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ステーブルコインは35兆ドル動いた。支払いは3,900億ドル──貿易にはどこまで入る?

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2025年、ステーブルコインは年間約35兆ドル動きました。
(参考: McKinsey & Company, “Stablecoins in payments: What the raw transaction numbers miss”, February 18, 2026 )

WTOが集計した同年の世界のモノ・サービス貿易額は34.89兆ドルです。年間取引量だけなら、ステーブルコインは世界貿易全体とほぼ同じ金額を処理しています。

ただし、35兆ドルの大半は商品やサービスの代金ではありません。暗号資産の売買や取引所間の資金移動、DeFiなどを含んだ数字で、2025年の「支払い関連」として推計した金額は約3,900億ドルでした。

企業間のB2B決済まで絞ると、McKinseyとArtemis Analyticsの推計では2025年12月時点の年換算で約2,260億ドルです。世界の輸出入代金のうち何ドルがステーブルコインで支払われたのかを直接集計した世界統計は確認できませんが、2,260億ドルを世界貿易34.89兆ドルで割ると約0.65%になります。しかも2,260億ドルには国内の企業間決済なども含まれます。

McKinseyが比較に使った世界のB2B決済額は約1,600兆ドルです。この市場に対するステーブルコインの比率は約0.01%でした。

B2Bは1年で733%増えた

0.01%しかない一方で、B2Bのステーブルコイン決済は前年から733%増えました。2025年12月時点の年換算では、ステーブルコインによる支払いの約6割をB2Bが占めています。

アジアから送られた決済は約2,450億ドルで全体の60%にあたり、McKinseyは、その大部分がシンガポール、香港、日本からの取引だったとしています。北米は約950億ドル、欧州は約500億ドルでした。

クロスボーダー決済を手掛けるConduitでは、2024年に取扱高が16倍に増え、年間換算100億ドルを超えました。ネットワークは米国、メキシコ、ブラジル、ナイジェリア、ケニアなど9カ国、14通貨、20以上の銀行に広がっています。

Conduitの仕組みでは、企業が最初から最後までステーブルコインを持つ必要はありません。

ブラジルの企業が米国の取引先へ1,000ドルを支払う例では、企業はブラジルレアルを入金します。途中でステーブルコインへ交換し、ブロックチェーン上で移転したあと、米国側でドルに戻して取引先の銀行口座へ入金します。同社はこの形を「stablecoin sandwich」と呼んでいます。送る側はレアル、受け取る側はドルです。ステーブルコインが使われるのは、その間だけです。

Visaも決済の裏側に組み込み始めた

Visaも2025年、Visa Directのクロスボーダー送金でステーブルコインによる事前資金準備の試験を始めました。対象企業はUSDCやPYUSDでVisa Directの口座へ資金を用意でき、支払い先では法定通貨で受け取ることもできます。

Circle Payments Networkでは、送金元側の金融機関が顧客確認などを行ったうえで現地通貨をUSDCなどへ交換し、受取側の金融機関へ送ります。受取側では再び現地通貨へ換え、最終的な受取人へ支払います。

企業が取引先に「暗号資産で受け取ってください」と頼まなくても、国際決済の途中にステーブルコインは入れられます。表面上はこれまでと同じドルや現地通貨の支払いでも、その裏側を走る資金だけがブロックチェーンへ移る形です。

貿易で想定すると、輸入企業は自国通貨で代金を出し、輸出企業は自国で使える通貨を受け取る。その間の為替や国境間の資金移動を、ステーブルコインを扱う決済事業者がつなぎます。企業がウォレットを直接操作する形だけが、貿易での暗号資産利用ではありません。

貿易では着金後にも処理が残る貿易では着金後にも処理が残る

海外の取引先からステーブルコインを受け取る日本企業なら、ウォレットへの着金後に入庫を確認し、売却して円へ換金する工程があります。受け取ってから売却するまでに価格が動くこともあり、米ドルとの価格連動を目指すステーブルコインでも、円で管理する企業にはドル円の変動があります。

海外へ支払う側では逆の処理が発生します。自社が持つ円などの法定通貨からステーブルコインへ入り、相手が現地通貨で受け取るなら、その国で再び法定通貨へ戻します。ConduitやCircleが銀行や各国の決済網までつないでいるのも、この入口と出口を処理するためです。

ブロックチェーン上の移転が終わった時刻と、企業側で支払いの処理が終わる時刻は同じとは限りません。入庫確認、換金、社内確認まで含めた所要時間とコストは、オンチェーンの送金速度だけでは出せない部分です。

BitTradeとSTANDAGEも貿易実務を検証

ビットトレードとSTANDAGEが2026年8月に開始した共同実証では、法人が貿易領域で暗号資産を利用する場合の実務を確認しています。

ビットトレード、STANDAGEと貿易領域における暗号資産活用の実務上の課題を検証する共同実証を開始 ビットトレード株式会社のプレスリリース(2026年8月6日 15時00分)ビットトレード、STANDAGEと貿易領域におけ prtimes.jp

ビットトレード側では、暗号資産の入庫からスポット取引による法定通貨への換金、売却後の円建て残高への反映までを検証します。入庫から換金までの所要時間、入庫確認時と売却約定時の価格差、換金時の手間やコスト、入出庫・入出金に関する確認も対象です。

STANDAGEは貿易実務の知見をもとに、法人が利用する場合の運用上の論点を整理します。本実証は両社が共同で送金や決済代行、代金回収を提供するものではなく、それぞれの役割の範囲で実務上の課題を確認するものです。

貿易で増えるのは「暗号資産払い」だけではない

年間約35兆ドルというステーブルコインの取引量に対して、2025年の支払い関連フローは約3,900億ドル。B2Bは2025年12月時点の年換算で約2,260億ドルでした。

世界貿易34.89兆ドルのうち、ステーブルコインで支払われた輸出入代金だけを抜き出した数字はまだありません。一方、B2B決済は前年から733%増え、ConduitやVisaのように法定通貨の間へステーブルコインを挟む仕組みがすでに動いています。

この使われ方なら、企業が暗号資産を直接保有する件数だけを追っても広がり方を捉えきれません。円やドルで支払い、円やドルで受け取る。その途中だけステーブルコインを通る決済では、企業から見えるのは従来と同じ法定通貨です。

世界貿易の34.89兆ドルに対して、ステーブルコインのB2B決済はまだ小さい。それでも1年で733%増えました。次に差が縮まるとすれば、35兆ドルのオンチェーン取引がさらに膨らんだからではなく、実際の商品やサービスの代金を運ぶ経路にステーブルコインが入ったときです。

※本記事は、公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連の動向を整理した一般的な情報提供であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。

参考文献

WTO「World Trade Statistics 2025」
Bank for International Settlements(BIS)「Stablecoins: framing the debate」
McKinsey & Company「Stablecoins in payments: What the raw transaction numbers miss」
Conduit「Conduit Raises $36M in Series A」
Conduit「Stablecoin Sandwich: Definition and Key Benefits in Cross-Border Payments」
Visa「Visa Direct Taps Stablecoins to Unlock Faster Funding」
Circle「Circle Payments Network(CPN): A Concise Field Guide for Prospective Network Participants」

※各情報は記事執筆時点の公開情報をもとに確認しています。

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