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宇宙×ブロックチェーンで挑むインターネットの格差解消──衛星駆動型DePINプロジェクト「Spacecoin」が目指す新しい通信インフラ

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「世界初の衛星駆動型DePIN(分散型物理インフラネットワーク)」として、インターネットの接続格差解消を目指すプロジェクト、Spacecoin(スペースコイン)。創業者のTae Oh(テ・オー)氏は、Web3のパーミッションレスな特性と宇宙産業のコモディティ化が、誰もが参加できる新たな通信インフラを構築する可能性を秘めていると語る。

日本に対しては、宇宙産業や製造業での優れた技術力を活かした「ビルダー」としての協業に大きな期待を寄せるテ氏に、プロジェクトを始めたきっかけや今後のロードマップについて聞いた。

──イーロン・マスク氏が率いるスターリンク(Starlink)のような既存の衛星インターネットサービスと比べて、分散型であることの利点は何か。

テ氏:オープンで分散型のエコシステムの強みは、誰もが開発に参加でき、ニーズに合わせて自由にカスタマイズできる点にある。

テクノロジーには常に中央集権型と分散型の選択肢が共存してきた。OSで言えば、UnixやWindowsのような中央集権型に対し、Linuxがオープンソースとして登場し、ユーザーがハードウェアと接続するドライバーを自ら構築できるようになった。

スマートフォンでも同じことが起きている。中央集権的なAppleのiOSに対し、Linuxを基盤としたAndroidが登場したことで、サムスンやファーウェイなどのメーカーが独自の製品を製造できるようになった。これにより、市場はほぼ二分された。

ブロックチェーンも同じ流れにある。クラウドコンピューティングがAmazon AWSによって開拓された後、人々はパーミッションレスな選択肢を求め、イーサリアムや他のL1ブロックチェーンが開発された。

一方で通信インフラは、巨大な設備投資が必要なため長らく中央集権化されていた。しかし、SpaceXの登場で宇宙産業がコモディティ化され、衛星配備のコストが大幅に下がった。宇宙インフラの最大の利点は、地上とは異なり広域カバレッジを持てることにある。

この「パーミッションレスな接続性」を可能にしたのは、2つのイノベーションだ。1つは宇宙産業のコモディティ化。2つ目は、ビットコインをはじめとするブロックチェーンが、分散型ネットワークでも数兆ドル規模の価値を安全に維持できると証明したこと。Spacecoinは、この2つを融合させた取り組みだ。

──プロジェクトを始めたきっかけは。

テ氏:私が以前携わっていたプロジェクト「Creditcoin」では、先進国の遊休資本を新興国の実世界資産と結びつける取り組みを行っていた。その過程で、銀行口座を持たない多くの人々がインターネットにも接続されていないことに気づいた。

オフラインではサービスを提供する方法がない。私たちはこの隣接する課題を解決したいと考えた。カバレッジを意味のある形で拡大する唯一の方法は、地上ではなく宇宙から行うことだと考えている。

5Gは通信規格であり、2つの異なるモジュール間でどのように通信するかを定義するものだ。私たちは現時点で5Gに準拠している。将来的に6Gや電気通信規格の統括機関である3GPPが策定する他の規格を採用するかは未定だが、現時点では5G互換だ。

既存技術との違いは、既存の5G NTN規格(非地上系ネットワーク)に準拠しているかどうか。3GPP規格のリリース17では、衛星と地上局間の宇宙ベースの通信がどのように行われるべきかを定義しており、私たちはこれに従っている。次世代の3GPP規格である6GにはNTNが組み込まれ、すべての6G対応端末にNTN機能が備わる予定だ。

──Spacecoinが想定している主なユースケースは。

オー氏:私たちが焦点を当てるのは、インターネットから完全に切り離された人々。現在、金融サービスの大半はオンラインで提供されている。彼らは金融や通信、そして政府発表といった基本的な情報にすらアクセスできない。

私たちはこれを「ライフラインサービス」と定義し、優先的に提供しようとしている。スターリンクのような既存サービスは高データレートの4K動画配信などを売りにしているが、アンコネクテッド層に本当に必要なのは、低データレートで利用できる金融取引や通信機能だ。

インターネット接続がない地域がオンライン化されれば、人々の暮らしは豊かになり、グローバル経済に参加できるようになる。それが私たちが目指す姿だ。

──ターゲット地域はどこになるのか。

オー氏:初期段階では赤道直下で人口の多いナイジェリア、インド、インドネシアを考えている。ナイジェリアは約2億5000万人でアフリカ最多、インドは世界最多、インドネシアは東南アジア最多だ。これら3カ国はすべて赤道上に位置するため、同じ衛星コンステレーション(多数の人工衛星を連携させて一体的に運用するシステム)で対応できる。

その後、南アフリカ、エジプト、メキシコなど、北極から南極まで他の市場にも進出する予定だ。各地域で最も人口の多い国に焦点を当て、拡大していく。

──Spacecoinのロードマップには、テストネットローンチや低軌道衛星の運用などが記されている。

テ氏:今年中にトークンをローンチするほか、さらに3機の衛星を打ち上げる予定だ。これらの衛星は、私たちの技術をさらに実証するものとなる。昨年12月に打ち上げた最初の衛星は、宇宙から地上への接続性と通信能力を証明した。次の3機では、衛星同士の通信能力とハンドオーバー機能といった衛星間リンクを検証する。

その後、赤道周辺に約10機の衛星を打ち上げ、ナイジェリア・インド・インドネシアでサービス提供を開始する計画だ。

──トークンを持ったユーザーは、何ができるのか。

テ氏:Spacecoinのユーティリティは大きく3つある。

1つ目は、データ送信の手数料としての利用だ。あるノードから別のノードにデータパケットを送るにはSpacecoinを支払う必要がある。2つ目は、ノードとしてネットワークに参加する際のステーキング。Spacecoinを担保にすることで、役に立たないノードやスパム的な参入を防ぎ、シビル攻撃を対策する狙いがある。3つ目は、ノードとして早期に参加したユーザーへの報酬だ。ステーキングを行った参加者にはリワードが与えられる。

このように、通信の利用者にとってもノード運営者にとってもSpacecoinを保有する意味がある。

──日本市場に期待することと、WebXに参加した狙いを聞かせてほしい。

テ氏:日本に期待するのはインターネットサービスの提供ではなく、衛星やコンステレーションといったインフラをともに構築することだ。日本には、宇宙産業と製造業の分野で高い技術力がある。

米国では製造業が衰退しているため、インフラ製造は日本や韓国、ベトナムなどアジア諸国で行う必要がある。私たちは日本のベンダーやサプライヤーと協力して、衛星やコンステレーションをともに構築したいと考えている。

日本では、エンドユーザー向けにVPNのように利用できる地上版の製品をローンチする予定だ。ビルダーとして関わるユーザーはもちろん、Spacecoinネットワークのオペレーターとして参加し、運用を開始したいユーザーにも期待している。

WebXに参加したのは初めてだが、日本には毎月のように来ており、多くの企業と積極的に連携している。WebX期間中も複数のサプライヤーと会談した。日本は機械工学や材料工学、電気工学といったディープテック分野で他国に引けを取らない。非常に強力なパートナーが揃っていると考えている。

|インタビュー: CoinDesk JAPAN広告制作チーム
|構成・文: 瑞澤 圭
|写真:多田圭佑

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