JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは4月6日公開の年次株主書簡で、プライベートクレジット市場について「信用サイクルが到来した際、レバレッジド・レンディング全般の損失は予想を上回るだろう」と警告した。
ダイモン氏が問題の核心として指摘したのは2点だ。1つ目は、信用引き受け基準の緩みにより実際の損失がすでに現在の市場環境に照らして「あるべき水準より高い」状態にあること。
2つ目は、プライベートクレジット市場にはローン評価の厳格な透明性や「時価評価(マーク)」が欠如しており、環境が悪化すれば投資家が実際の信用劣化よりも早い段階で解約に動く構造的な欠陥があることだ。ダイモン氏はまた、金利や信用スプレッドが上昇した場合、借り手がさらに高い金利で再借り入れを迫られ、ストレスが連鎖する可能性にも言及した。
この警告が現実の問題として顕在化したのがブルー・オウル・キャピタルの事例だ。同社は2026年第1四半期に旗艦2ファンドで合計約54億ドルの解約請求を受け、上限5%を超えたとして引き出しを制限した。テクノロジー融資ファンド「ブルー・オウル・テクノロジー・インカム・コープ」では純資産比40.7%、直接融資ファンド「ブルー・オウル・クレジット・インカム・コープ(約200億ドル規模)」では21.9%の解約請求が殺到した。
CoinPostが3月に報じたように、ブラックストーン、モルガン・スタンレー、ブラックロック傘下のHPS、アレス・マネジメント、アポロ・グローバル、KKRも軒並み引き出し制限に踏み切っており、2026年第1四半期に直接融資ファンド全体で投資家が引き出しを試みた総額は約190億ドルに上る。フィッチ・レーティングスによる米国のプライベートクレジットのデフォルト率は9.2%と過去最高を更新し、広義のシンジケートローン市場(4.5%)の約2倍に達している。
ダイモン氏はこうした問題に対し、独自の比喩表現を用いて早期から注意を促してきた。2025年10月の決算説明会では、サブプライム自動車ローン会社トライカラーへの1億7,000万ドルの損失計上を受け、「ゴキブリを1匹見たら、おそらくもっといる」と指摘した。
一方、今回の株主書簡では市場規模約1兆8,000億ドルのプライベートクレジット市場は「おそらくシステミックリスクにはならない」とも記しており、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の見解とも一致する。ただし、保険監督当局が最終的に格付けと評価基準を厳格化する方向で動くと予測しており、その場合、対象ファンドへの資本増強圧力が強まる見通しだ。
なお、プライベートクレジット問題が深刻化すれば、当局が金融緩和に踏み切る可能性が視野に入り、代替資産としてのビットコインや仮想通貨への資金流入というシナリオも中長期的には排除できないとされる。