金融安定理事会(FSB)のアンドリュー・ベイリー議長は20日、22~23日に開催されるG20首脳会議を前に各国首脳宛ての書簡を公表し、ステーブルコインの決済・清算における役割拡大に伴う金融安定リスクへの監視強化を表明した。
ベイリー議長は、各国の規制·監督フレームワークに乖離が見られることが「複雑性と潜在的リスクの新たな層を加える可能性がある」と警告した。ステーブルコインが国境を越えて効果的かつ安全に運用できるよう、各当局は規制枠組みの設計を慎重に検討し、効果的で一貫性があり、安全なイノベーションを支援するものにする必要があると強調した。その上で、グローバルな規制の調和と強化、国際協力の促進を求めた。
ステーブルコイン市場は2025年に急速に拡大しており、10月初旬に総時価総額が史上初めて3000億ドル(約46兆円)を突破した。
この急成長を受け、欧州中央銀行(ECB)も警戒を強めている。オランダ中央銀行のオラフ・スライペン総裁は17日、FT紙とのインタビューで、ステーブルコインの大規模な取り付け騒ぎが発生した場合、発行体が準備資産を急速に売却せざるを得なくなり、欧州の金融安定性、流動性、インフレに影響を及ぼす可能性があると警告。最悪の場合、ECBが金利政策の見直しを余儀なくされる可能性もあると述べた。
一方で、法定通貨裏付けのステーブルコインの現在の主な用途は仮想通貨取引にとどまっており、ユーザー層が従来の銀行顧客と異なることから、従来の銀行で見られるような取り付け騒ぎは発生しにくいとの指摘もある。ステーブルコイン保有者は主に投資や取引の利便性を目的としており、預金者とは異なる行動パターンを示すとみられている。
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今後の取り組みについて、FSBは今月18~19日にサウジアラビアのリヤドで開催した総会で、2026年の作業計画を承認した。計画では、ステーブルコインの金融安定性への影響に関する作業を継続し、規制の分断化に対処するための基盤整備と国際協力の強化を進める方針を示した。
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