米投資調査会社シトリニ・リサーチ(Citrini Research)は8日(米国時間)、伝統金融と仮想通貨を隔ててきた壁が崩れ始めているとするレポート「Breaking The Wall」を公開した。AIエージェントの普及と現実資産(RWA)のトークン化によって、ブロックチェーンに実用上の役割が生まれつつあると論じている。
RWAのトークン化とは、株式や国債、金といった伝統的な資産をブロックチェーン上のトークンとして発行する取り組みを指す。24時間の取引が可能になり、DeFi(分散型金融)のサービスとも組み合わせられる。
レポートの冒頭は、個人のAIが待機資金の運用や住宅ローンの借り換えを自律的にこなす場面の想定から始まる。より高い金利を求めてエージェントが預金を次々と移せば、銀行は安価な資金調達の基盤を失いかねない。シトリニはこの事態を「エージェント型の取り付け騒ぎ」と呼び、起こりうるかどうかを問いかけた。
既存の金融システムについて、シトリニは「人間が、人間のために作った」ものだと評する。処理は遅く、システムは分断されている。仲介業者や法的機関、本人確認(KYC)の手続きが幾重にも関門となっている。機械が昼夜を問わず動き続ける環境には合わない設計だという見方だ。
同社は、仮想通貨を長らく用途の限られた技術だったとしたうえで、エージェントによる自動取引とRWAの受け皿として明確な役割を得たと位置付けた。株式や国債、金、債券がオンチェーンに移れば、既存の取引所の外でも価格発見が起こりうるとしている。
3月にイラン情勢が週末に緊迫化した際、ハイパーリキッド( HYPE )は原油価格を形成できる数少ない流動性のある取引の場になったという。ロビンフッド・チェーンの「ストックトークン」については、他のサービスと組み合わせられるトークン化株式への道を開いたと評価した。
シトリニによると、9月にはソラナ( SOL )の取引件数が一時、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を上回った。ただし大半はボットやミームコインなどの取引とみられると、同社自身も注記している。
規制面では、米上院でクラリティー法の手続き採決が9月15日に49票にとどまり、可決に必要な60票に届かなかった。その2日後の17日、米証券取引委員会(SEC)はトークン化株式のオンチェーン取引を認める期間5年の「イノベーション特例」を発表した。コインベースが計画する米国株の無期限先物は、米商品先物取引委員会(CFTC)の一覧で「承認待ち」と表示されているという。ブルームバーグ端末もハイパーリキッドの先物とトークンを掲載している。
シトリニはオンチェーン市場を自ら確かめるため、コインベースウォレットに1,000ドルを入金した。トークン化された国債と株式に加え、オプションやレンディング、決済、利回りを提供するプロトコルまでが一つの環境に並んでいたと記している。
ブルームバーグによると、シトリニはエージェント型金融がブロックチェーン上に構築されるとして、「ファンダメンタルズに基づく仮想通貨投資」という新たなパラダイムが到来したと主張している。
恩恵を受け得る上場企業としてロビンフッド、コインベース、ブリッシュ、セキュリタイズを挙げたほか、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)、ステーブルコインを発行するサークルやエセナ(Ethena)にも言及したという。
シトリニは、投資家にとっての問いはトークン化される資産が増えるかどうかではないとする。そこで生まれる経済的利益がどこに帰属するかが重要だという。

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