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次の暗号資産ユーザーは「人間」じゃないかも──Coinbaseが本気で進めるAiFiとは

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最近、Coinbaseの発表を追っていて、「暗号資産の普及って、そもそも人間に使ってもらう必要があるのか」と思うことが増えました。

これまでは、取引所の口座を作る人を増やす、ウォレットを使う人を増やす、暗号資産で支払う人を増やす。実用化の話をするときも、主語はほとんど人間でした。ところがCoinbaseが最近かなり力を入れている「Agentic Finance(AiFi)」では、その前提が変わります。

8月18日、AWSはAmazon Bedrock AgentCore Paymentsの一般提供を開始しました。AIエージェントが有料APIやMCP、コンテンツを自分で探し、アクセスし、料金まで支払える仕組みで、Coinbaseのウォレットやx402が決済部分に組み込まれています。

Coinbaseが「AIに財布を持たせる」

Coinbaseが使うAgentic Financeという言葉は、AIが金融について回答するだけでなく、一定の権限の中で支払いや取引まで実行する方向を指しています。Coinbaseは2026年に入って、このための部品をかなり速いペースで揃えています。

2月にはAIエージェント向けの「Agentic Wallets」を公開しました。AIがステーブルコインを保有して送金や支払いを行い、Base上ではトークンの取引まで実行できるウォレットです。6月には「Coinbase for Agents」も公開され、こちらはユーザー自身のCoinbase口座とAIを接続し、設定した範囲内で取引や支払いを実行できるようにしています。

そして8月にはAWSのAgentCore Paymentsが一般提供になりました。AIが動く環境はAWS、財布はCoinbase、支払いにはx402を使い、x402 Bazaarから支払先を探すこともできます。「AIがお金を使う」までの経路が、かなり具体的になってきました。

x402はAIの「都度払い」をWebに埋め込む

この仕組みの中で、暗号資産らしさが最も分かりやすい事例の一つがx402です。

x402はCoinbaseが2025年に公開したオープンな決済プロトコルで、HTTPの「402 Payment Required」を使ってWeb通信の中に支払いを組み込みます。AIが有料APIへアクセスすると、サーバーから価格や支払先などの条件が返り、AIが支払い情報を付けて再度アクセスするとデータを受け取れる仕組みです。

たとえばCoinGeckoは2026年2月、x402を使った一部APIを1リクエスト0.01 USDCで提供すると発表しました。AIが暗号資産価格を知りたいとき、人間があらかじめ会員登録してAPIキーを発行し、月額プランを契約しておかなくても、その1回だけ料金を払ってデータを取得できます。

これを、APIの前に小さな自動販売機を置くような仕組みだと考えると分かりやすいかもしれません。必要なものを見つけたAIが、その場で料金を払い、そのまま仕事を続ける。人間向けの「ログインして、プランを選んで、カードを登録して」という流れを毎回通す必要がありません。

AIだから暗号資産が必要、ではない

AIにお金を使わせるだけなら、暗号資産でなければ実現できないわけではありません。実際、AWSのAgentCore PaymentsもCoinbaseだけではなくStripeのPrivyウォレットに対応しています。人や企業の既存の決済手段を起点に、AIへ一定の決済権限を渡す設計もできます。

それでもステーブルコインとの組み合わせが面白いのは、AIが扱う取引の単位です。検索を1回だけ使う、数秒分の計算資源を買う、特定のデータだけ取得するといった少額の取引を、ソフトウェア同士で何度も繰り返す用途では、アカウント作成や月額契約を前提としないプログラム可能な決済が使いやすくなります。

AWS自身もAgentCore Paymentsの説明で、サービス提供側が月額課金から1回ごとのpay-per-useへ移り、数セント程度のコストが発生するケースを挙げています。AiFiとステーブルコインの接点は、「AIだから暗号資産が好き」という話ではなく、機械が必要なものを必要な瞬間だけ買う決済構造にあります。

x402はすでに1億6500万件

まだ実験的な市場に見えますが、Coinbaseが公表している数字はすでにかなり大きくなっています。

2026年4月に公開されたAgentic.Marketの発表では、x402は累計1億6,500万件超の取引、約5,000万ドル超の取引量、48万超のエージェント利用に達したとされています。さらにCoinbaseは2026年第2四半期決算で、オンチェーンのAgentic Commerceの99%以上がUSDC、Agentic Stablecoin取引量の90%以上がBase、オンチェーンAgentic取引の97%以上がx402を利用したと説明しています。

