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「神戸ビーフ正規店」の証、期限切れでも使われていた──回収できない牛の像をブロックチェーンで管理

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神戸ビーフの正規取扱店には、金色の牛の顔が浮かび上がったブロンズ像が置かれています。神戸肉流通推進協議会が指定登録店に貸し出す、いわば「正規店のお墨付き」です。

ところが、店の認定期限が切れても像を回収できず、そのまま使われるケースがあったそうです。偽物の像が作られたのではありません。協議会が貸し出した本物の像だからこそ、資格を失った店に残れば、客には正規店の証に見えてしまいます。

2026年11月4日、SBIトレーサビリティは、この像の認証管理にNFCタグとブロックチェーンを組み合わせたサービスが採用されたと発表しました。神戸ビーフには17年前から牛肉の履歴を調べる仕組みがありましたが、店頭の「お墨付き」には別の課題が残っていました。

「本物の肉」と「買える店」を証明する仕組み

神戸ビーフという名前が広まっても、かつてはどの牛肉をそう呼ぶのか、明確な定義がありませんでした。神戸肉流通推進協議会の公式サイトによると、「この肉、本当に神戸ビーフ?」「どこで買えるの?」という消費者の声を受け、1983年に生産者や食肉流通業界、消費者が協力して協議会を設立しました。

協議会は品質基準を設け、基準を満たす牛肉に「神戸肉之証」を発行しています。加えて、生産者から販売店、飲食店までを指定登録し、認定店にブロンズ像を貸与しています。肉の認定と店の認定を組み合わせることで、消費者が本物の神戸ビーフを探せるようにしたのです。

ブロンズ像の台座には「神戸肉流通推進協議会会員の証」と記されています。店頭に置けば一目でわかる反面、金属製の像は登録状況が変わっても同じ姿のままです。像を持っている事実と、今も資格が有効である事実が、時間とともに食い違う余地がありました。

牛肉の履歴は2009年から調べられた

協議会は2009年6月1日、「但馬牛血統証明システム」を稼働させています。牛の10桁の個体識別番号を入力すると、出生地や育った場所、血統、神戸ビーフとしての認定情報をインターネットで調べられる仕組みです。当時から、売られている牛肉の出自を消費者が確認できるようにしていました。

2019年10月にはDNA鑑定検証システムも稼働しました。認定食肉センターで採取した肉片を保管し、流通した肉と照合できる体制を整えています。2023年8月からは指定登録店を抜き打ちで巡回してDNA鑑定を行い、その結果も公式サイトで公開しています。

2019年の発表には、食肉センターへ運ばれた生きた牛を識別する際、個体識別番号に加えて「鼻紋」も照合するとあります。人の指紋に当たる鼻の模様まで使い、生きた牛から肉になった後まで取り違えを防ぐ仕組みを整えてきました。

個体識別番号やDNAで確かめているのは、食肉として流通する神戸ビーフの履歴や真正性です。一方、金色のブロンズ像は店に与えられた資格を示しています。肉の流通をいくら詳しく追跡しても、店舗の登録期限までは牛の番号から分かりません。今回の取り組みは、この残っていた部分を扱います。

図1|肉の真正性と店の登録資格の違い(説明用イラスト)

実際に取り消された「指定登録店」の資格

店の資格が変わるのは、期限切れだけではありません。2024年7月、協議会は牛肉の不適正表示などを受けて指定店だった事業者を除名しました。2025年6月にも、牛の個体識別番号の不適正表示を理由に行政処分を受けた別の事業者を除名しています。

この2件について、ブロンズ像の返却が滞ったとの公表は確認できません。ただ、協議会の判断によって指定登録店の資格が取り消される実例です。公式の登録情報が変わっても、店先の目印まで自動的に変わるわけではありません。

さらに協議会は2025年11月、神戸ビーフの名称を使う未登録飲食店の調査を強化し、必要に応じて巡回やDNA鑑定、関係部署への通報を行うと発表しました。ブランド管理では肉の中身も、看板を掲げる店も確認しなければなりません。指定店は日本に加えて米国、欧州、アジアにもあり、回収の難しいブロンズ像を現物だけで管理する負担は大きくなります。

図2|資格が失効しても像が店頭に残る構造(概念図。除名事例で像が残ったことを示すものではありません)

回収できない像に、スマホをかざす

採用されたのはSBIトレーサビリティの「SHIMENAWA(しめなわ)」です。ブロンズ像にNFCタグを貼り、同じ技術を内蔵した店頭用ポップも用意します。NFCは交通系ICカードでも使われる近距離通信の技術で、対応するスマホを近づけるだけで情報を読み取れます。

