米国のハワード・ラトニック商務長官と、元ホワイトハウス仮想通貨評議会責任者のボー・ハインズ氏が、ジーニアス法案の一部を弱体化させ、最大手ステーブルコイン発行企業テザー社に有利になるよう働きかけた疑いが浮上している。ブルームバーグが23日に、インタビューと裁判書類を引用して報じた。
経緯としてはまず、2023年から2024年には、シンシア・ルミス上院議員とキルステン・ギリブランド上院議員が超党派で、テザー社のように米国外を拠点とするステーブルコイン発行者に対し、厳格なマネーロンダリング対策を課すことを目指していた。
しかし、当時テザー社の準備金を管理するカンター・フィッツジェラルド社のCEOを務めていたラトニック氏が、これに反対するロビー活動を行った。テザー社と第三者(スワン・ビットコイン社)との別のビジネス紛争に関する裁判書類によると、テザー社の会長は関係者に対し、ラトニック氏が事実上この法案を阻止したと語っていたとされる。
結局、ルミス氏らが当初提案していたマネロン対策案は成立しなかった。ジーニアス法では、米国財務長官が、あるステーブルコインが発行される国の規制制度が米国の制度と同等であると判断した場合、相互主義的にその外国の制度下で規制を受けることが可能になった形だ。
なお、ジーニアス法は成立したものの、記事執筆時現在でその最終的な実施規則はまだ未完成の状況だ。マネーロンダリング対策規則案については連邦預金保険公社(FDIC)が提示しているが、8月4日まで意見を公募中である。
海外発行者向けの相互主義規則についても、まだ最終規則は定められていない。
ハインズ氏については、トランプ政権の暗号資産(仮想通貨)評議会トップを務めていた際に、民主党側が提案した18か月のコンプライアンス猶予期間ではなく、テザー社が望む3年間の猶予期間を譲れない条件だとして主張したとされる。
ここでいうコンプライアンス期間とは、取引所など仲介業者が、USDTなど米国で未認可のステーブルコインをいつまで米国内で取り扱い続けてよいかという猶予期間のことだ。ジーニアス法では結局、3年間の猶予期間が設けられた。
ジーニアス法成立後の昨年8月、テザー社はハインズ氏を顧問として採用し、同社の米国向け新商品「USAT」のCEOに昇格させた。
2024年4月に、テザー社は6億ドルの転換社債を通じ、5%相当の株式権をラトニック氏の金融サービス会社に売却。先に引用した裁判書類によると、テザー社の会長は、この価格をビジネス関係者に「とんでもなく安い」と話していたという。
また、同社は2025年10月、ラトニック氏の子供たちが父親の数十億ドル規模の事業権益を買収する際、彼らが受益する信託に融資を行っている。
一方、商務省の報道官はラトニック氏は倫理協定の条項を遵守して利益相反の可能性のある案件からは退いており、ジーニアス法のステーブルコイン関連事項には一切関与していないとコメントした。
テザー社も、政策立案者との関わりが不適切だったとの説を強く否定。規制当局・議員・法執行機関と合法的に、また他の企業と一緒に透明性を持って協議の場を持っているとも主張している。
ジーニアス法はテザー社に特別な優位性を与えるものではなく、業界全体に適用される枠組みだとも反論した。


