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AIは何を買っている?約2億件のx402決済──0.007ドルの検索から見えた実態

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2026年9月30日、Cloudflareが「Monetization Gateway」のクローズドベータを公開しました。WebサイトやAPI、MCPツール、データセットに料金を設定し、AIエージェントなどのソフトウェアがアクセスしたとき、その場でAIが支払いまで行える仕組みです。Cloudflareは同日、AI Gatewayでも対象モデルへの推論をステーブルコインウォレットから支払える「Machine Payments」をベータ公開しています。

それに先立つ2026年9月9日、TRM Labsは、Base、Solana、Polygonの3チェーンにおける既知のx402ファシリテーター経由の決済が、2025年5月以降で約1億9,890万件、総額約5,270万ドルに達したと分析しました。

人間の決済なら、ネット通販や店舗での買い物での決済を想像するかと思います。ところがx402で使用されているAIによる決済の実例を追うと、売られているものは少し想像と違いました。Web検索を1回使う、株式市場のシグナルを1件取得する、PDFを1回生成する、AIモデルを1回呼び出す、などのこれまでAPIキーや課金設定の内側にまとめられていた「1回の処理」が、そのまま決済の単位になっていたのです。

検索1回が0.007ドル

AI向け検索サービスExaがわかりやすい例として挙げられます。Coinbaseが2026年4月7日に公開した事例では、AIがExaへ検索を要求すると「402 Payment Required」が返り、その中に0.007ドルという価格、利用するネットワーク、支払先が示されます。AIはUSDCで支払い、同じリクエストを再送して検索結果を受け取ります。

Cloudflareが2026年9月30日に紹介した事例にも、同じような使い方がありました。Ceramic.aiはAI向けのWeb検索、Stocktwitsは銘柄ごとのセンチメントや投稿量などの市場シグナル、API2PDFはHTMLやOffice文書からPDFを生成する処理をリクエスト単位で提供しています。API2PDFについてCloudflareは、処理内容によっては専門APIへ1回あたり1セント未満を払う方法を紹介しています。

人間が「この検索だけを0.007ドルで買おう」と考えて決済するような場面はないでしょう。しかしAIなら、調査の途中で検索が必要になった瞬間だけ支払い、次は別のデータサービス、さらに別の推論モデルへ移ることができます。一つの依頼を完了するまでに複数のサービスを使えば、人間から見た一つの仕事の裏側で何度も決済が発生します。CoinbaseもExaのx402対応について、検索やページ取得を必要になった時点で購入する利用例を示しています。

x402は支払いをWeb通信の中に入れる


x402は、HTTPに以前からある「402 Payment Required」を実際の支払いに使える形にした決済規格です。ソフトウェアが有料の情報を要求すると、サーバー側が価格と支払い条件を返します。ソフトウェアが支払いを承認して再度アクセスすると、決済確認後にデータや処理結果が返ってきます。

カード番号入力や請求書発行を別の画面で行うのではなく、支払いがAPIへのリクエストの中に入ります。CloudflareのMonetization Gatewayでは現在、Base上のUSDCで決済されます。TRM Labsが2025年5月以降について集計したx402決済でも、約5,268万ドルのうち約5,247万ドル、99.6%がUSDCであるとの結果が出ました。

「約2億件」はAIの買い物回数ではない

約2億件という数字だけを見ると、AIがすでに大量のサービスを自律的に購入しているように見えます。TRM Labsが数えているのは、既知のx402ファシリテーターを経由したオンチェーン決済で、x402自体はAI専用ではありません。通常のスクリプト、定期処理、負荷テスト、自分自身への支払いでも同じ記録が残ります。

TRM Labsは約5,270万ドルの決済から、自己送金、一部の支払者に集中した大量取引、買い手が極端に少ない売り手などを除外しました。その結果、商取引らしいものとして残った金額は約2,562万ドルだったとのことでした。さらに支払額の変化、複数サービスの利用、継続性などからAIエージェントらしい取引を推定すると、金額ベースで0.6〜7.5%であると推測されています。

TRM Labs自身、同じサービスを繰り返し利用する単機能のAIは普通のスクリプトに見えるため、実際のAI利用を少なく見積もっている可能性があると説明しています。オンチェーンで確認できるのは支払いであって、その支払いをAIが判断したのか、決められた自動処理なのかまでは記録されていません。

1つのウォレットが1,320万回払っていた

Bitqueryが2026年8月のx402型決済を調べた結果でも、件数と金額には大きな偏りがありました。Base、Polygon、Ethereum、Arbitrum、Optimismの5チェーンでは約1,830万件、総額約25.9億ドルの決済が確認されましたが、金額の88%はCircleのUSDCをチェーン間で移動させるCCTP関連コントラクトでした。これを除くと総額は約3.17億ドルです。

件数では、Baseの一つのウォレットが一つの相手へ52日間で約1,320万回支払っていた事例も確認されました。

Polygonでは1セントの同額決済が約570万件あり、この二つでBitqueryがエージェント系少額決済として抽出した取引の83%を占めました。これらを除外すると、残るのは月約220万件です。

売り手の数だけでも市場の広がりは分かりません。2026年8月にBaseで支払いを受けた5万4,383アドレスの月間収入中央値は2.50ドルでした。

AI決済で変わるのは、サービスの売り方かもしれない

今回x402の実例を追っていて面白かったのは、AIが自分で支払えること以上に、これまで月額契約やAPIキーの中にまとめられていた機能が「1回ずつ売れるもの」になっていることでした。

Web検索なら1回0.007 USDC。必要なら別のデータを取り、PDFを作り、別のAIモデルを呼ぶ。人間は一つのサービスと契約して使い続けることが多いですが、AIは仕事の途中で必要になった機能だけを、その都度選んで使えます。

この形が広がれば、APIを提供する側の売り方も変わります。月額契約で継続利用してもらうだけでなく、「検索1回」「推論1回」の単位でAIに選ばれること自体が売上になります。今のx402の実例から見えているのは、AIがサービスを丸ごと契約するより、仕事に必要な機能をその場で調達する使い方です。

次に見たいのは決済件数ではなく、一つのAIが一つの仕事の中で何種類の外部サービスを使い分けるようになるかだと思います。検索、データ取得、推論、変換を別々のサービスから都度購入するケースが増えるなら、x402は「AIが自分で払える仕組み」から、「AIが必要な機能をその場で買える仕組み」として見る方が面白くなりそうです。

※本記事は、公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連ニュースを整理した一般的な情報提供であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。

参考文献

  • Cloudflare, “Monetization Gateway beta: charge AI agents for consumption with HTTP 402”, 2026年9月30日
    https://blog.cloudflare.com/monetization-gateway-beta/

  • Cloudflare Docs, “Machine Payments (x402)”, 2026年9月30日更新
    https://developers.cloudflare.com/ai-gateway/features/machine-payments/

  • TRM Labs, “Who’s Actually Paying? Measuring AI Agent Payments Onchain”, 2026年9月9日
    https://www.trmlabs.com/trm-tech-blog/whos-actually-paying-measuring-ai-agent-payments-onchain

  • Bitquery Research, “The x402 protocol moved $2.6 billion last month. Almost none of it was AI agents.”
    https://www.bitquery.io/investigations/x402-ai-agent-payments-audit

  • Coinbase Developer Platform, “Exa Search, Now Discoverable by Agents Over HTTP with x402”, 2026年4月7日
    https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/launches/exa

  • x402 Foundation, “x402” / Bazaar documentation
    https://github.com/x402-foundation/x402

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