米司法省は18日、イラン拠点「マブナ・インスティテュート(Mabna Institute)」に所属する17人を、大規模なサイバー窃盗キャンペーンを行った容疑で起訴したと発表した。
マブナ・インスティテュートはテヘランを拠点としており、イランの大学や研究機関が、非イランの学術資源に不正アクセスするのを支援する目的で2013年に設立された組織だ。ハッカーやその他要員に報酬を与えて連携していた。
被告らは世界の数百の大学、企業、その他のシステムを攻撃し、研究データ、学術・独自データ、および知的財産を窃取。これらのハッキング活動の多くは、米国の制裁対象であるイスラム革命防衛隊(IRGC)をはじめ、イラン政府や大学からの依頼を受けて行われていたとされる。
被告のうち6人は、2017年に起きた、米ケーブルテレビ局HBOへのハッキング事件に関与していたとも報告されている。これはHBOから社内の機密情報を盗み出し、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン( BTC )で600万ドル相当を支払わなければ盗んだ情報を公開すると脅迫するものだった。その後HBOは支払いを拒否し、同年に容疑者の一人が起訴されていた。
被告らは、民間企業や少なくとも2つの政府機関へのハッキング活動にも関与。パスワードスプレー攻撃、標的システムの不正アクセス、データの窃取などでターゲットに損害を与えている。
ニューヨーク南部地区連邦検事のジェイミー・マクドナルド氏は、「今回の訴追は、国家主導の大規模な工作活動の背後にあるネットワークを浮き彫りにするものだ」と指摘した。
FBIサイバー部門のブレット・レザーマン部門長は「被告らは、イラン政府の利益のために、米国や同盟国の大学、企業、政府機関の知的財産を標的とした、大規模な請負型ハッキング活動を行い、そこから利益を得ていたと見られる」と説明している。
被告らには通信詐欺、コンピュータ詐欺、加重身元窃盗その他の容疑がかけられており、通信詐欺などでは有罪となれば最長で懲役20年となる。
教育研究機関に対しては、2013年頃から少なくとも2017年12月まで攻撃を行っていた。大学のシステムを侵害し、あらゆる種類の学術データや知的財産を盗んでいる。
米司法省によると、米国内の大学144校および海外の大学178校(日本、オーストラリア、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、ドイツ、イスラエル、イタリア、オランダ、ノルウェー、サウジアラビア、シンガポール、韓国、スイス、トルコ、英国その他の国を含む)において、約8,000件の教員電子メールアカウントへの不正侵入に成功していた。
さらに、盗んだアカウントの認証情報を使用して、研究成果やその他の学術データ・文書を窃取。科学技術、工学、社会科学、医学、その他の専門分野を含む、あらゆる研究分野を標的にして少なくとも約31.5テラバイトの学術データおよび知的財産を米国外のサーバーへと流出させていたとされる。
また、大学の他、少なくとも5つの米国連邦政府および米国州政府機関、少なくとも42の米民間企業、ドイツ・イタリア・スイス・スウェーデン・英国に拠点を置く少なくとも約11の外国企業、国連やユニセフを含む米国内の様々な政府機関や非政府組織などの従業員用メールアカウントを標的として、システムを侵害しデータを流出させていたとも報告される。
起訴状で訴追された17名の被告のうち9名は、2018年3月にすでに起訴されていた人物だ。今回の起訴状は「スーパーシーディング(S2)起訴状」(以前のものに取って代わる修正起訴状)である。
今回の起訴は、国境を越えたサイバー攻撃に対して当局が長期的に追及する姿勢を印象づけるものだ。なお、起訴内容はあくまで容疑であり、現段階で有罪は確定していない。