もちろん、これはx402やBaseを推進しているCoinbase自身による集計です。AIによる金融取引全体の99%をUSDCが占めるという意味ではありません。それでもCoinbaseがUSDC、Base、ウォレット、x402を別々のサービスとしてではなく、AI向けの金融インフラとしてまとめて押し出していることは数字からも伝わります。

AIに財布を渡すなら、上限も必要になる

AIが人間の確認なしに支払える仕組みでは、誤ったサービスの購入や悪意のある指示によって、そのまま金銭が動く経路も生まれます。

そのためCoinbaseのAgentic Walletsでは、1回の取引額やセッション単位の上限を設定でき、秘密鍵をAIのプロンプトやLLMから隔離する設計を採っています。AWS側にもセッションごとの予算上限や有効期限があり、上限に達すると追加の支払いは拒否されます。

AIに自由な財布をそのまま渡すというより、「この金額、この時間、この範囲までは自分で判断してよい」という財布を渡すイメージに近いでしょう。AiFiが企業利用まで広がれば、モデルがどれだけ賢いかと同じくらい、どこまで権限を渡すかが製品設計に入ってきます。

暗号資産の普及を人間だけで数えられなくなる

AiFiを追っていて一番面白いと思うのは、ここからです。
暗号資産の普及はこれまで、口座数、保有者数、ウォレット数、決済利用者数などで語られてきました。ところが1人の人間や1社の裏側で10体、100体のAIエージェントが動き、それぞれが検索やデータ取得のたびに数セントを払うようになれば、人間の利用者数とオンチェーンの取引量は簡単に切り離されます。

そしてその取引をする人は、毎回「USDCを使おう」「Baseで送ろう」と考えるわけではありません。AIが必要なAPIを探し、価格を読み、決済して仕事を続けるのであれば、人間から見えるのは最終的な結果だけです。

これまで、暗号資産の実用化というと「どうすれば人にウォレットを触ってもらえるか」という話だと、どこかで考えていました。でもAiFiを見ていると、むしろ逆の方向も出てきます。

人間がウォレットを触らなくなっても、その裏側ではオンチェーン取引が増えています。AiFiで見ているのは、AI関連トークンの値段ではありません。人間が暗号資産を意識していない時間に、どれだけオンチェーンの経済活動が積み上がるかです。

Coinbaseが描く方向へ進めば、次の暗号資産ユーザーを数えるとき、その中には人間以外も混ざることになります。

※本記事は、公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連ニュースを整理した一般的な情報提供であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。

参考文献

  • Coinbase, “Agentic Wallets”
    https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/launches/agentic-wallets

  • Coinbase, “Agentic.Market”
    https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/launches/agentic-market

  • Coinbase, “x402”
    https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/launches/x402

  • Coinbase, “CoinGecko x402”
    https://www.coinbase.com/developer-platform/discover/launches/coingecko-x402

  • Coinbase, “Coinbase and AWS let publishers accept agents as customers via x402”
    https://www.coinbase.com/blog/coinbase-and-aws-let-publishers-accept-agents-as-customers-via-x402

  • Coinbase Investor Relations, “Coinbase Q2 Earnings: Everything Exchange Drives 3rd Consecutive Quarter of Record Crypto Trading Volume, Market Share, Revenue Diversification and Resilience”
    https://investor.coinbase.com/news/news-details/2026/Coinbase-Q2-Earnings-Everything-Exchange-Drives-3rd-Consecutive-Quarter-of-Record-Crypto-Trading-Volume-Market-Share-Revenue-Diversification-and-Resilience/default.aspx

  • AWS, “Amazon Bedrock AgentCore Payments is now generally available”
    https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2026/08/bedrock-agentcore-payments-ga/

  • AWS Machine Learning Blog, “Amazon Bedrock AgentCore Payments is now generally available, enabling agents to transact safely and autonomously at scale”
    https://aws.amazon.com/blogs/machine-learning/amazon-bedrock-agentcore-payments-is-now-generally-available-enabling-agents-to-transact-safely-and-autonomously-at-scale/

  • Coinbase Developer Documentation, “x402 Documentation”
    https://docs.cdp.coinbase.com/x402/welcome


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