国内大手取引所bitbankのアナリスト長谷川氏が、今週の暗号資産(仮想通貨)ビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。
今週の週次レポート:
今週のビットコイン(BTC)対円相場は底堅くも方向感に欠ける展開となり、18日正午時点で、1210万円周辺で推移している。
先週末の米消費者物価指数(CPI)を無難に通過し、週明けのBTCは買い戻し優勢で取引が始まった。米長期金利が上昇するなか、財政懸念も相場の下支えとなり、1230万円近辺まで水準を戻したが、ドル建てで節目となる8万ドルを手前に利益確定売りが優勢となり、15日は前日の上げ幅を縮小。米国時間には、米上院がクラリティ法案のクローチャー動議を否決し、一時1165万円まで下落した。
ただ、クラリティ法案の年内不成立はすでに織り込まれていたため、その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、概ね1170万円台で揉み合いに転じた。
注目されたFOMCでは、市場の予想通り、25ベーシスポイント(bp)の利上げが決定された。このほか、ドットプロットでは年末までにあと一回の追加利上げ予想が示されたものの、市場にとっては大きなサプライズとはならず、BTCはイベント通過直後こそ乱高下したものの、その後は1200万円手前まで持ち直した。足元では、金利の上昇も一服し、金(ゴールド)や米株先物の反発に連れて1200万円を回復している。
来週のBTC相場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過したことで大きなイベントを欠くなか、米金利の動向を睨みながら高値レンジ内で方向感を模索する展開となりそうだ。
今週のFOMCでは、市場の予想通り25ベーシスポイント(bp)の利上げが決定されたほか、ドットプロットでは年内あと1回の追加利上げが示され、来年の利下げ予想も消滅した。内容自体は想定以上にタカ派的だったと言えるが、FF金利先物市場が織り込む年末までの追加利上げ確率に大きな変化はみられなかった。市場は今回示された政策金利見通しを額面通り受け取るのではなく、今後の経済指標次第で変化し得るものとして捉えているとみられる。このため、FOMC後には米国債利回りが上昇したものの、BTCを含むリスク資産への下押し圧力は限定的となった。
一方、米国債のイールドカーブはFOMC前と比べてフラット化しており、金融環境がBTCにとって追い風に転じたわけではない。今後、年内の追加利上げ観測が強まり、短期ゾーンを中心に利回りが上昇すれば、金融環境の引き締まりを通じてBTC相場の重石となろう。
尤も、長期金利については別の側面にも注目したい。米10年債利回りは足元で節目の5%近辺まで上昇しており、同水準は2023年にも利回り上昇が一服したチャート上の重要な節目となっている。仮に5%を明確に上抜ければ、米政府の利払い負担や財政の持続性に対する懸念が改めて意識される可能性がある。短期金利の上昇とイールドカーブのフラット化は通常BTCには逆風となるが、幅広い年限で利回りが上昇し、長期金利が節目を突破する場合には、ソブリンリスクの回避手段として無国籍資産であるBTCが選好される余地もあろう。
こうした金利環境を見通す上では経済指標が重要となる。ウォーシュFRB議長は市場との対話を必要最小限にとどめており、今回のFOMC後の記者会見でも今後の政策運営について明確なフォワードガイダンスは示さなかった。このため、市場は今後の経済指標を手掛かりに追加利上げの必要性を判断することとなろう。
ただ、来週は25日の米耐久財受注を除けば金融政策の見通しを大きく左右する指標に乏しく、次の重要なインフレ指標となる個人消費支出(PCE)デフレーターは30日まで発表されない。FOMCで示されたタカ派的な政策金利見通しを市場が再評価するには、暫く材料不足の状態が続きそうだ。
その反面、短期金利を巡っては中東情勢と原油価格が引き続きリスク要因となる。サウジアラビアの原油供給再開は原油価格の上昇圧力を和らげる材料となる一方、中東情勢そのものは依然として不透明で、突発的なヘッドラインによって供給懸念が再燃する可能性は排除できない。原油価格が再び上昇すれば、米国のインフレ再加速への警戒から年内の追加利上げ観測が強まり、短期金利の上昇を通じてBTCへの下押し圧力が強まる可能性には留意したい。
価格面では、ドル建てBTC相場が今週のFOMCを通過しても高値レンジ下限となる7万5500ドルを維持し、足元では7万7000ドル台まで値を戻している。7万7000ドル台は8月終盤以降の高値レンジで揉み合いが続いた水準であり、目先は7万8000ドルを明確に回復できるかが焦点となろう。一方、これまで上抜けに失敗している8万2000ドルを突破すれば需給環境が大きく変化する可能性があるものの、相場の方向感を決定付ける材料に乏しい現状では、同水準まで一気に上値を伸ばす展開は想定しにくい。
下値についても、今週は7万5500ドルの維持に成功したことに加え、オプション市場では7万5000ドルにポジティブガンマが蓄積しており、同水準はサポートとして意識されやすい。従って、想定外の材料がない限り、目先は下値も限定されやすいとみている。
こうした状況を踏まえると、来週のBTC相場は上下ともに決め手を欠き、高値レンジ内で方向感を模索する展開となりそうだ。目先は7万8000ドルの回復を試す余地がある一方、8万〜8万2000ドルまで上値を伸ばすには新たな材料が必要となろう。反対に、7万5500ドルから7万5000ドル近辺では相応の下値支持が期待される。ただ、中東情勢の急変による原油高や、米10年債利回りが5%を明確に上抜けるなど、現在の均衡を崩す材料が出た場合には、相場がレンジから離れる可能性に注意しておきたい。


