米ナスダック上場のネクスト・テクノロジー(Next Technology Holding Inc.)は10月30日、保有する約5,833BTCの売却または担保設定を取締役会が全会一致で承認したと発表した。
ただし、実際の売却数量や時期は決まっておらず、全量を売却することが決まったわけではない。
同社は、ビットコイン保有に伴うリスクを減らし、流動性を高めることが目的だと説明している。保有量を適時に調整することが、同社と株主の利益につながると判断した。
決議は10月30日付で発効した。保有するビットコインを複数回に分けて売却または担保設定する権限が、最高経営責任者(CEO)に与えられた。
方法は3つある。仮想通貨取引所での直接売却、特定の買い手との相対取引(ブロック取引)、融資を目的としたBTCの担保設定だ。CEOは売却の時期、価格、数量、実施スケジュールを決められるほか、買い手や融資先との契約交渉・締結も任される。この権限は、書面により上級役員へ委任することもできる。
今回の決定の背景には、10月29日(協定世界時)に起きた、世界最大手の仮想通貨取引所バイナンスの大規模な不正流出事件がある。
バイナンスによると、被害額は約63億ドル(約1兆円)にのぼり、複数のブロックチェーン上で不正な出金が発生した。同社は、SAFU(ユーザー資産保護基金)と自社資金で、流出した資産の全額を補填すると表明している。業界パートナーなどと連携し、約30億ドル相当の資産をオンチェーン上で凍結した。
初期調査では、開発・運用担当エンジニアのノートパソコンが不正アクセスを受け、攻撃者がサービスコンテナに入り込んで不正な出金を実行した可能性が指摘された。その後の調査で新たな侵害箇所も見つかっており、バイナンスは全容の解明を進めている。ウォレットの秘密鍵が漏洩した証拠は、現時点ではないという。
ネクスト・テクノロジーの取締役会は、国際的なハッカー攻撃や取引所のセキュリティ上の脆弱性、量子コンピューティングが暗号技術に与えうる影響などを挙げ、同社のビットコイン保有をめぐるカストディ(資産保管)と市場のリスクが高まっているとの認識を示した。
同社は、自社保有のビットコインはバイナンスで保管されていないと明言している。
ネクスト・テクノロジーは2019年3月に米ワイオミング州で設立された。AIを活用したソフトウェア開発サービスとビットコイン保有を事業の柱としている。米証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、実質的な執行オフィスは埼玉県春日部市にあり、日本に本社機能を置く米国法人だ。
同社は2023年末時点で833BTCを保有していたが、2025年にビットコイン保有を本格化させた。同年3月に5,000 BTCを追加取得し、保有量は合計5,833 BTCとなった。その評価額は約4億5,000万ドル(1BTC=7万7,000ドルで計算)で、上場企業の中でも上位のビットコイン保有企業となっている。
一方、10月30日終値の株価は5.30ドル。発行済み株式数約147万株から、時価総額は約780万ドルと推計される。保有ビットコインの評価額は時価総額の約58倍にあたり、この大きな乖離を複数のメディアが取り上げている。
米メディアのCoinDeskは、同社のBTC保管体制の透明性に疑問を示した。年次報告書によると、保有BTCのほぼ全量が日本の機関投資家向けカストディアンで保管されているが、事業者名は公表されていない。また、投資家が自分でオンチェーン上の残高を確認できるウォレットアドレスも開示されていないという。
CoinDeskは同社に対し、カストディアンの名称、ウォレットアドレス、保有残高を証明する書類の提供を求めたと報じている。


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