ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は26日、前バイデン政権で大統領経済諮問委員会(CEA)議長を務めたジャレッド・バーンスタイン(Jared Bernstein)氏と、同委員会エコノミストのライアン・カミングス(Ryan Cummings)氏による寄稿論評を掲載した。
タイトルは「Crypto Is Pointless. Not Even the White House Can Fix That」(暗号資産は無意味だ。ホワイトハウスですらそれを救えない)。バーンスタイン氏らは、トランプ政権の前例なき暗号資産(仮想通貨)優遇策にもかかわらずビットコインが昨秋の高値から約50%下落した事実を起点に、「暗号資産の失敗は政治的支援の有無ではなく、技術・経済両面での本質的な無価値さに起因する」と論じている。
記事の主な論点は以下の通り:
著者らは、「規制さえ整えば普及する」という業界側の最後の言い訳が、最も暗号資産に友好的な政権のもとで崩れたと指摘し、「言い訳は尽きた」と結論づけている。
カミングス氏は、LinkedInで記事を紹介し、「業界は合法的なユースケースの欠如を、バイデン時代の過剰規制のせいだと言い訳してきた」と補足した。規制が緩和され、言い訳がなくなった今でも、暗号資産の主なユースケースは「取引と犯罪行為の助長」に限られていると強調。「基盤となるブロックチェーン技術が、既存の手法に比べて極めて非効率であることに市場が気づき始めている」と締め括った。
この論評に対するSNS上の反応は様々だ。支持派、中立派、反対派がそれぞれの立場から意見を述べている。
一方で、近年の暗号資産インフラの進展や、新興国での需要増を考慮すると、この論評に対する反論の余地も見えてくる。
実用性という観点では、近年のステーブルコインの急速な普及を無視することはできない。イーサリアム上のステーブルコインは、すでに年間数兆ドルの取引に利用されている。
2026年BVNKステーブルコイン実用性レポートによると、ステーブルコインは「日常のお金」として特に新興国で需要が高まっている。
これらの利用は投機目的ではなく、実際の経済活動や日常的な決済に直結している点が注目される。
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バーンスタイン氏らによる「遅くて高価なデータベース」という批判についても、2025年以降のイーサリアム・アップグレード(特にFusakaやPeerDAS)により、レイヤー2(L2)技術が成熟したことで、手数料の大幅低下とトランザクション速度の向上が実現し、劇的な改善が進んでいる。イーサリアムは単なる暗号資産のエコシステムから、中核的な金融インフラへと確実に進化しつつある。
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また、多くの伝統的金融機関が、すでにブロックチェーン技術の導入を本格化している。
JPモルガン・チェースはブロックチェーンを基盤にした決済ネットワークを運用しており、Siemensやデジタル資産マーケットメイカーのB2C2 が、24時間365日のリアルタイム外国為替決済にこのプラットフォームを採用している。
ブラックロックは、米ドル建ての機関投資家向けトークン化ファンド「BUIDL(USD Institutional Digital Liquidity Fund)」を展開。オンチェーン上で現金同等の流動性を提供する新たなスタンダードを確立した。
さらに大手銀行による暗号資産のカストディ(保管)業務の提供も進んでいる。シティバンクは、2026年中にビットコインをはじめとするデジタル資産の保管サービスを本格開始すると発表した。
「暗号資産は無意味だ」という主張の根拠は、技術の成熟や実世界との統合が進むにつれて、徐々に揺らぎつつあるのではないだろうか。
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