米下院の民主党議員8名は23日、米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンズ委員長に書簡を送り、AIエージェントによる投資助言や自律取引サービスに関してSECの見解を明らかにするよう求めた。
ビル・フォスター議員(金融機関小委員会野党筆頭委員)、ブラッド・シャーマン議員(資本市場小委員会野党筆頭委員)、ステファン・リンチ議員(デジタル資産・フィンテック・AI小委員会野党筆頭委員)ら8名は、AIエージェントが個人投資家に代わって株式や暗号資産(仮想通貨)、オプションを自律的に売買するサービスが普及し始めている中、証券規制の枠組みや責任の所在が曖昧なまま運用が続いていると警鐘を鳴らしている。
個人向け証券取引プラットフォームでは、AIエージェントを自身の取引口座に接続することで、ユーザーに代わって投資判断や注文執行を自動化するサービスが登場している。こうしたサービスはすでに株式、仮想通貨、オプション取引に対応しており、将来的には予測市場や先物取引などへ対象が拡大する可能性もある。
議員らが特に問題視しているのは、AIサービスの利用規約だ。
エージェント型取引サービスの開示情報では、証券会社(ブローカー)はAIエージェントが出力する情報の正確性・完全性・適合性を保証せず、エージェントに対する管理・監督・監査や推奨も行わないと明記されている。また、同サービスは「重大なリスク」を伴うと警告し、AIの誤作動、指示の誤認、不完全または古い情報に基づく実行、予期せぬ挙動の可能性などを列挙している。
しかし、このような包括的な免責事項は、AIエージェント取引ツールの規制上の位置付けに差し迫った課題を突きつけていると議員らは指摘。証券会社、AI開発者、個人投資家の間で法的責任の所在が曖昧になっている点に強い懸念を示している。
また書簡では、AI開発企業が実質的に投資判断の支援・代行を可能にするシステムを提供しているにもかかわらず、その多くが証券規制の対象外で事業を展開している現状にも疑問を呈した。
投資家保護の面では、生成AIモデルの学習データに偏りや利益相反が含まれる可能性や、個々の投資家のリスク許容度や財務状況をAIが正確に把握できず、適合性の原則に反する取引が行われるリスクがある。
さらに、市場全体のシステムリスクとして、多数の投資家が類似したAIモデルを利用すると、同じ市場シグナルに反応して売買が集中する「群衆行動(ハーディング)現象」が発生し、ボラティリティ上昇や市場の健全性低下を招く恐れがあると指摘。特にAIが自律的かつ高速に大量の取引を実行できる場合、そのリスクがさらに増すと警告した。
書簡では、SECが2023年に公表した、ブローカー・ディーラーや投資顧問によるAI・予測データ分析の利益相反を規制する提案を踏まえ、生成AI時代に対応した新たな規制の検討を求めている。
議員らはSECに対し、2026年7月31日までに13項目について書面回答を要請した。主な内容は次の通り。
SECの関与とこれまでの対応
業者・開発者の法的責任と登録義務
AI特有のリスクとSECの法的権限
議員らは、生成AIは投資家の情報収集や投資判断を支援する有望な技術である一方、適切な安全策がなければ個人投資家や市場の健全性に重大な影響を及ぼしかねないと指摘。規制市場における適切な投資家保護を維持し、利益相反の隠蔽や証券会社の責任逃れ、市場操作、不適切な投資助言に利用されないよう、SECに早急な対応を求めた。