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ビットコイン、インフレ調整後の購買力ベースでは10万ドル突破せず=Galaxy分析

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デジタル資産の投資運用会社Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)の調査責任者であるAlex Thornが、興味深いXポスト分析を投稿した。

コロナ・ショック後に大規模金融緩和が実施された2020年時点の”米ドル購買力”で換算すると、ビットコイン価格は実質的に10万ドルの大台を一度も突破していないという指摘がある。

インフレ調整後の計算では、ビットコインの過去最高値は2020年時点の購買力に換算すると99,848ドル相当に留まり、真の意味での10万ドルには到達していなかったことになる。

Thornが公開した図表によると、2020年1月から2025年10月の期間で、米ドルの購買力は約75%の水準まで低下した。これは同期間に約25%のインフレ(物価上昇)が進行したことを意味している。

この数字から逆算すると、2020年時点の購買力で10万ドルに到達するには、名目価格で約13.3万ドル(100,000 ÷ 0.75)が必要となる計算だ。

ビットコインが2024年12月5日に初めて名目10万ドルを突破した際も、2020年購買力に換算すると7.5万ドル相当に過ぎず、実質的な10万ドルには遠く及ばなかった。

さらに、2025年10月6日に記録した過去最高値の12.6万ドルでさえ、インフレ調整後は9.98万ドル相当にとどまり、「実質10万ドルの壁」を突破できていないという。

具体例として、2020年9月に1BTC=10,000ドルでビットコインを購入した米国投資家のケースを見ると、2024年12月時点で名目価格は100,000ドル(名目リターン10倍)に達するものの、米ドルの購買力が25%低下しているため、実質的な購買力ベースのリターンは約7.5倍にとどまる計算になる。

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一方で、このような分析手法にはいくつかの限界も指摘できる。

第一に、CPI(米消費者物価指数)は消費者が購入する商品・サービスの平均的な価格変動を示す指標であり、個別の商品カテゴリーや資産クラスによって実際の価格変動は大きく異なる点だ。ビットコインのような投資資産の「実質価値」を消費財の物価指数で測ることには方法論上の課題がある。

第二に、Thornが示す「99,848ドル」という数字は、CPI計算の基準時点(2020年の特定月か年間平均か)や採用するインフレ指標の選択によって変動する。計算方法次第では、ビットコインの実質価格はすでに10万ドル前後に達していたと解釈することも可能だ。

第三に、ビットコインはグローバル資産であるため、単一国のインフレ率で測定することの妥当性も議論の余地がある。例えば欧州では、2022年のエネルギー危機により米国を上回る急激なインフレが発生したが、その後の推移は米国と異なる軌道を描いている。投資家の所在地によって「実質価値」の実感は大きく変わることになる。

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日本の投資家にとっては、さらに複雑な状況が生じている。過去5年間で円は対ドルで約40%下落(2020年の約106円/ドルから2024年末の約150円/ドルへ)しており、ドル自体の購買力低下と相まって、円建てビットコインのリターンは二重の効果を受けることになる。

具体例として、2020年9月に106万円でビットコインを購入したケースを想定する。当時ビットコインは約1万ドル、為替レートは106円だった。

2024年12月時点でビットコインが10万ドルに達した場合、為替レート150円で計算すると資産価値は1,500万円となり、名目リターンは約14倍に達する。

しかし米ドル自体の購買力が25%低下しているため、10万ドルの実質価値は2020年換算で7.5万ドル相当にとどまる。一方、日本国内の物価上昇率は同期間で約10%程度と、米国を大きく下回っている。

この結果、米国の投資家が実質リターン約7.5倍にとどまるのに対し、日本の投資家は円安による為替差益も加わり、実質購買力ベースで約12倍程度のリターンを実現したことになる。

これは、低金利通貨で資金調達し高利回り資産に投資する「円キャリートレード」が長年にわたり人気を集めてきた背景を示す一例といえる。

ただし、これは円安局面における結果である点に留意が必要だ。仮に今後円高に転じた場合、同じメカニズムが逆方向に作用し、ドル建て資産の円換算価値は目減りすることになる。

為替変動リスクは双方向に働くため、円キャリートレードは常に為替反転のリスクを内包している点を認識しておく必要がある。

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