トランプ関税の懸念再燃で前週末にかけて仮想通貨急落、Hyperliquidで1億ドルの清算発生
トランプ関税を巡る貿易摩擦が再び激化の様相を見せている。トランプ米大統領は5月30日、ペンシルベニア州の製鉄所で、輸入される鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を現行の25%から50%に倍増すると発表した。この措置は6月4日水曜日から実施される。
トランプ氏は「鉄鋼に対する追加関税を25%から50%に引き上げる。これにより米国の鉄鋼産業の安全がさらに強化される」と述べ、国内産業保護の姿勢を鮮明にした。
この動きに対してEU(欧州連合)は、「問題解決に向けた、我々の継続的な交渉努力を損なうものだ」と批判。問題が解決されなければ対抗するための報復措置を実施すると表明した。
さらにトランプ氏は同日、自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルで、「中国は米国との合意に完全に違反した。」などと投稿、中国政府が関税引き下げ合意を「完全に破った」と強く非難した。
米中両国は今月スイス・ジュネーブで行われた閣僚級協議で、相互に課していた高い関税を90日間引き下げることで合意していた。具体的には相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げ、上乗せ分の90日間停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築を打ち出していた。
トランプ氏は中国が重要鉱物の取引に関する合意にも違反したと主張し、中国製品に最大145%の関税を適用する可能性を示唆している。ただし、その後の記者会見では習近平国家主席との会談に期待を示し、「習主席と確実に話し合う。うまく解決できることを願っている」と述べている。
また、ヘグセス米国防長官が台湾を巡る紛争は差し迫っていると警告し、アジア安全保障会議に中国国防相が欠席したことを非難。これに対し中国外務省は「台湾は中国の問題であり、いかなる国も干渉する権利はない。米国は火遊びしてはならない」との声明を発表するなど応酬が繰り広げられた。
このような貿易摩擦の再燃は市場心理を悪化させ、株式市場や暗号資産(仮想通貨)市場では、前週末にかけてリスク回避の売りが続いた。
5月30日には、先物市場で7.9億ドルのロングポジションがロスカット(強制清算)された。
2日にかけて反発したビットコイン( BTC )は、前日比+0.8%の1BTC=105,500ドルに。
米テキサス州のビットコイン準備法案の成立期待などが背景にあるものとみられ、押し目買い意欲は健在であることが確認されている。
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一方、直近のビットコインETF(上場投資信託)市場では大規模な資金流出が発生している。5月30日の純流出額は6億1622万ドルに達した。
資金フローの推移では、緑色で示される資金流入に対し、赤色で表示される資金流出が目立って増加している。特に5月30日前後では顕著な流出が観測されており、米政権による関税政策への懸念や大口投資家の清算による市場への影響が、継続的な資金流出圧力として表面化している状況といえる。
オンチェーンアナリストのウィリー・ウー氏は、「ビットコインが長期的な調整局面に入る可能性がある」と悲観的なシナリオを示した。
ビットコインの週足チャートで弱気のダイバージェンスが発生する可能性を指摘。強気の勢いが失われることを示唆した。
一方でウー氏は、ビットコイン市場が根本的な構造変化を迎えていると分析している。従来のビットコイン半減期を基準とした4年サイクルの影響力が低下し、代わりにグローバルな流動性やFRBの金融政策や米政権の関税政策などのマクロ経済要因が市場を牽引するようになっている。
5月30日には、分散型デリバティブプラットフォーム「Hyperliquid」で高レバレッジ取引を行っていたジェームズ・ウィン氏が運用するアカウントで、1億ドル規模のロスカット(強制清算)が発生した。
ウィン氏は5月24日までにビットコインの巨額のロングポジション11,588BTC(12億5000万ドル)相当を積み上げていたとみられる。しかし、ブロックチェーン分析会社アーカム・インテリジェンスによると、清算の影響でウィン氏の口座残高はわずか23ドルまで減少した。
ピーク時には8200万ドルの利益を計上したものの、5月23日から5月30日までの7日間で吹き飛んだことになる。
今回のロスカットについて、大口投資家を狙った市場操作が指摘される一方、ウィン氏は50倍のハイレバレッジ取引を多用し、ロスカット後にも即座に再参入を図るなど、規格外のリスク許容度を示している。
そのため、その資金源や取引動機については「機関投資家やファンドから支援を受けているか、広告塔としてのHyperliquidのマーケティングアカウントか」などの憶測が交錯した。
FTX債権者アクティビストのSunil Kavuri氏は、2020年のオンチェーン履歴から、ウィン氏のウォレットがアラメダ・リサーチから6000ETHを受け取ったと指摘した。アラメダは破綻前に新興トレーダーを支援していた実績があり、これがウィン氏の初期資金の出どころとの見方も示されている。
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