JPYCリリース「通貨史に残る分岐点」岡部代表
JPYC株式会社の岡部典孝代表取締役は27日午前、都内で記者会見を開いた。同日午後1時から日本円ステーブルコイン「JPYC」の正式発行が開始される。
世界のステーブルコイン市場は約49兆円規模だが、99%が米ドル建てで、円建ては正式に発行できていなかった。
岡部氏は「世界市場が5年後に600兆円規模に成長し、日本が10%のシェアを獲得すれば60兆円規模になる可能性がある」と展望を語った。
JPYC EXの最大の特徴は、顧客資産を預からない「ノンカストディ型」。従来の銀行や取引所と異なり、利用者自身がウォレットで資産を管理する。岡部氏は「事業者が顧客資産を保管すると高いリスクとコストがかかる。手数料無料を実現するため、お客様が自ら使い道を決めるサービスにした」と説明した。
口座開設はマイナンバーカード認証のみで最短1分。発行・償還は1日100万円の制限があるが、ウォレット内のJPYCは保有・送金額に上限なく、決済、送金、運用に自由に利用できる。
裏付資産は将来的に国債約8割、信託預金約2割を想定。国債は短期債中心で、預金は日証金信託経由で複数銀行に分散し、破綻リスクに対応する。岡部氏は「超長期債は金利収入が増えるが、金利上昇時にディペグするリスクがある」とし、短期国債中心の運用方針を示した。
JPYCは「日銀のような発行体」と位置づけられる。岡部氏は「デジタル円を使ってどんなサービスを作るかは自由で、我々と契約すら不要」と強調した。従来のデジタルマネーは発行体がすべてを掌握したが、JPYCは発行のみを担い、移転はパブリックチェーン、顧客接点はサードパーティーが担う。
「投げ銭アプリを作る人も、我々がライセンスを持っているからサービスを作れる。イノベーションが起こりやすくなる」と説明。電算システムのコンビニ決済、HashPortの万博ウォレット標準搭載、ナッジのクレカ後払い、アステリアの基幹システム連携など、多数の企業がサービスを開発している。
岡部氏は「2019年の創業時、ネットで15%もの決済手数料を取られ、学生起業家はクレカ契約もできず平等な競争が成り立たなかった」と振り返った。「決済手数料がほぼゼロの社会で、誰もがイノベーションを起こしやすくなる」とし、AIエージェントが決済まで完結させる社会や、政治資金・国家予算の透明性向上といった未来像を描いた。
国際展開では、JPYCの現地通貨交換、海外ステーブルコインの日本展開、外貨建てステーブルコインの発行という3つの戦略を示した。
米Coinbaseとは「シリーズA直後から交渉している」とし、GENIUS法により「米取引所で扱える環境が整う」との見通しを示した。第一種資金移動業の申請準備も進め、より大規模な送金への対応を目指す。
岡部氏は「日本の通貨史に残る大きな分岐点」と述べ、円建てステーブルコインの本格展開に意欲を示している。
関連: 「社会のジレンマを突破する」日本初のステーブルコイン発行ライセンス取得、JPYC岡部典孝氏が語る|独占インタビュー
関連: 『JPYC』日本円ステーブルコイン発行に使う『JPYC EX』とは?
関連: 日本初の円建てステーブルコインJPYC、正式リリースへ

キルギス共和国、自国通貨建ステーブルコイン「KGST」発行へ バイナンスCZ支援で国家仮想通貨戦略を推進
キルギス共和国が自国通貨ソム建ステーブルコイン「KGST」をBNBチェーン上で発行する。バイナンス創設者CZ氏が戦略顧問として支援し、CBDC「デジタルソム」の試験運用開始や国家仮想通貨準備金の設立を...

コインベースCEO、オンチェーン資金調達で起業のあり方革新を構想 エコー買収で実現へ
仮想通貨取引所コインベースのCEOが、エコー買収を背景に、起業家が企業設立から資金調達、IPOまでをオンチェーンで可能にする構想を語った。...

ホワイトハウス、舞踏場建設の寄付リストを公表 コインベース、リップル、テザーなど業界関係者含まれる
トランプ米大統領のホワイトハウス舞踏場建設で、コインベース、リップル、テザーなど仮想通貨企業を含む37社・個人の寄付者リストが公表された。費用は約3億ドルで、業界と政権の密接な関係が浮き彫りに。...
