アルゼンチンの連邦裁判所は23日、ミームコイン「LIBRA」をめぐる刑事事件で、ハビエル・ミレイ大統領と妹のカリーナ・ミレイ大統領府総務長官ら11人全員の訴追手続きを棄却した。マルセロ・マルティネス・デ・ジョルジ判事は、調査対象となった一連の事実は「いかなる法的な犯罪にも該当しない」と指摘し、検察側が求めていた棄却を認めた。
11人のうち、容疑者として正式な取り調べを受けた人物は一人もいなかった。
60ページに及ぶ決定書で、判事はミレイ大統領によるトークンの宣伝がローンチに「より大きな影響」を与えた可能性は認めた。ただし、SNSへの投稿と、その後のLIBRAの急騰・暴落だけでは、詐欺を立証できないとした。
LIBRAは2025年2月14日にローンチされた。同日、ミレイ大統領が自身の公式Xで、同トークンを「アルゼンチン経済の活性化や中小企業への資金供給につながるプロジェクト」として紹介すると、価格は急騰した。だがわずか数時間後に暴落し、ミレイ氏は投稿を削除。プロジェクトとは関係がなく、詳細も知らなかったと釈明した。
時価総額は一時45億ドルを超えたとされるが、価格はピークから約95%下落した。
オンチェーン分析では、運営チームに関連する8つのウォレットから約1億700万ドルが引き出されていた。こうした資金移動や急落を受け、被害を受けた投資家らは、価格をつり上げて売り抜ける「ラグプル(出口詐欺)」の疑いがあるとして、ミレイ氏らを告訴していた。ブロックチェーン分析企業ナンセン(Nansen)の試算では、1,000ドル超の損益が出たウォレットの約86%が損失を出し、損失総額は約2億5,100万ドルにのぼる。
ただし、今回の裁定は確定していない。2026年7月に私訴原告から除外された投資家らは、9月に連邦控訴裁でも除外が維持されたものの、破棄院に上訴している。復帰が認められれば、今回の決定に対しても上訴する可能性がある。
棄却の対象には、ミレイ大統領とカリーナ氏のほか、プロジェクトの主要開発者である米仮想通貨起業家のヘイデン・デイビス氏、政権との橋渡し役を務めた地元実業家のマウリシオ・ノヴェリ氏、共同プロモーターとして関わったKIP Protocol CEOのジュリアン・ペー氏らが含まれる。
捜査では、ノヴェリ氏の携帯電話から見つかった、計500万ドルの支払いに触れたメモも検討された。判事によると、デジタル鑑識でメモがApple Notes上にあったことは確認できたが、デイビス氏らに送信されたことまでは立証できなかった。
ミレイ氏とノヴェリ氏の通話記録や、カリーナ氏に関連するとされる削除済みのメッセージも調べられたものの、やり取りの具体的な内容は特定できなかった。
カリーナ氏とデイビス氏の接点についても、2024年7月16日にカリーナ氏がデイビス氏の大統領府入りを承認した記録だけでは、違法な合意があったとは言えないとした。
ミレイ大統領は23日、自身のXで「司法が物事をあるべき場所に戻した」と投稿し、一連の報道を政治的・メディア的な工作だと批判した。
一方、野党側からは反発も広がっている。LIBRA問題をめぐる議会調査委員会を率いた野党議員マクシミリアーノ・フェラーロ氏は、決定を強く批判。関係者の面会記録や資金取引、ミレイ氏の通話履歴について、十分な説明がなされていないと主張した。
議会の調査委員会は2025年11月の最終報告書で、ミレイ氏の言動がプロジェクトに「不可欠な協力」を提供したとの見解を示していた。しかし、今回の決定書にこの報告書への言及はなかった。