初期のビットコイン( BTC )投資により莫大な富を築いたベルギー出身の仮想通貨ミリオネア、オリヴィエ・ジャンセンス氏が、カリブ海のネイビス島で進める「デスティニー・プロジェクト」の承認を巡り、住民への現金支給を提案したことが大きな議論を呼んでいる。
同氏が率いるこのプロジェクトは、政府からの最終的な開発承認を条件に、同島の全住民に対して月額100ドル(約1.5万円)を無期限で支給するという異例の公約を掲げた。
開発計画の対象はネイビス島南岸の約2,400エーカーに及び、病院や医療センター、高級ヴィラを含む「持続可能な技術特区」の建設に5,000万ドルを投資することが明記されている。ジャンセンス氏は当初、月額11ドルの支給を提案していたが、2026年3月に入り支給額を約9倍の100ドルへと大幅に引き上げたことで、現地での賛否が急速に激化している。
セントクリストファー・ネイビス政府は、2025年8月に「特別持続可能性ゾーン認可法」を可決しており、大規模開発に対して独自の法的・行政的枠組みを認める準備を進めてきた。本法律に基づき承認されたプロジェクトは、国家の主権を維持しつつも、内部の紛争解決において独自のメカニズムを設けることが可能という、リバタリアン的な思想を反映した仕組みとなっている。
この現金支給提案が実現すれば、小規模な島嶼国であるネイビス島全体の消費活動や住民の生活水準に直接的なマクロ経済的影響を及ぼすことは確実視されている。一方で、開発承認を現金で「買う」ような手法が、今後の他の新興国における仮想通貨関連プロジェクトのモデルケースとして定着することへの懸念も識者の間で高まっている。
ネイビス改革党(NRP)のケルビン・デーリー議員をはじめとする野党勢力は、ジャンセンス氏の提案を「公的贈賄」および「影響力による買収」であると公式に批判した。デーリー氏らは、汚職防止法に基づく即時の調査を求めており、民主的なプロセスが仮想通貨の巨大な資本によって歪められているとして、マーク・ブラントリー首相の責任を追及している。
ブラントリー首相は既に連邦政府へプロジェクトの草案を提出しているが、最終的な開発の可否は、議会による特別持続可能性ゾーンの最終承認という政治決断に委ねられている。ジャンセンス氏側は、プロジェクト収益の10%を市民に、10%を主権財富基金に還元する長期的な経済的メリットを強調し、批判に対して真っ向から反論を続けていく構えである。
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