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「株っぽいトークン」から本当に株主になれるトークンへ?──NasdaqがKrakenに1億ドルを投資する理由

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2026年9月10日、Nasdaq Venturesは暗号資産取引所Krakenの親会社Paywardへ1億ドルを投資することで合意したと発表しました。

Paywardはすでに「xStocks」というトークン化株式を展開しています。Apple株に対応するAAPLxやTesla株に対応するTSLAxなど、実際の株式によって1対1で裏付けられ、原資産の値動きに連動するトークンです。Kraken上で取引できるだけでなく、対応するブロックチェーンのウォレットへ引き出すこともできます。

株式をトークンとして扱う仕組み自体は、今回の出資より前からPaywardが展開していました。NasdaqとPaywardも2026年3月から「Nasdaq Equity Tokens(NETs)」の開発を進めており、今回の発表では、Nasdaqによる1億ドルの投資合意と、両社の協業をさらに進める方針が示されています。
今回の記事では、すでに流通しているxStocksと、NasdaqとPaywardが開発を進めるNETsの違いを見ていきます。

xStocksが持っているのは「株価へのアクセス」

xStocksの特徴は、株式の値動きに連動するトークンを扱える一方、そのトークンを持っている人が原株の株主になるわけではないことです。

たとえばAAPLxを保有しても、Appleの株主総会で議決権を行使することはできません。Apple株そのものの株主としての権利はなく、配当についてもAppleから株主として受け取るのではなく、税引き後の経済的利益がトークン残高に反映されます。

xStocksはKrakenから対応するウォレットへ引き出すことができ、オンチェーン上でも保有・移転できます。Krakenでは100銘柄を超えるxStocksが提供されており、株式市場の値動きをオンチェーンで扱う仕組みはすでに実際のサービスとして動いています。

従来の証券口座の外でも株価連動商品を保有できる一方、AAPLxを持っている人とAppleとの間に、直接の株主関係が生まれるわけではありません。

Nasdaqは「株主の権利」までトークンに載せる

一方、Nasdaqが2026年3月に公表したEquity Token構想では、発行企業自身が関与する形で株式をトークン化し、従来の株主が持つ権利も維持する方針が示されています。

議決権に加え、配当や株式分割などのコーポレートアクション、企業と株主のコミュニケーションも対象です。

xStocksでは、第三者が原株を保有したうえで、その経済的価値に連動するトークンを発行します。AAPLxを持つ人がAppleの株主になるわけではなく、企業とトークン保有者の間に直接の株主関係はありません。
NETsでは発行企業を仕組みの中心に置き、従来の株式が持つ権利を維持したままトークン化する方針です。

xStocksに議決権を足すだけではない

xStocksに議決権や配当などを追加するだけではNETsと同じ設計にはならず、両者ではトークンの保有記録と正式な株主記録の扱い方にも違いがあります。

xStocksの原株は規制下のカストディで保管されており、トークン保有者本人が原株の株主になるわけではありません。AAPLxが別のウォレットへ移動しても、それだけでApple株の正式な株主記録が書き換わるわけではありません。トークンの保有記録と、企業が管理する株主の記録は別に存在します。

SEC職員は2026年1月28日のトークン化証券に関する声明で、発行体(またはその代理人)がDLTを株主記録に組み込み、オンチェーン移転を正式な証券移転として反映するissuer-sponsored型を整理しています。

Nasdaqが掲げる発行企業主導の設計を実現するには、既存のトークンに投票機能を付けるだけでなく、オンチェーン上の移転を正式な株主記録とどう連携させるかという設計も必要になります。また、株主記録を接続する技術だけでなく、既存の証券規制との整合や、発行企業、名義書換代理人など関係者の役割をどう整理するかも必要になります。NETsは現在も開発段階にあり、具体的な実装は、今後の設計や必要な規制上のレビューを踏まえて進められます。

NasdaqがPaywardに1億ドルを投資する理由

NasdaqとPaywardの提携は今回の出資から始まったものではなく、両社は2026年3月からNETsの開発を進めています。NasdaqはNETsを2027年第2四半期に開始する見込みとしています。

PaywardはxStocksを通じて、株式を裏付けとしたトークンを取引所からウォレット、ブロックチェーンへ流通させてきました。一方のNasdaqは、上場企業との関係や取引所インフラ、市場監視など、既存の株式市場を運営する側にいます。

今回の発表では、Paywardが持つxStocksの基盤とNETsを接続する計画も示されました。PaywardはNasdaqの市場監視技術を導入し、暗号資産や株式、トークン化株式、先物、オプションなどの監視に利用する予定です。

トークン化されるのは「売買」だけではない

xStocksでは、従来市場より長い取引時間やウォレットでの保有、少額での売買といった使い方が前面に出ています。

NETsは発行企業を中心に株主権を維持する設計を掲げています。その実装では、議決権やコーポレートアクションをどの記録に基づいて処理し、オンチェーン上の保有記録を既存の株主記録とどう連携させるかが論点になります。

トークン化によって変わる可能性があるのは株の売り方だけではありません。これまで発行企業、証券会社、カストディアン、名義書換代理人などが担ってきた、株主記録や権利処理の仕組みにも影響が及びます。
NETsが2027年第2四半期に開始されれば、xStocksとの違いは取引時間や対応チェーンよりも、ウォレット上の保有記録を企業側の正式な株主記録とどこまで一致させられるかという部分に表れます。

株主名簿の更新、配当、議決権、株式分割までオンチェーンの記録と連動するなら、トークン化されるのは株の売買手段だけではありません。株を「誰が持っているのか」を管理する仕組みそのものまで対象になります。

※Nasdaq Equity Tokens(NETs)は本記事執筆時点(2026年9月15日)で構想・開発段階であり、Nasdaqは2027年第2四半期の開始を見込んでいます。本記事は公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連動向を整理した一般的な情報提供であり、特定の金融商品や暗号資産の売買を推奨するものではありません。

参考文献

  1. Nasdaq, “Nasdaq Advances Always-On Markets and Tokenized Equities Strategy with Agreement to Invest in Payward”, September 10, 2026
    https://www.nasdaq.com/newsroom/nasdaq-advances-always-on-markets-and-tokenized-equities-strategy-payward

  2. Nasdaq, “Nasdaq to launch equity token design, putting issuers at the center of tokenization”, March 9, 2026
    https://www.nasdaq.com/press-release/nasdaq-launch-equity-token-design-putting-issuers-center-tokenization-2026-03-09

  3. Kraken, “xStocks frequently asked questions”, Last updated April 8, 2026
    https://support.kraken.com/articles/xstocks-faq

  4. U.S. Securities and Exchange Commission, “Statement on Tokenized Securities”, January 28, 2026
    https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/corp-fin-statement-tokenized-securities-012826-statement-tokenized-securities


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