三菱UFJ銀行やHSBCなど世界の金融機関5社は4日、トークン化された金融市場の共通標準づくりを担う非営利団体「Global Layer One Organisation(GL1 Org)」をシンガポールで設立したと発表した。ほかにJPモルガンのブロックチェーン事業部門キネクシス(Kinexys by J.P. Morgan)、仏ソシエテ・ジェネラル傘下のSG-FORGE、英スタンダードチャータードが名を連ねる。
GL1 Orgは、シンガポール金融管理局(MAS)が各国の金融機関や政策当局と進めてきた「Global Layer One(GL1)」を引き継ぐ組織だ。2023年に当局主導で始まった枠組みが、業界主導の運営に移る。MASは2024年6月の時点で、GL1の次の段階として非営利団体の設立を検討すると表明していた。
トークン化は、債券やファンド持分、預金といった金融資産の権利をブロックチェーン上のトークンとして発行・管理する手法を指す。取引や決済の効率化が見込まれる半面、基盤ごとに仕様が異なると資産を相互にやり取りしにくい。発表文は、各国でプラットフォームやネットワークが増えるなか、共通の手法が金融機関の基盤横断的な運用を後押しすると説明している。
GL1はこれまで、実務向けの枠組みを2つ公表してきた。1つは「市場インフラ(MI)ツールキット」。国際基準と業界の先進事例を踏まえた管理項目の体系で、市場インフラの適格性を評価し、設計を支援する。もう1つの「プログラマブル・コンプライアンス(PC)ツールキット」は、規制や政策上の要件をデジタル金融インフラに組み込む手法をまとめたものだ。
GL1 Orgはこの2つの普及と改良を担うほか、金融機関や基盤、法域をまたぐ接続性の確保にも取り組む。参加の門戸は金融機関に限らず、政策当局や市場インフラ事業者、フィンテック企業にも開くという。
三菱UFJ銀行でデジタルアセット部門を統括するMasashi Watanabe氏は、将来の決済システムづくりには政策当局と金融機関の国際協調が欠かせないと指摘した。そのうえでGL1 Orgが両者をつなぐ「門であり橋」になるとの考えを示した。
SG-FORGEのステファニー・カボシオラス最高戦略・グローバル政策責任者は、同社がEUの暗号資産市場規則(MiCA)に準拠したステーブルコインの発行体である点に触れ、業界標準の共通基盤がトークン化資産市場の拡大に最善の道だと述べた。スタンダードチャータードでシンガポールとASEAN・南アジアのCEOを務めるパトリック・リー氏も、パブリック・プライベート両方のチェーンでデジタル市場インフラが生まれるなか、標準の確立が相互運用性に不可欠だとした。
MASのレオン・シンチョン副長官は、GL1の業界主導組織への移行を歓迎した。次の段階の取り組みと、より幅広い業界参加を支援する方針だ。


