8日投開票の衆議院選挙で、高市早苗首相率いる自民党が316議席を獲得し、戦後最大規模の圧勝を収めた。単独で3分の2を超える議席を確保したことで、安定的な政権運営が可能となる。
この選挙結果を受け、仮想通貨業界では税制改革、金融商品取引法への移行、積極財政の影響などに注目が集まっている。仮に政権交代となれば、これらの政策が頓挫するリスクもあっただけに、業界は今回の圧勝を好意的に受け止めている。
高市政権が掲げる積極財政は、家計支援と景気下支えを通じて市場のリスク選好を強めやすく、株式などリスク資産への資金流入期待も高める。
実際、衆院選で与党が圧勝した直後から、市場では財政拡張への思惑を背景に「円安・株高」のいわゆる高市トレードが意識されるとの見方が報じられている。 与党が衆院で安定多数を確保したことで、今後の予算案の審議が比較的円滑に進むとの見方も、市場心理を下支えしている。
さらに、選挙公約の柱である「食料品の消費税(8%)を2年間停止」といった減税策は、実行段階で財源論が焦点となり、国債利回り上昇や円安を招きうるとの指摘も出ている。
この場合、仮想通貨は株式と同様にリスク選好の高まりの恩恵を受けやすい上、円安が進めばドル建て相場が横ばいでも円建ての仮想通貨価格が押し上げられやすいため、日本の投資家にとっては追い風になる可能性がある。
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暗号資産(仮想通貨)業界が高市政権下で最も注目するのが税制改革だ。業界が長年要望してきた課題で、現在の仮想通貨取引による利益は雑所得として最高55%の税率が課される。これは株式投資の一律20%と比べ著しく高く、投資家の参入障壁や国内市場の競争力低下を招いている。
昨年12月に公表された令和8年度与党税制改正大綱では、一定の暗号資産について申告分離課税(税率20%)への移行が明記され、株式投資と同様の税制が適用される方向性が示された。
これを受け、金融庁は2025年6月、暗号資産に関する大幅な制度見直し案を公表。暗号資産を現行の資金決済法から金融商品取引法へ移行させるとともに、デジタル資産所得について申告分離課税(20%)を適用する具体的な制度設計を示した。
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また、片山さつき金融担当大臣は、今年1月のCoinPostのインタビューで「業界が長年要望してきた暗号資産の分離課税が実現する」と明言。
施行まで約2年の準備期間が必要な理由について「改正金融商品取引法を業界に十分周知し、暗号資産取引業者や自主規制機関の体制整備を強化させる必要がある」と説明している。
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今回、与党が衆院で圧倒的多数の議席を確保したことで、関連法案の審議・成立が、従来より円滑に進むとの見方が強まっている。
高市首相は2019年、総務大臣在任中に、政治資金規正法との関係で「ビットコイン( BTC )など暗号資産は当時の制度解釈上、『金銭及び有価証券』には該当しない」との見解を示し、暗号資産の法的位置づけを巡る議論を喚起した。
その後、国会質疑や政府答弁書の整理を経て、「財産上の利益」として規制対象となり得るとの整理が示されるなど、制度面での検討が進むきっかけとなった。
また、高市首相は昨年12月8日の衆議院本会議で、国民民主党の税制改正に関する質疑に対し「政府としては、与党税制調査会の検討を踏まえ適切に対応していく」と答弁。
これらの発言や対応から、高市氏は暗号資産やWeb3といった新技術の可能性を認識しつつも、制度面では拙速な判断を避け、既存の法体系や党内プロセスとの整合性を重視する慎重な姿勢を取ってきたとみられる。
もっとも、財政政策や制度整備の効果が仮想通貨市場にどの程度波及するかは、今後の具体的な制度設計や市場環境に左右される。短期的な期待だけでなく、予算編成や法改正の進捗、国際的な規制動向を見極める必要がある。
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