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Suiで何が起きているのか──相次ぐ停止とCetus事件から考える、高速L1の課題

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Suiをめぐって、ここ最近タイムラインで議論される状況が続いています。
メインネットの一時停止、Cetus事件後の資金凍結対応、そして「Suiは中央集権的なのではないか」という議論。Xなどでも、強い言葉で語られる場面が増えています。

直近のメインネット停止は、Sui本体のアップグレードに関連したソフトウェア上の問題です。一方、Cetus事件は、2025年にSui上のDeFiプロトコルで発生したエクスプロイトと、その後の資金凍結・回復対応をめぐる問題です。

どちらもSuiエコシステムの信頼性に関わる話ではありますが、原因も論点も同じではありません。「Suiは終わった」という話でも「何も問題ない」という話でもなく、何が起きたのかを分けて見る必要がありそうです。

まず、Sui Mainnetで何が起きたのか

Sui Foundationの事後報告によると、2026年5月28日から29日にかけて、Sui Mainnetでは3回の停止が発生しました。1回目は日本時間5月28日23時頃から5月29日5時30分頃、2回目は5月29日21時頃から5月30日0時30分頃、3回目は5月30日5時30分頃から11時20分頃まで続いたと説明されています。

ブロックチェーンの停止というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、要するにネットワーク上で取引処理が正常に進まなくなる状態です。送金、DeFi、アプリ上の操作などが処理されず、ユーザーにとっては「チェーンが使えない」状態に近くなります。

Sui側は、今回の停止中にユーザー資金はリスクにさらされておらず、再開時に確定済みトランザクションの巻き戻しもなかったと説明しています。また、既知の問題は修正され、ネットワーク活動は再開したとしています。
ここで分けて考えたいのは、「資金が失われなかったこと」と「ネットワークが止まったこと」は別の問題だという点です。

資金被害がなかったとしても、短期間に3回止まったことは、利用者や開発者にとって大きな不安材料になります。特にSuiは、高速なL1として期待されてきたチェーンです。だからこそ、停止そのものが注目されやすいのだと思われます。

原因は、攻撃ではなくアップグレード由来の不具合

では、なぜ止まったのでしょうか。

Sui Foundationの説明では、今回の停止はv1.72リリースで導入された新機能「Address Balances」と、既存のガス課金ロジックの相互作用が原因だったとされています。

Suiではもともと資産を「Object」として扱う仕組みが中心でした。今回導入されたAddress Balancesは、ユーザーから見ると、アドレスごとの残高としてより分かりやすく扱えるようにする新しい仕組みです。

ただ、この新しい残高管理の仕組みと、既存のガス支払い処理が特定の条件で組み合わさったことで、想定外の不具合が発生したと説明されています。最初の2回の停止は、この混合ガス支払いの処理に関するバグが原因とされ、3回目の停止では、バリデータの再起動時にオンチェーンランダムネスの状態管理に関する別の潜在的なバグが表面化したとされています。

かなり噛み砕くと、Suiの残高をより扱いやすくするための新機能を入れたところ、既存の支払い処理との組み合わせで不具合が起きた。さらに、修正して再起動する過程で、別の隠れていた問題も見つかった、という流れです。

CoinDeskも、Sui Foundationの事後報告をもとに、v1.72の新機能がガス課金ロジックのエッジケースを露呈させ、3回の停止につながったと報じています。つまり、今回の停止は、外部からのハッキングでチェーンが止まったというより、アップグレードに伴うソフトウェア上の問題だった、というのが公式側の説明です。

ただし、攻撃ではなかったから軽い問題というわけでもありません。ブロックチェーンは、一度動き始めると多くのユーザー資産やアプリがその上に乗ります。新機能を追加すること自体は必要ですが、その変更でネットワーク全体が止まってしまうなら、やはり運用面の課題として受け止められる可能性があります。

なぜここまで騒がれるのか

Suiは、速さや処理性能を強みとして注目されてきました。ゲーム、DeFi、コンシューマー向けアプリなど、多くの取引が発生する領域で使いやすいチェーンとして期待されてきた面があります。だからこそ、停止が起きると「速いけど止まるのでは意味がないのでは」という見方が出てきます。

