米暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケンの親会社ペイワード(Payward)は3日、同社のトークン化株式プラットフォーム「xStocks」を通じて、世界中の個人投資家に米国の新規株式公開(IPO)への参加機会を提供すると発表した。
この取り組みは、伝統的な資本市場における最大の参入障壁の一つに挑戦するものだ。従来、IPO株を公募価格で取得する機会は、機関投資家や一部の富裕層に事実上独占されており、個人投資家がアクセスすることは極めて困難だった。
こうした構図を変える可能性があるのが、ブロックチェーン技術を活用した株式のトークン化だ。これまで限られた投資家層にのみ提供されていたIPOへの参加機会が、世界中の個人投資家へ広がろうとしている。
ペイワードの公式発表によると、クラーケンをはじめとするxStocks Alliance加盟企業のユーザーは、米国企業のIPO実施前に参加の意思を示し、上場日に公募価格で割り当てられたトークン化株式を受け取ることが可能になる。
ペイワード・サービス社のグローバル責任者であるマーク・グリーンバーグ氏は、米国企業のIPOについて、本来なら誰もが参加できる「公開市場」であるべきにもかかわらず、これまでは居住地や資産規模によって参加機会が制限されてきたと指摘。しかし、xStocksのインフラによって、そうした障壁が取り払われる時代が到来しつつあると述べた。
ペイワードは、ステーブルコイン決済インフラ企業のリープ(Reap)買収や、グローバル資産運用大手フランクリン・テンプルトンとの提携などを通して、積極的にトークン化資産関連事業の拡大を進めている。
ペイワードは、トークン化されたIPOアクセスの仕組みについて次のように説明している。
ペイワードのトークン化IPOの対象は日本を含む多くの国・地域の個人投資家だ。ただし、xStocksは米国証券法の下で登録された商品ではないため、米国・英国・カナダ・オーストラリアなど一部地域では提供されない。米国ユーザー向けには、クラーケンの従来型株式オファー(Kraken Securities)を通じて、Alpaca SecuritiesおよびClick Capital MarketsがIPOアクセスを提供することになるという。
また、IPO参加に伴うリスクとして、需要が募集枠を上回る場合には、株式の割り当てが保証されない点も指摘されている。ペイワードの広報担当者によると、同社は投資家への割り当てを確保できたIPOのみを実施するとのことだ。
なお、同社が公開した免責事項によると、IPO xStocksはトークン化された証券で株価の値動きへのエクスポージャーのみを提供するものであり、保有者に対象企業の株式所有権を付与するものではない。
xStocksは、トークン化された株式の取引プラットフォームとして2025年にスイスのBacked Finance社によりローンチされた。アップル、テスラ、NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする60以上の米国株・ETFを、1株=1トークンとして提供し、24時間365日(クラーケンでは週末取引不可)、国や時間に縛られずに取引できる新しい株式投資の選択肢として存在感を示した。
同年12月、ペイワードが買収しxStocksの開発・発行・運用体制を傘下に収め、同グループの戦略的プラットフォームとして機能を大幅に拡充している。
xStocksトークンは、特定のブロックチェーンに依存しないマルチチェーン対応を採用しており、複数のチェーン間で相互運用可能。これにより、DeFiプロトコルと柔軟に組み合わせることができ、xStocksアライアンスに加盟する各種プラットフォームからアクセスできる。そのため、資産は単一の取引所やプラットフォームに縛られることなく、投資家が利用する環境を跨いで、資産を移動することが可能だ。
ペイワードの発表によると、xStocksはローンチ1年目で、総取引高300億ドル超を処理し、そのうち60億ドル超がオンチェーンで決済された。また、世界中で12万5,000人を超える保有者を抱えている。