JCBAとJVCEA、暗号資産の20%申告分離課税と3年間の損失繰越控除を要望
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は7月30日、2026年度税制改正要望書を金融庁に提出し、同日記者説明会を開催した。
要望書には5項目の改正案が盛り込まれており、最優先事項として暗号資産取引の税率を現行の総合課税(最高税率約55%)から20%の申告分離課税への変更を掲げた。
特に今回の要望では、分離課税の適用範囲について「暗号資産の種類およびウォレットの種類により区分しない」ことが明記されている。
JCBA税制検討部会の斎藤岳部会長(株式会社pafin代表取締役)によると、今回の要望では住民税を含めて20%の申告分離課税(所得税15%、住民税5%)と、3年間の損失繰越控除の導入を求めている。現行制度では暗号資産の取引利益は雑所得として総合課税の対象となり、税率は所得に応じて約15%から55%という幅広い設定となっている。
暗号資産市場は着実に成長を続けている。「暗号資産の口座数は今年4月時点で1,200万口座に拡大した。昨年末に1,000万口座を突破してからも伸び続けており、かなり広く国民に流布している資産として認知されつつある」と斎藤氏は市場の現状を説明した。
分離課税が「富裕層優遇」になるのではという懸念もあるが、実態は異なる。2022年6月に実施した暗号資産投資家への年収調査(26,002件の回答)によると、年収300-700万円の層が50.7%と過半数を占め、全体の約7割が中間所得層だった。斎藤氏は「300万から700万円の層では、所得税と住民税を合わせると20%を超える。分離課税により一律20%になれば、むしろ中間所得層に恩恵がある」と指摘した。
今回の要望で特に注目すべきは、分離課税の対象範囲を「暗号資産の種類やウォレットの種類で区別しない」と明記した点だ。これは交換所経由の取引だけでなく、個人が管理するウォレットを通じた取引も含むことを意味する。
JCBA会員企業の実態を見ると、ウォレット関連ビジネスを行っている事業者は3割、一部行っているところを含めると4割に達している。「仮に分離課税の対象を交換所での取引のみに限定すると、Web3.0エコシステムで多く占めるウォレット関連ビジネスやスタートアップに対してディスインセンティブとなり、日本のWeb3.0産業の発展を阻害する恐れがある」と斎藤氏は政策の一貫性の重要性を強調した。
日本の暗号資産税制は国際的に見ても突出して高い。「先進諸国と比較しても日本の税率の絶対額は非常に大きい。仕組みとしてはキャピタルゲイン課税のような形、日本でいう分離課税で一律の税制を当てはめていくのが最もシンプルで分かりやすい」と斎藤氏は国際標準との乖離を指摘する。
さらに深刻なのは、将来的に暗号資産ETFが導入された場合の税制の不整合だ。「もしビットコインETFができたら、かなり高い確率で証券として20%になると思う。同じ実質同じ資産を扱っているのに、チャンネルによって20%なのか最高55%になってしまうのかが大きく分かれてしまう。これは非常に公平性、中立性を欠いた税制」と斎藤氏は問題点を明確にした。
今回提出された要望書には、以下の5項目が盛り込まれている。
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