲートウェイにUSDCを追加し、羽田空港でQRコード決済のPoC(実証実験)を開始したことを報告した。QRコードリーダーがあれば使うことができ、加盟店への精算もすべて日本円で行われる。安達氏は「想像の遥か上の数字が毎日決済についている」と手応えを語り、同社の1万7000社の加盟店網への展開に意欲を示した。
HashPortの吉田氏は、同社のノンカストディアルウォレットが116万ダウンロードを達成し、JPYCユーザーの84%がHashPortウォレットを利用していると報告。昨年末にはPontaポイントからステーブルコインへの交換やau PAYギフトとの接続を開始したほか、後払い型クリプトクレジットカードも発行した。また、店頭QRコード決済では取引手数料をゼロとし、ユーザーが「HashPort Wallet」を利用した場合、ガス代もHashPort負担とすることで「Web2に近い決済体験」を実現していると述べた。
小田氏がユーザー側のメリットについて問いかけると、各登壇者からビジネスモデルの根幹に関わる議論が展開された。
佐藤氏は手数料ゼロの継続には慎重な立場を示し、「周りのディストリビューターが商売にならなくなる」と指摘。一方で、ドルをはじめとする外貨を日本国内で自由に使えるというステーブルコインならではの価値を強調し、「できないことをブロックチェーンで実現することに価値がある」と述べた。今後は日本円ステーブルコインなど多様なステーブルコインへの対応を進める方針を示した。
安達氏はQRコード決済の黎明期を振り返り、「銀座一丁目から八丁目まで営業をかけたが誰にも相手にされなかった」と語った上で、ステーブルコインは黎明期のQRコード決済以上に認知度が浸透している点を指摘。加盟店がステーブルコイン決済で浮いたコストを使いステーブルコインに対し、自らプロモーションをかけるという、従来とは異なるビジネスモデルの可能性にも言及した。
吉田氏は、WeChat PayやAlipayが少額決済の手数料を無料にして資金をプラットフォーム内に滞留させるモデルを引き合いに出し、HashPortも同様にウォレット内での資金滞留を促す戦略を明らかにした。さらに、AI時代にドル建てステーブルコインだけが普及すれば日本経済が取り残されると警鐘を鳴らした。「日本円の決済インフラを作るということに非常にフォーカスしている」と強調した。
佐藤氏は、金融庁との対話のもと電子決済手段等取引業のライセンス取得を進めており、カードシステム内に日本円とステーブルコインの双方向交換を実装する計画を明らかにした。「日本人が通貨を選択できる未来を実現したい」と述べた。
安達氏は羽田空港での実証実験を皮切りに、通貨・チェーン・ウォレットを問わず「来るもの拒まず」のスタンスで加盟店展開を拡大する方針を示した。吉田氏は「ステーブルコインはAI時代の主要な通貨になる。それを国産で行うことが重要だ」と締めくくり、小田氏は「3年以内に非常に大きなマーケットになっている」との見通しを示してセッションを終えた。
MoneyXは、ステーブルコインの正式認可が切り拓く「通貨の新時代」をテーマとした次世代金融カンファレンス。国内外から金融業界の有識者、大手金融事業者、スタートアップ、投資家、規制当局が集結し、技術革新・制度設計・社会実装をめぐる議論を展開する。参加登録は無料・承認制。日本最大のWeb3カンファレンス「WebX」を主催するWebX実行委員会が主催し、JPYC、Progmat、SBIホールディングス、CoinPostが企画・運営に携わる。


