自民党のブロックチェーン推進議員連盟(会長・木原誠二衆院議員)は27日、第37回会合を開き、8月に実施した米国視察の内容を報告した。
視察には会長代行の平将明衆院議員と事務局長の神田潤一衆院議員、日本ブロックチェーン協会(JBA)のメンバーが参加し、ワシントンDCとニューヨークで米財務省や証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、JPモルガン、予測市場のカルシ(Kalshi)とポリマーケット(Polymarket)などを訪ねた。
JBA代表理事の加納裕三氏によると、米財務省はマネーロンダリング対策の面から仮想通貨に関わり、イノベーションを後押しする姿勢が鮮明だった。CBDC(中央銀行デジタル通貨)を支持しないトランプ政権の方針も一貫しているという。
平氏は、SECのヘスター・ピアース委員の話が印象に残ったと述べた。日本ではアクセスさせないことを投資家保護とみなしがちだが、ピアース氏はアクセスの確保こそが投資家の利益になるとの考えを明確にしていたという。
民間では、MMF(マネー・マーケット・ファンド)をトークン化したJPモルガンが他の金融機関より先行していると加納氏はみる。ブロックチェーン分析のチェイナリシス(Chainalysis)からは、2025年の不正取引額の84%をステーブルコインが占める一方、全取引に占める不正取引は1%未満との説明を受けた。
神田氏は、米側が日本のステーブルコイン法制に注目しており、議連が春にオンチェーン金融を巡って議論してきた内容が米国でも通用すると感じたと振り返った。米国は民間の取り組みが進み、当局はそれを妨げない姿勢だったとして、日本はまだ見習うべき点があるとした。
木原氏は、新興国でのステーブルコインの広がりを巡るブラジルの事例に触れ、ステーブルコインを通じて米ドルが流通すれば国内で信用創造が起きにくくなると指摘した。日本でも貿易決済などがUSDCやトークン化預金で行われれば資金はそちらに流れるとして、ブロックチェーンを含めた取り組みを率先して進める考えを示した。
予測市場について加納氏は、CFTCが賭博ではなくイベント契約を扱うデリバティブ市場と解釈し、自らの管轄に置いていると報告した。日本では同様の解釈をとってもできることは少なく、米国型の予測市場には賭博罪の見直しが必要になるとの弁護士の見解も紹介した。
神田氏は、天候デリバティブのような商品は分かりやすいとしたが、スポーツはヘッジ目的ではない参加者も多いのではないかとの印象を述べた。選挙を対象とする取引は、そもそも認めてよいかという議論があり、公正さへの影響も懸念されるとして、ハードルが高いのではないかとした。一方で、選挙結果を正確に予測できるとの説明や研究もあり、興味深いと感じたという。
同氏は、日本にそのまま持ち込むには、必要性や社会的便益の議論が欠かせないとした。その一方で、日本のスポーツや選挙の結果が海外の予測市場で取引の対象となり、日本人が参加するケースも考えられると指摘。ポイントを使った国内の予測サービスの広がりとあわせ、今後の課題に挙げた。
JBAは視察を踏まえた提言も示した。柱の一つがDeFi(分散型金融)の法的な位置づけの明確化で、分散型取引所(DEX)を含め何ができて何ができないかを明確にすれば、イノベーションの促進につながるとした。AIが投資運用業のような業務を担う場合に、どこまで関与すれば業規制の対象になるかの整理も求めた。
加納氏が特に重視したのが、仮想通貨などのデジタル資産を法律上の財産権の対象として明確にすることだ。取引所に預けたビットコイン(BTC)について、顧客は取引所に対する返還請求権(債権)を持つが、秘密鍵で自ら管理する資産は法的な性質がはっきりせず、盗まれても損害賠償を求めるしかない。加納氏は英国の立法例を挙げ、「電子的財産権」として権利を定義するよう求めた。
第三者に権利を主張する根拠となる「正本」をブロックチェーン上の記録で定めるルールづくりも盛り込んだ。加納氏は、政府が特定のブロックチェーンを法律で指定する必要はなく、改ざん耐性などの要件を法令で定めるか、認定制度を設ける方法があるとした。このほか、納税へのステーブルコインの活用や、バーゼル規制で仮想通貨に課されるリスクウェイト1,250%の見直し、日本でのCBDC推進も求めた。
金融庁の担当者は、20日に2026事務年度の初会合を開いた「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」について、DeFiやウォレット、資産のトークン化の論点を検討していくと説明した。金融庁は、関係省庁とともに立ち上げた「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」で、2027年初めに中間整理と官民のロードマップを取りまとめる方針だ。
党の次世代AI・オンチェーン金融構想PTで座長を務める木原氏は、提言を一気に実現しようとすれば、民法を所管する法務省との調整が必要になり時間がかかると指摘した。まずは証券保管振替機構(ほふり)の制度や投資信託法(投信法)上の券面の扱いの見直しから進める考えを示し、NFTや暗号資産について「そもそもそれが物なのか何なのかというのは、いずれ決めなければいけない」と語った。

