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バイナンス不正流出の大半が約20分で実行、秘密鍵に頼らず署名悪用

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世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスで29日に約63億ドルが流出し、大半が約20分間に集中した原因について、TRMラボやエリプティックなど複数の分析会社は、秘密鍵の盗難ではなく署名の仕組みの侵害との見方を示した。

北朝鮮の国家支援ハッカー集団「トレーダートレイター」の犯行だと、TRMラボとチェイナリシスは分析したが、バイナンスは攻撃者を特定しておらず、政府機関による公式な特定もない。

バイナンス自身は初期調査で、開発運用(DevOps)担当エンジニアのノートパソコンが侵害され、攻撃者がサービスコンテナに入って不正な出金取引を送った可能性があると説明し、秘密鍵の漏洩の痕跡はないとした。分析各社は、弱点は鍵の保管ではなく何に署名するかを決める承認の層にあり、鍵を守る専用機器や分散管理、オフライン保管でも、侵害された処理による署名の指示は自動では止められないと指摘した。

具体的には、分析各社によると、約9から10のブロックチェーンのうちイーサリアム以外で、攻撃者はバイナンスのホットウォレットに通常の送金へ署名させ、攻撃者管理のアドレスへ送らせた。署名は有効で、バイナンス自身の署名経路を通っていたため、各チェーンに受け入れられたという。

一方、攻撃に利用された「EIP-7702」は、イーサリアム共同創設者のビタリック・ブテリン氏らが2024年5月に提案し、2025年5月のアップグレード「ペクトラ」で導入された正規の機能だ。通常のウォレットがアドレスや秘密鍵を変えないまま、複数の送金のまとめ実行などスマートコントラクト(自動実行プログラム)の機能を使え、設定にはウォレット側の署名入りの許可(認可)が要る。

イーサリアムでは、攻撃者はウォレットの連続した取引番号(ノンス)に対応する50件の事前署名済み認可を送り、実行時点の番号と一致した1件だけが有効になって、バイナンスのホットウォレットに攻撃者管理の資金抜き取りコードが入った。この設定により、ホットウォレットは攻撃者の指示どおりに資金を送り出す状態になった。

この手口について、分析各社は、約9から10のブロックチェーンで短時間に有効な署名が出たことと、鍵を持つ攻撃者なら実行時点の番号で署名すれば済むため不要な50件の一括送信を、共通の署名経路が侵害された根拠に挙げた。攻撃者が必要としたのは秘密鍵や鍵の暗号を破る手段ではなく、鍵を保管する系統に署名を指示する能力だったという。

対策として、分析各社は、署名サービスとは別の信頼領域に独立した承認ルールの判定システムを置いて原則拒否で運用し、送金先の許可リスト、1回ごと・一定時間ごとの送金額の上限、大口や通常と異なる依頼への人による承認を設けるよう、繰り返し求めた。

また、分析各社は、EIP-7702のような想定外の高度な認可は拒否か厳しい制限の対象とし、連続した取引番号の範囲で複数の認可をまとめて求める依頼は重大な警報として扱うよう求めた。あわせて、「0xef0100」で始まる委任コードがイーサリアムのウォレットに設定されていないかを監視し、取り消し手順を事前に試験しておくことも提言した。

アクセス管理では、分析各社は、署名を依頼できる主体を短期間で失効する認証情報と最小限の権限に絞り、開発者のノートパソコンから本番の署名系への直接の経路をなくし、署名系統と承認経路をチェーンやウォレットの階層ごとに分けるべきだと指摘した。端末は攻撃対象とみなして特権操作専用の強化端末やフィッシング耐性のある多要素認証を使うことや、ホットウォレットの残高を流出しても耐えられる水準に抑えることも挙げた。

侵入経路を巡っては、バイナンスは30日、当初示したノートパソコンの侵害の可能性に加え、ほかにも複数の侵入箇所が見つかり、1人による犯行ではなく痕跡を消す仕組みも使われたと明らかにした。ただ、ノートパソコンがどう侵害されたかは明らかにしておらず、根本原因の報告書は今後公表する方針だ。

また、バイナンスは流出発生の数日前、偽の採用面接などで悪意あるプログラムを実行させる北朝鮮系の攻撃を複数阻止したと説明していたが、ノートパソコンの侵害との関係性は明らかになっていない。

なお、追跡の動きとして、エリプティックは、同社が示す64億3,000万ドルの流出に関わる48アドレスの無料ブロックリストを公開し、新たなアドレスが判明次第、リアルタイムで更新する方針を示した。

2025年2月21日に仮想通貨取引所バイビットで約2,400億円が流出した事件では、米連邦捜査局(FBI)が当時北朝鮮のトレーダートレイターによるものと発表した。今回のバイナンスの流出額は1兆円超で、約5倍に当たる。

バイビットの事件で入口になったのは、バイビットが使うマルチシグ(複数署名)のウォレット管理サービス「セーフ」の開発者のパソコンだった。セーフの調査では、2月4日に株式投資シミュレーターを名乗るプログラムを取り込んで侵害され、攻撃者は奪ったクラウドの認証情報を使い、2月19日に署名画面を動かすプログラムを改ざんした。

改ざんされた画面には、バイビットの署名者が承認しようとしていたコールドウォレットからホットウォレットへの定期的な送金が通常どおり表示されたが、実際に署名させられたのは、資金を動かす送金ではなく、ウォレットを動かすスマートコントラクトを攻撃者管理のものに入れ替える指示で、これにより攻撃者が資金を動かせる状態になった。攻撃者は、この入れ替えが実行された約2分後に、改ざんしたプログラムを元に戻して痕跡を消した。

バイビットでは、イーサリアムのコールドウォレットが標的で、バイビット自身のシステムの侵害は確認されず、外部サービスを経由して署名者が偽の画面に欺かれた。

バイナンスのハッキングとバイビットの事件に共通するのは、入口が開発者やエンジニアのパソコンだった点で、バイビットでは確認され、バイナンスは現時点でその可能性があると説明している。どちらも有効な署名で実行され、攻撃者が痕跡を消した点も共通する。

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