これは、Suiだけに限った話ではありません。どのL1でも、利用が増えるほど、単に速いだけではなく、安定して動き続けることが求められます。特にDeFiのように価格変動や清算が絡む領域では、数時間の停止でもユーザーにとっては大きな問題になり得ます。

一方で、今回の件をもってSuiの技術全体を否定するのも早いように思われます。ソフトウェアのバグはどのチェーンでも起こり得ます。重要なのは、原因をどこまで説明し、再発防止にどうつなげるかです。今回の停止は、Suiにとって「高速L1として次に何を改善するのか」が問われる出来事だったと言えるかもしれません。

Cetus事件とは、別の問題として見るべき

Suiをめぐる議論でもう一つ大きいのが、2025年5月に起きたCetus exploitです。

CetusはSui上の主要なDeFiプロトコルの一つで、The Defiantは、この事件で約2.23億ドル相当の被害が発生し、そのうち約1.62億ドル相当がSuiバリデータによって凍結されたと報じています。この事件は、今回のメインネット停止とは性質が違います。

今回の停止は、Sui本体のアップグレードに伴う不具合。 Cetus事件は、DeFiプロトコル側のexploitと、その後の資金凍結・回復対応をめぐる問題です。ただし、両方とも「Suiはどれくらい信頼できるのか」という議論につながっています。

Cetus事件では、流出資金の大部分を止められたことを、被害者保護として評価する見方があります。一方で、「バリデータが特定の資金を止められるなら、それはどこまで分散型なのか」という疑問も出ました。

Sui Foundationは当時、Cetusから凍結資金の回復についてコミュニティ主導の投票要請があり、Foundationとしてバリデータ投票を促進すると説明しています。

また、Galaxyの整理では、その後の投票を経て、約1.62億ドル相当の凍結資産がCetus、Sui Foundation、監査会社OtterSecのマルチシグウォレットへ移されたとされています。

この対応は、かなり評価が分かれやすいところです。被害者を守るという意味では、素早く資金を止められたことは安心材料に見えるかもしれません。一方で、検閲耐性を重視する立場からは、「それができるのは怖い」と見えるかもしれません。

どちらかが完全に正しいというより、ブロックチェーンが実利用に近づくほど、このような難しい判断が増えていくのだと思います。

Suiに問われているもの

今回の件で見えてきたのは、Suiが単に「速いチェーン」として見られる段階から、より厳しい評価を受ける段階に入っているということです。メインネットが止まれば、ユーザーは不安になります。 資金を凍結できれば、被害者保護にはつながるかもしれません。 しかし同時に、分散性や検閲耐性への疑問も出ます。

ブロックチェーンは、止まらないことが重要な価値の一つです。一方で、実際に大きな被害が出たときには、何らかの対応を求められることもあります。Suiの最近の出来事は、その両方を見せたように思えます。今回の停止では、速さだけでなく安定性が問われました。

Cetus事件では、ユーザー保護と分散性のバランスが問われました。Suiで起きている問題は、「チェーンが良いか悪いか」という単純な話ではなさそうです。むしろ、高速L1が本格的に使われていくうえで避けにくい課題が、かなり見えやすい形で出てきたと見る方が自然かもしれません。

まとめ

2026年5月末のメインネット停止は、Sui本体のアップグレードに伴うソフトウェア上の問題でした。Sui公式は、ユーザー資金はリスクにさらされず、確定済みトランザクションの巻き戻しもなかったと説明しています。ただ、短期間に3回停止したことは、信頼性の面で重く受け止められる可能性があります。

一方、Cetus事件はDeFiプロトコル側のエクスプロイトと、その後の資金凍結・回復対応をめぐる問題です。被害者保護として評価される面がある一方で、分散性や検閲耐性への疑問も残りました。

Suiは高速L1として注目されているチェーンの一つだと思われます。だからこそ、価格や話題性だけでなく、問題が起きたときにどう説明し、どう改善し、ユーザーと開発者の信頼を積み上げていくのかが重要になっていきそうです。

今回の件は、「Suiは終わった」という話ではないでしょう。ただし、「速いチェーン」であるだけでは足りないことを、かなり分かりやすく示した出来事だったのかもしれません。


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