仮想通貨ETP(上場取引型金融商品)を手がける21シェアーズ(21Shares)は22日、プライバシー関連の仮想通貨に関するリサーチレポートを公開した。同セクターの時価総額は1年前の62億ドルから約300億ドルへと5倍近くに拡大したと分析している。
レポートを執筆した同社リサーチ部門のマット・メナ氏によると、プライバシー銘柄は2025年10月の高値を上回って推移する唯一のセクターで、同月の高値からは216%上昇した。一方、ステーブルコインとプライバシー銘柄を除いた仮想通貨市場全体は、ピークを約32%下回ったままだ。プライバシー銘柄の時価総額は、過去3年間の年平均成長率で111%にのぼるという。
分野最大のジーキャッシュ(Zcash、ZEC)は時価総額が約200億ドルに達し、2021年のピークだった40億ドルの約5倍の水準にある。ジーキャッシュは「ゼロ知識証明」と呼ばれる暗号技術を使い、送金者・受取人・金額を伏せたまま取引の正しさだけをネットワークが検証できる仕組みを持つ。メナ氏はプライバシーの実装が進めば、仮想通貨は「ポケットに入るスイスの銀行口座」になり得ると表現した。
レポートは、取引内容がすべて公開されるブロックチェーンの透明性が、機関投資家の参入を阻む要因になっていると指摘する。大口注文を第三者に先回りされるMEV(最大抽出可能価値)による流出額は、2022年から2025年までに約17億ドルに達した。伝統的な株式市場でもダークプールなど取引所外の売買が米国株取引の4割超を占めており、機関投資家は取引の秘匿性をすでに重視しているという見方だ。
その実例として挙げたのが、規制当局には開示しつつ競合からは取引内容を隠せる設計のカントン・ネットワーク(Canton Network)だ。ゴールドマン・サックスが自社のデジタル資産基盤を同ネットワーク上で運用し、JPモルガンは預金トークン「JPMD」の展開を進める。米国証券の保管を担うDTCCも米国債のトークン化に同ネットワークを活用している。同ネットワークが処理するトークン化資産は月間8兆ドルを超えるとしている。
プライバシー通貨が犯罪に悪用されるとの懸念に対しては、チェイナリシスの2026年のデータを引用して反論した。不正取引は仮想通貨の取引量全体の1%未満にとどまり、その約84%はプライバシー通貨ではなくステーブルコインが占めるとされる。ジーキャッシュには監査人や規制当局に限って取引履歴を開示できる「ビューキー」機能もある。米SEC(証券取引委員会)がジーキャッシュ財団への調査を執行措置なしで終えたことも、規制環境の変化として紹介した。
大手チェーンもプライバシー機能の導入を急ぐ。イーサリアム( ETH )は2026年のロードマップで段階的なプライバシー実装を掲げ、ソラナ( SOL )は送金額を暗号化しつつ監査用の鍵を残せる「コンフィデンシャル・バランス」を提供している。ベンチャーキャピタル大手のアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)も、プライバシーを2026年における最も重要な競争優位と位置づけた。
市場規模の試算では、富裕層がスイスの信託やケイマン諸島のファンドなどで保有するオフショア資産を比較対象とした。その規模は11兆ドル(OECD)から16兆ドル(BCG)と推計され、5%を取り込めばセクターの時価総額は5,500億から8,000億ドルとなり、現在の18倍から27倍に相当する計算だ。現状のプライバシー銘柄は、ステーブルコインを除く仮想通貨市場約2.4兆ドルの1%程度にすぎず、ジーキャッシュでも秘匿機能を使う「シールドプール」に置かれた供給量は約28%にとどまる。
ただしレポートはリスクにも触れている。主要チェーンが基盤レイヤーでプライバシー機能を実現した場合、ジーキャッシュのような専業銘柄に付いているプレミアムが縮小する可能性があるとした。カントン・ネットワークについても、許可制のネットワークに依存が集中する点を懸念材料に挙げている。

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