決済大手ビザは15日、オンチェーン分析企業アルテミスと共同で、AIエージェント決済の現状を分析したレポート「基礎から紐解くエージェント決済」を公開した。
レポートは、AIが自律的に決済を実行する「エージェント型コマース」がすでに実用段階に入りつつあると指摘。オンチェーンデータ分析から、機械同士が自律的に少額決済を行う市場が形成され始めている実態が明らかになった。
レポートでは、エージェント型コマースを次の2つのカテゴリに分類している。
両分野とも市場は拡大しているが、ビザが特に重要視しているのがマイクロコマースの領域だ。
そもそも高頻度かつ少額の決済は、固定手数料を基盤とする従来のカード決済システムでは採算が取れない。そのため、全く新しい仕組みの構築が必要不可欠だが、高性能AIエージェントの普及とブロックチェーンの低コスト化により、数セント以下の超少額決済が現実的になった。
この技術的進化が、これまで広告モデルに依存してきたインターネット経済を変革しうるとして、ビザはこの点に注目している。
レポートでは、この1年間で公開された、機械同士の決済に対応する2つのオープンプロトコルを比較した。
その一つがコインベース、クラウドフレア、ストライプが開発し、現在Linux財団が管理・運営する「x402」だ。 2025年5月のローンチ以来、x402は約1億960万件の取引を通じて約1,500万ドルの調整後取引量を処理してきた。
もう一つは、ストライプとテンポが開発した「Machine Payments Protocol」で、ビザも開発に参加している。2026年3月中旬にローンチしたばかりだが、サービス開始後数週間で、約11万5,000件の取引と約2万5,000ドルの決済を処理した。
レポートはデータ分析に基づき、これら2つのプロトコルにおける利用実態が大きく異なっていると指摘。x402は主にベース、ソラナ、ポリゴン上で活発に利用されているが、ファシリテーターが仲介する三者間決済で、特定のチェーンに限定されない。チェーン上の支払いにはステーブルコインが利用される。
一方、MPPは仲介者を介さない当事者間決済で、主要な決済レールにテンポ・ブロックチェーンを使用。カードや銀行送金など複数の決済システムへの対応も予定している。
一方で、ビザは技術よりも難しい課題として「信頼」と法的責任の所在を挙げる。
AIが誤った商品を購入した場合や、悪意あるプロンプトによって意図しない決済を行った場合、責任は誰が負うのか。AIに権限を委任した利用者なのか、AIプラットフォームなのか、モデル開発企業なのか、それとも加盟店なのか――現行の法制度には明確な答えが用意されていない。
また、AI同士が毎時間数千件規模で決済を行う世界では、人間向けに設計されたチャージバック制度や紛争解決手続きでは対応が難しくなる可能性も指摘した。
レポートは、エージェント決済プロトコルについて、カード決済の代替ではなく、AIエージェントによる新たな商取引を取り込むために、既存の決済インフラを拡張する仕組みと位置付けている。
カード決済側でも信頼されたエージェント・プロトコルやエージェント決済プロトコル、ビザ・インテリジェント・コマースなどの開発が進んでいる。これらは、カード決済の信頼性、不正検知、認証といった仕組みを基盤として、AIエージェントによる取引にも対応できるよう拡張したものだ。
レポートは、エージェント決済とカード決済の境界は、すでに曖昧になり始めていると指摘。両者について「競合関係というよりも、むしろ同じシステムを構成する一部のように見え始めている」と評した。
今、既存の決済ネットワークに問われているのは、新たな決済エコシステムにおいて「どの領域で価値を提供するのか」という実務的な判断だとレポートは強調する。そしてビザ自身も、まさにその方向性を目指して取り組んでいると、次のように総括している。


