英国政府は、同国初となるデジタルネイティブ国債「Digital Gilt Instrument(DIGIT)」のパイロット発行に向け、6つの金融機関を共同主幹事に選んだ。財務省経済担当相のルーシー・リグビー氏が6日、ロンドンで開催された「UKデジタル資産週間」の基調講演で発表した。発行は2027年第1四半期を予定している。
DIGITは、分散型台帳技術(DLT)によって金融の仕組みが変化する中、ホールセール金融市場のデジタル化を進めて英国の競争力を維持・強化する政府戦略の一環だ。
政府の通常の債務管理プログラムとは別枠の短期債で、既存の国債を後からトークン化するのではなく、発行時からDLT上で発行・管理する。発行はHSBCの「Orion」プラットフォーム上で行い、英国のデジタル証券サンドボックス(DSS)内で運用する。発行から決済を含むライフサイクル全体でDLTの有効性を検証する。
共同主幹事は競争的な調達プロセスを経て決定され、バークレイズ、HSBC、ロイズ、モルガン・スタンレー、ナットウエスト、RBCキャピタルマーケッツの6社が、引受、投資家との対話支援、発行時の販売を担当する。
リグビー氏は講演で、現在の課題は市場が新技術を大規模に導入できる環境を整えることだと述べ、英国は技術実験の段階を終え、実際の金融市場での運用に移行しつつあると語った。
その準備はすでに進んでいる。2月にはHSBCがDLTの技術提供事業者に選ばれ、7月にはHSBCとロンドン証券取引所グループ(LSEG)が、デジタル証券預託機関間の相互接続に向けた覚書(MOU)を結んだ。政府は、DIGITをLSEGのメイン市場に上場する最初のデジタル資産にしたい考えだ。
DIGITのパイロット発行は、英国が「実験」から「実運用」へと移行する象徴的な一歩となる。
英国政府は、国債などのデジタル証券に加え、ステーブルコインを含むデジタル資産の規制と市場環境の整備も進めている。
リグビー氏は、政府の役割は、どの形態のデジタルマネーが勝者になるかを決めることではなく、責任あるイノベーションが競争できる環境を整えることだと述べた。今年2月に成立した新規制により、2027年10月25日から、幅広い仮想通貨関連活動がFCA(金融行動監視機構)の規制対象となる。
FCAは6月、ステーブルコインの発行や規制対象の仮想通貨関連活動、健全性要件を含む最終規則とガイダンスを公表した。9月には、どの活動にFCAの認可が必要となるかを示す規制対象範囲(perimeter)ガイダンスを発表し、移行措置の適用を希望する企業向けの申請受付も9月30日に始まった。
リグビー氏はステーブルコインについて、「経済成長を支え、金融市場をより効率化させる大きな可能性がある」と述べた。取引や決済が速く低コストになり、プログラム可能な決済など新たなイノベーションにつながるとの見方だ。
英国政府は9月、業界との協議を経て、仮想通貨規制の改正規則を議会に提出した。ステーブルコインの決済サービスを手がける企業に規制上の明確性を与え、主要なユースケースの普及を妨げる障壁を取り除く狙いがある。
政府は決済規制の改革についても協議を進めており、英国発行のステーブルコインを決済サービス規制の対象に含めることなどを検討している。企業が現行の仮想通貨規制と今後の決済規制改革の双方で二重に認可を取得する必要がないよう制度を整備する。リグビー氏は、こうした取り組みを通じて信頼性と競争力のあるステーブルコイン市場の構築を目指すと語った。
