米金融大手JPモルガンのアナリストは30日のレポートで、クラリティー法が年内に上院を通過する確率の低下が仮想通貨市場にとって後退材料になるとの見方を示した。同法案は仮想通貨業界にとって概ね前向きな内容だとしつつも、現行草案の一部は機関投資家の参入を妨げかねないと警告した。
予測市場では、年内可決の確率がカルシで37%、ポリマーケットで26%まで低下し、いずれも年初来最低の水準となった。
JPモルガンのニコラオス・パニギルツォグロウ氏率いるアナリストチームは、上院が夏季休会を前に他の法案を優先していることに加え、倫理規定・執行権限・ステーブルコインの利回り・分散型金融(DeFi)・不正資金対策を巡る対立が未解決のままだと指摘した。
クラリティー法は仮想通貨の規制所管を米CFTC(商品先物取引委員会)と米SEC(証券取引委員会)に分ける包括的な市場構造法案で、デジタルコモディティはCFTC、デジタル証券はSECの監督下に置かれる。同法案は昨年7月に米下院を通過したものの、ステーブルコインの利回りや政治家の開示義務等を巡る対立から上院で停滞が続いている。
アナリストチームは、法案が可決されれば機関投資家向けの市場インフラ整備が進み、DeFiやステーブルコイン発行者への規制上の制約が緩和されると分析した。その上で、取引の一部がオフショアから米国準拠の市場へ移行することで国内の流動性と取引高が増加し、証券会社・取引所・マーケットメーカー・カストディアン・銀行系プラットフォームの参入障壁も下がるとの見方を示した。
一方で、現行草案の一部はむしろ機関投資家の参入を妨げかねないと警告した。一例として、DeFiが米SECやCFTCの監督外でトークン化証券・トークン化デリバティブを取引できる点を挙げ、もう一例として仮想通貨事業者が銀行や証券会社と同等の業務を行いながらマネーロンダリング対策をほとんど求められない点を指摘した。
アナリストチームは、クラリティー法の承認が長引くほど、トークン化やブロックチェーン活用の金融アプリケーションの成長が公共の仮想通貨ネットワークではなく既存の金融インフラに吸収されるリスクが高まると分析した。業界団体クリプト・カウンシル・フォー・イノベーションも30日、市場構造法制の速やかな可決を求める35頁の報告書を公表し、対応の遅れが米国の規制・技術革新面での主導権を他国に譲り渡し、ドルの基軸通貨としての地位を脅かしかねないと訴えた。
クラリティー法を巡っては、米上院のトム・ティリス上院議員とルーベン・ガレゴ上院議員が30日、倫理条項に関する新たな妥協案をホワイトハウスに提出したことが報じられた。同法案は今年5月に上院銀行委員会を通過しており、両議員は政府高官の仮想通貨事業への関与を制限する条項を巡る民主・共和両党の隔たりを埋める作業を担ってきたという。
民主党側は、トランプ大統領が就任前に立ち上げたミームコインや大統領一族が関与するワールド・リバティー・ファイナンシャルとの利害関係を問題視し、より厳格な倫理規定を求めてきた経緯がある。
上院は8月7日から休会に入る予定で、クラリティー法の可決に残された時間は限られている。ジョン・スーン上院院内総務は他の法案対応を優先する姿勢を示しており、審議は9月の議会再開後に持ち越される可能性が高まっている。


