2026年を迎えるにあたり、複数の大手企業が暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン領域における今年のトレンド予想を公開しました。予想の内容は各企業によって様々ですが、注目する分野にRWA(現実資産)のトークン化とプライバシーを挙げている企業が複数あります。
RWAのトークン化とプライバシーは、大手企業以外にも注目している業界関係者や投資家が多くいます。そこで本記事では、どちらの分野にも関係し、伝統金融企業から注目を集めるカントンネットワーク(Canton Network)について、特徴や独自トークン、注目点などについて解説します。
カントンネットワークは、2024年にメインネットをローンチしたパーミッションレス(自由参加型)のブロックチェーンです。金融機関による利用を想定し、プライバシー機能とコンプライアンス機能、拡張性を組み合わせて提供していることが大きな特徴です。
設計では「パブリックブロックチェーンの分散性」と「金融市場に必要なプライバシーと管理」のバランスを保つようにしています。
開発・運営の目的は、プライバシーが保証された状態で資産やデータが、リアルタイムで同期されながらアプリ間を移動できるようにすること。そして、その際に信頼を犠牲にしたり、中央集権的な仲介者に管理権を引き渡したりしないようなネットワークを実現しています。
公式サイトでは、このような仕組みを実現しているのはカントンネットワークだけであると主張しています。
こういった仕組みを実現している主要技術の1つは、Damlというプログラミング言語で書かれたスマートコントラクトです。カントンネットワークは、ネットワーク参加者が安心してデータや価値を交換できるようにして、同期した金融市場の可能性を解放しようとしています。
カントンコインの価格は、本記事執筆時点(2026年1月)で0.1554ドル。前月比で約37%上昇しています。
*データ出典元:コインゲッコー(2026年1月27日時点)
カントンネットワークのネイティブトークンは、カントンコイン(CC)です。発行の主目的は投機を促進することではなく、真の実用性を提供したり、ネットワークの持続可能な成長をサポートしたりした貢献者に公平に報酬を与えるためであると説明しています。
そのため、ローンチよりも前に発行や販売を行ったり、創設者やベンチャーキャピタルや財団などに特別な配分を行ったりしていません。
カントンコインの主な用途は以下の通りです。
また、カントンコインは、バーン(焼却)と新規発行を均衡させる仕組みが導入してあることも大きな特徴です。
具体的には、ネットワーク利用で支払われた手数料をバーンして循環供給量から除外する仕組みが導入されています。そして、それと同時にネットワーク参加者への報酬として10分ごとに新規発行が行われています。
これは、実用性が高まればバーンされる数量が新規発行量を上回り、実用性が低下すれば逆になる仕組みです。
この仕組みによって、1年に約25億CCをバーン・発行することを目指しています。
また、以下はカントンコインの競合と考えられるRWA領域の仮想通貨の本記事執筆時点(2026年1月)における価格と前月比の騰落率です。
カントンコイン(CC)は国内取引所では取扱いがありませんが、RWA関連銘柄への投資に興味がある方は、まず国内取引所で基本的な仮想通貨の売買に慣れておくと良いでしょう。
続いて本節では、カントンネットワークの概要に関するその他の情報について解説します。まずは開発や運営に関与する組織を紹介します。
デジタルアセット社
カントンネットワークは、現在はオープンソースになっていますが、初期の開発はデジタルアセット社が行いました。同社は2014年に創設されています。
企業としてのミッションは、プライバシー機能のあるブロックチェーン技術で金融市場を変革し、資本のフローを改善して、より効率的で公平な回復力のあるグローバル金融システムを構築することです。
具体的には、企業向けの包括的なプロダクトやサービスを提供し、カントンネットワークにおける機関グレードのトークン化ソリューションの普及を加速させることに取り組んでいます。
カントン財団
他にもカントンネットワークには、カントン財団という組織が関与しています。デジタルアセット社はカントン財団の創設メンバーです。
カントン財団が担っているのは、カントンネットワークの全てをつなぐ分散型システム「Global Synchronizer」における公平なガバナンスと監督の実現です。
財団のメンバーにはデジタルアセット社の他、SBIデジタルアセットホールディングスやCumberlandなどの企業が名を連ねています。
なお、以前はGlobal Synchronizer財団という名称でしたが、2025年9月にカントン財団に変更することを発表しました。
続いて、デジタルアセット社の情報に基づき、過去の資金調達事例を紹介します。
同社は2025年6月、戦略的資金調達ラウンドを実施したことを発表しました。概要は以下の通りです( Digital Asset blog )。
また、2025年12月には以下の資金調達を発表しています。
なお、資金調達については、デジタルアセット社の公式サイトに簡潔に以下の内容が記載されています。
仕組み
続いて、カントンネットワークの主な仕組みや技術を紹介します。まずは仕組みです。
カントンネットワークは公式サイトなどでブロックチェーンであると説明されていますが、一方で「ネットワークのネットワーク」とも表現されています。これは全体が単一のブロックチェーンのみで運営されているわけではないことを意味します。
カントンネットワークのエコシステムには、複数の独立したブロックチェーンやアプリが構築されています。そのため、ネットワークのネットワークと呼ばれているのです。