客が像やポップにスマホをかざすと、ブラウザ上で指定登録店名、登録番号、有効期限などを確認できます。専用アプリは不要です。協議会は管理システムから登録状態や有効期限、像の設置状況を管理し、更新や失効に合わせて認証ステータスを変更できます。

たとえば店が認定を更新しなかった場合、ブロンズ像をその日のうちに回収できなくても、スマホから参照する認証情報には失効を反映できます。金色の牛は従来の目印として残しながら、その時点の登録状況を調べる入口にもなるわけです。

確認できるのは、客がレストランで料理を注文する前からです。牛肉の10桁の個体識別番号を知らなくても、店頭のブロンズ像から取扱店の資格を調べられます。牛肉の履歴検索とは、使う場面も変わっています。

なお、2026年1月29日の時点で協議会はNFC認証の実証試験を案内し、兵庫県内から段階的に広げる方針を示していました。11月4日のSBIの発表は国内外の指定登録店向けの採用を明らかにしたもので、設置済み店舗数や利用件数は公表されていません。

図3|NFCによる認定状況の確認イメージ(画面内の店舗名・登録番号・有効期限は架空の表示例です)

なぜブロックチェーンを使うのか

有効期限を表示するだけなら、普通のデータベースでも実現できます。今回の仕組みでは、NFCタグに紐づいた店舗情報や認証情報をブロックチェーンに記録します。目の前の像とデジタル上の登録情報を結びつけ、その記録を改ざんしにくくすることが狙いです。

SHIMENAWAは、2021年の開発発表で企業向けブロックチェーン「Corda(コルダ)」を採用したサービスとして紹介されています。ビットコインのように不特定多数が暗号資産を送るための仕組みとは違い、企業間で情報を管理する用途に使われます。SBIは開発時、サービス提供者からも情報を保護できる仕組みとしてCordaを説明していました。今回の神戸ビーフ向け構成について、利用するノードなどの詳細は11月4日の発表にありません。

NFCタグは像と登録データをつなぎ、協議会は店舗の資格を審査して認定状況を更新し、ブロックチェーンはその情報の記録を支えます。どの店を認めるか、いつ資格を取り消すかを決めるのは協議会です。消費者が暗号資産ウォレットを用意したり、トークンを買ったりする必要はありません。技術を導入しても、登録情報を正しく更新する運用が認証の信頼性を左右します。

金色の牛が知らせる「認定の終わり」

1983年の協議会設立につながった「この肉は本物か」「どこで買えるか」という二つの疑問。神戸ビーフは個体識別番号とDNA鑑定で肉の履歴を確かめる方法を積み上げ、今回、店先のブロンズ像から現在の認定状況を確認する仕組みを加えようとしています。

ただし、登録の失効がデジタルで反映されても、スマホをかざさず像だけを見る人には同じ金色の牛が見えます。実際の効果は、NFCタグの設置がどこまで進み、期限が切れた際に最新情報へたどり着けるかにもかかっています。

これまでのブロンズ像は、協議会に認められた店であることを知らせる道具でした。今度は同じ像が、「もう認められていない」という情報への入口にもなります。回収できない認定証の失効をどう伝えるか。神戸ビーフが取り組んでいるのは、正規店の証を発行する仕組みを、資格が終わるときまで機能させることです。

参考資料

SBIトレーサビリティ:SHIMENAWA採用発表(2026年11月4日): https://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2026/1104_16710.html

神戸肉流通推進協議会の設立経緯と目的: https://www.kobe-niku.jp/contents/council/index.html
但馬牛血統証明システムの稼働(2009年): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/55/
DNA鑑定検証システムの稼働(2019年): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/216/
DNA鑑定検証システムの運用・鑑定結果: https://kobe-niku.jp/contents/dna/index.php
指定登録店の除名発表(2024年): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/308/
指定登録店の除名発表(2025年): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/324/
神戸ビーフのブランド管理強化(2025年): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/330/
NFC認証の実証試験案内(2026年1月): https://www.kobe-niku.jp/Index/view/id/334/
SBIトレーサビリティ:Cordaを活用したSHIMENAWAの開発(2021年): https://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2021/0927_12657.html


ブロックチェーン基盤のCorda(コルダ)を活用したトレーサビリティ・サービス「SHIMENAWA」の開発について(SBIトレーサビリティ)- PR情報|SBIホールディングス www.sbigroup.co.jp

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記事は、公開情報をもとにブロックチェーン関連技術の活用事例を紹介する一般的な情報提供であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。



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