クラリティー法案の提案者であるルミス米上院議員は、仮想通貨取引所バイナンスで約63億ドル(約1兆円)の被害が出たハッキングを受け、停滞中の同法案が成立していれば、法執行機関からの連絡直後に不審な取引を凍結できる法的保護を仮想通貨企業が得られたと主張した。
同議員はXへの投稿で、4時間足らずで60億ドル超が盗まれた史上最大のサイバー強奪だったとし、1分遅れるごとに資金は戻らなくなると強く訴えた。
この投稿に対し、非営利団体ベター・マーケッツの政策ディレクター兼最高執行責任者で、元米証券取引委員会(SEC)首席補佐官のアマンダ・フィッシャー氏は、クラリティー法案はステーブルコイン発行体に裁判所の命令に基づく凍結を求めており、ルミス議員の主張は事実でないと反論した。同氏は取引所向けの該当条文を示したうえで、仮想通貨企業が資産の凍結を可能な限り迅速に進めていたことにも触れた。
しかし、フィッシャー氏の主張に対し、政策団体ソラナ・ポリシー・インスティテュートの法務顧問、パトリック・ウィルソン氏は、同法案の条項が、違法行為があると合理的に判断した場合の任意かつ一時的な凍結について、ステーブルコイン発行体を私人による訴訟から明示的に保護しており、裁判所の命令は不要だと反論した。
一方、会員企業250社超の業界団体デジタル・チェンバーはハッキング発覚後、米議会の指導部へ書簡を送り、現在の議会の会期末までに、顧客資産の保護と米国の取引所の連邦監督に絞った法案を取り上げるよう求めた。同団体は、包括的な市場構造法案が長期的には適切な解決策だとする一方、米国の現物取引所は州ごとの送金業ライセンスの下で運営され、連邦の包括的な登録・監督の枠組みがないと指摘した。
同書簡によると、ステーブルコイン発行体とブロックチェーン企業は数時間以内に盗まれた資金の30億ドル(4,727億円)近くを凍結し、バイナンスは全利用者の資金を返還すると保証しており、TRMラボとチェイナリシスは北朝鮮の国家支援ハッキング部隊によるものと高い確度で結論づけたという。
連邦監督に絞った法案の最低限の条件として、デジタル・チェンバーは、破産時にも顧客が優先的に補償されるよう顧客資産を会社資産と分けること、米商品先物取引委員会(CFTC)に米国のデジタル商品取引所・ブローカー・ディーラーへの登録・検査・執行権限を与えること、顧客資産の移動に複数人の承認を求めることなどの安全基準を設けることの3点を挙げた。
同団体は、上院農業委員会を通過したデジタル・コモディティ・インターミディアリーズ法案(Digital Commodity Intermediaries Act)が取引所登録と顧客保護の中核となる枠組みを含むため、これらに絞った縮小版なら、広範な協議と並行して規制当局が米国の取引所に対する実質的な監督を直ちに行えると説明した。
さらに、規制当局側では、CFTCのマイケル・セリグ委員長が30日、CNBCの番組で、バイナンスなどを米国の金融市場で求められるサイバーセキュリティ対策などの保護を欠く「規制されていない海外取引所」と位置づけ、米国のデリバティブ市場と同じ基準や顧客保護規則を課す、取引所がCFTCに任意で登録できる選択肢を設ける考えを改めて明らかにした。
同委員長はまた、ブロックチェーンは取引記録が公開されており銀行強盗より盗まれた資金を追跡しやすいと語り、追跡にはかなりの見込みがあるとして、CFTCが法執行機関を支援する姿勢も示した。