そして、個別のブロックチェーンやアプリの相互運用を実現しているのが、Global Synchronizerです。以下の画像のように、個々のブロックチェーンやアプリが同期するインフラとして、カントンネットワークのGlobal Synchronizerが機能しています。
プライバシー機能
続いて、カントンネットワークのプライバシー機能について解説します。
カントンネットワークのプライバシー機能は、スマートコントラクトで設定されており、プロトコルによってネイティブで実行されます。おおまかな仕組みは、当事者がトランザクションの必要な部分のデータしか受け取らないことです。
例えば、証券の引渡しと代金の支払いを同時に実行するDVP(Delivery Versus Payment)取引の場合、銀行は代金の支払いに関するデータしか確認できません。この際、証券の引渡しに関するデータは見られないようになっています。
一方、証券決済機関は証券の引き渡しに関するデータだけを閲覧できるようになっており、それに伴うお金のやりとりについては知ることができません。
また、ネットワークインフラの運営者は、トランザクションの順序付けや一貫性の確保といった中核作業に必要なメタデータ(データに関するデータ)しか閲覧できない仕組みです。このメタデータとは、取引のステータスや当事者などの情報です。
このように、知る必要がある人にしか知らせない仕組みがカントンネットワークにおけるプライバシー機能の特徴です。
続いて本節では、公式発表をもとに、カントンネットワークの主なユースケースの概要を紹介します。
続いて、本節ではカントンネットワークの注目点や将来性を解説します。カントンネットワークが注目を集めたり、将来性が期待されている大きな理由が、仮想通貨・ブロックチェーン領域で注目されているトレンドに特徴が合致しているためです。
以下で、カントンネットワークに関連するトレンドについて紹介します。
まずは、RWAのトークン化です。米大手ベンチャーキャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)は、2026年に期待できる主要トレンドの1つにRWAのトークン化を挙げています。
例えば、ステーブルコインやトークン化資産を使うことで、銀行は既存のシステムを維持したまま、新たな金融商品やサービスを展開することが可能になると説明しました。
また、融資ではトークン化のプロセス全てをオンチェーンで行うことで、バックオフィスの管理コストが大幅に削減され、アクセスも向上すると指摘しています。
他にも、トークン化によってプライベートクレジット、未上場株式、プライベートエクイティなど、従来は個人投資家がアクセスしづらかった非流動性資産も利用しやすくなりつつあると述べました。
また、米大手仮想通貨取引所コインベースの投資部門が、2026年の注目分野としてRWAの永久先物を挙げています。他の予測では、コインベース本体がトークン化された株式の成長も予想しました。
ソシエテ・ジェネラルはカントンネットワークを活用したデジタル債券の発行を発表した際、従来の資本市場の慣行や要件に従いながら、証券の即時移転ができたとコメント。透明性、追跡可能性、流通速度、決済の効率性が向上したと評価しています。
また、仮想通貨・ブロックチェーン領域でプライバシーに対する関心が高まっていることも、カントンネットワークが注目を集める理由の1つです。a16zは2026年のトレンド予測にプライバシーも挙げました。
同社は、プライバシーは世界の金融がブロックチェーン上に移行するために最も重要な機能ですが、ほとんどすべての既存のブロックチェーンがこの機能を欠いているのも事実だと指摘。そのため、プライバシー機能は他のチェーンとの差別化を図る強力な要素となると述べています。
また、ユーザーがプライバシー対応のプライベートチェーンに参加すると、他のチェーンへの移行にはプライバシー漏洩のリスクがあるため、少数のプライバシーチェーンが市場を席巻する可能性も高まるとみています。
コインベースも2026年の注目分野で、DeFiの文脈でオンチェーンプライバシーを挙げました。
コインベースは、プライバシー資産やプライベートDeFiアプリ、プライバシー重視型決済ブロックチェーンに取り組む開発者が急増し、ゼロ知識証明(ZKP)などの高度な暗号技術を使って検証可能性を維持しながら、ユーザー情報を保護する仕組みが急速に整備されつつあると述べています。
本記事の最後に、日本での導入事例を紹介します。
株式会社Gincoは2025年12月5日、カントンネットワークにバリデータとして参画したことを発表しました( Ginco公式 )。
同社はカントンネットワークについて、従来の金融機関によるパブリックチェーン活用の障壁となってきた制約を克服するために、プライバシー・コンプライアンス・スケーラビリティ(拡張性)という3つの観点で、金融業界のユースケースに親和的な実装を可能にしていると評価しています。
また、ブロックチェーンの特徴から、従来の金融市場とDeFiを繋ぐ新たなグローバル金融インフラとして注目されており、ゴールドマン・サックスなど世界の金融機関と仮想通貨領域のインフラ・サービスプロバイダーが多数参画していると説明しました。
他にもGincoは、バリデータ参画にともない、カントンネットワークの特性を活かした金融機関向けのパブリックチェーン活用支援を強化・推進していくとも説明しています。そして、特に、以下の悩みを持つ企業をサポートすると述べました。
以上が、カントンネットワークに関する解説です。
カントンネットワークは、仮想通貨・ブロックチェーン領域で予想されるトレンドと一致しているだけでなく、実際に大手企業などによる採用が進んでいます。
今後も採用する企業を増やしたり、ネットワークを拡大したりできるか注目が集まっています。
カントンコイン(CC)は現在、国内取引所での取扱いがありません。まずは国内取引所で口座を開設し、仮想通貨投資の基本を押さえておくことをおすすめします。