米政府閉鎖を乗り切る仮想通貨市場、価格下落でも基盤強化に進展=グレースケール報告
米暗号資産(仮想通貨)運用大手のグレースケールは3日、10月の仮想通貨市場レポートを発表。長引く米国政府閉鎖をはじめとするマクロリスクが市場に重くのしかかったが、仮想通貨業界におけるイノベーションは引き続き急速に進展したと報告した。
10月1日に始まった米国政府の閉鎖は月末まで続き、2025年11月4日時点で35日間となり、過去最長記録に並んだ。この歴史的な政府閉鎖に加え、中国に対する関税引き上げの懸念、クレジット市場の圧力、連邦準備制度理事会(FRB)による12月利下げの不確実性などが、市場のボラティリティを高めた。
株式市場では、S&P500指数の時価総額加重は一部の大型株が上昇した一方で、等加重は下落したため、小幅な上昇で月を終えた。金融セクターと住宅建設セクターの株価が最も低迷した。金・銀などの貴金属価格は前月比で上昇したものの、月中は激しく変動。金価格は9月末から10月20日にかけて13%上昇したが、その後月末までに8%下落している。
仮想通貨市場は相対的に低調で、リスク調整後リターンでは、他の資産クラスを下回った。特筆すべきは、10月10日(現地時間)に永久先物市場で発生した業界史上最大規模のロスカットで、主要4取引所で約190億ドル(2.9兆円相当)のポジションが清算された。この期間中、未決済建玉は300億ドル(約4.6兆円)減少した。
グレースケールは、仮想通貨の価格面では大幅な下げとなったものの、規制の明確化と機関投資家の導入に進展があり、ファンダメンタルズを支えていると評価している。
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レポートは、仮想通貨市場の低迷にも関わらず、特定分野で業界のイノベーションが急速に進展した事実に言及し、「投資家にとって励みとなる」と高く評価した。
まず、規制面において、DeFi条項で一時停滞していたデジタル資産市場明確化法案(クラリティ法案)の協議が上院で再開された点を挙げた。グレースケール・リサーチは、同法案が2026年に成立すると楽観視している。
次にステーブルコインの普及が加速しており、10月のステーブルコイン取引総額は約1.4兆ドル(約214兆円)に達した(主にソラナが主導)。ステーブルコインの発行残高は初めて3,000億ドル(約45.9兆円)を突破。また、仮想通貨および従来型企業から数々のステーブルコイン技術への投資が発表された。
さらに、仮想通貨投資商品で、ステーキングとアルトコインへ対応という新たな進展も起こった。米国の上場投資信託(ETP)でステーキング報酬が導入され、現在イーサリアムでは約3%、ソラナでは約7%の報酬率となっている。
また、9月に米証券取引委員会(SEC)が承認した一般上場基準に基づいて、ソラナ( SOL )のスポットETPを含む新たな商品が市場に投入された。
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グレースケールは、ほとんどの仮想通貨の価格が下落する中、例外的に突出したパフォーマンスを見せた仮想通貨ジーキャッシュ(ZEC)を取り上げた。ZECは10月中に3倍上上昇し、時価総額は約65億ドル(約9,966億円)に達した。
Zcashはプライバシー保護機能(シールドアカウント)を備えた分散型デジタル通貨だが、シールドアドレスの保有比率は昨年の平均10%から、約30%へと大幅に増加。プライバシー機能への需要が拡大している。
グレースケールは「ブロックチェーン技術はプライバシー関連の要素なしに完全な潜在力を発揮できない」と主張。パブリックブロックチェーンが主流の金融システムにより深く統合されるにつれて、プライバシー技術への需要が高まり、この分野への機関投資が拡大すると予測している。
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グレースケールは、年末にかけて以下のマクロ経済要因が、短期的には仮想通貨価格に影響すると予想している。仮想通貨は独自の資産クラスだが、投資家層の拡大に伴い、マクロ要因にもある程度反応すると説明した。
仮想通貨特有の観点から注目される業界イベントとして、上院におけるクラリティ法案の進展、さらなるアルトコインETPの導入、イーサリアムの開発者会議「Devcon」(ブエノスアイレスで開催:11月17~22日)とソラナのBreakpoint2025 (アブダビで開催:12月11~13日)を挙げた。
最後に投資家が注目すべき技術動向として、イーサリアム( ETH )の(Fusaka)とソラナ(Alpenglow)のアップグレード、およびAI暗号分野の主要プロジェクト「Bittensor」初の半減期イベントを取り上げている。
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