イスラエル最大手の暗号資産(仮想通貨)ブローカー「Bits of Gold」は16日、数日前に発生した世界規模のサイバーセキュリティ事象(サイバーインシデント)によって、同社が利用するデータ分析用のサポートシステムへの不正アクセスが確認されたと発表した。氏名や連絡先、本人確認情報など、顧客の個人情報が漏洩した恐れがある。
Bits of Goldはインシデントを特定した後、アクセスを遮断し、システムを情報源から切り離すことで不正アクセスを停止させた。現在はセキュリティチームが専門調査会社の支援を受けながら詳細な調査を進めており、関連当局への通知もすでに済ませている。なお、サービスは通常通り継続している。
不正アクセスの対象となった可能性がある情報は、氏名、ID番号、メールアドレス、電話番号といった本人確認・連絡先情報に加え、IPアドレス、銀行口座情報、仮想通貨の公開ウォレットアドレスなど。
ただし、現段階でこれらの情報が実際に悪用された形跡は確認されておらず、利用者側でパスワード変更するといった対応も不要だという。
一方で、個人情報が悪用されるリスクは残る。同社は、流出した可能性のある情報を利用したなりすましやフィッシング詐欺など、二次被害への警戒を顧客に呼びかけた。不審なリンクをクリックしたり、個人情報や認証コードを提供したり、仮想通貨の送金要求には絶対に応じたりしないよう、改めて注意を促している。
Bits of Goldは「顧客の資金やデジタル資産は安全であり、今回の事象の影響を受けていない」と強調する。顧客の秘密鍵やクレジットカード情報(カード番号やCVVを含む)は同社が保管していないため、これらの情報が流出する恐れはない。アカウントのパスワードや本人確認書類の画像データについても、流出は確認されていないとしている。
今回のインシデントは、Bits of Goldが利用するソフトウェア会社で発生した世界規模のセキュリティ事象の一環とされる。数百社が影響を受けたと推定されており、同社が直接の標的ではないとみられている。
Bits of Goldは2013年創業。イスラエルの仮想通貨市場で長い実績を持つ企業だ。2022年にはイスラエル資本市場・保険・貯蓄局からVASP(仮想資産サービスプロバイダー)ライセンスを取得しており、登録顧客数は約30万人に上る。
2026年4月には、約2年間の規制サンドボックスでの試験運用を経て、規制当局からイスラエルの法定通貨シェケル連動型ステーブルコイン「BILS」の発行承認を得た。
仮想通貨業界では、第三者企業を経由した顧客情報の流出が相次いでいる。
ハードウェアウォレット大手のTrezorは13日、出荷・物流を委託するパートナー企業ShipMonkでデータ侵害が発生し、氏名やメールアドレス、配送先住所など、顧客の個人情報が流出したと発表した。影響を受けた顧客は約1万4,000人とされる。
競合するウォレット最大手のLedger社でも、今年1月、同社のeコマースのパートナー企業「Global-e」への不正アクセスにより、顧客の氏名や配送先住所などの個人情報が流出するデータ侵害が発生している。
これら一連のインシデントで懸念されるのが、流出した個人情報を悪用したソーシャルエンジニアリングだ。2020年にLedgerで発生した大規模なデータ侵害では、流出した顧客データがフィッシング詐欺に悪用され、正規品を装った偽のハードウェアウォレットを顧客の住所に送り付ける攻撃も確認された。


