研究者ラモン・マルク・ガルシア・セウマ氏は29日、学術論文投稿サイト「arXiv」にビットコイン無期限先物における7件の清算連鎖を分析した論文を発表した。相場崩壊前に統計的な異常を示す予兆信号について、全ての事象に共通する変数は存在しないとの結論を示した。
同氏は2022年から2025年までの7件の主要な清算連鎖を対象に、1分単位の価格データと5分単位のレバレッジ・注文フローデータを使用した。対象は2022年5月の「テラショック」、同年11月のFTX破綻、2024年8月の円キャリー取引巻き戻し、2024年12月の急落、2025年2月の関税懸念、同年4月の「Liberation Day」関税発表、2025年10月の記録的急落の7件だ。変動の高まりや自己相関の強まりを検出する手法を、39通りの分析設定で検証したという。
ここでの『予兆信号』とは、清算連鎖が起こる前に価格の変動幅や、直前の値と次の値が似た動きをする度合いが強まる現象を指す。相場が転換点に近づくにつれ統計的な異常が観測されるとする理論に基づくものだ。
相場崩壊の予兆を統計的に検出する手法は、経済物理学の分野で「臨界的減速」と呼ばれる現象に基づく。変数が転換点に近づくにつれ変動やパターンの持続性が高まるとされる理論だが、金融市場での有効性は研究者の間で議論が続いてきたという背景がある。
2025年10月10日に発生した清算連鎖では、約190億ドル相当のレバレッジポジションが数時間のうちに強制決済された。同氏の分析では、この事象に限り価格ではなくレバレッジや注文フローの側に予兆信号が現れたという。
ただし同じ手法を2024年8月の急落に適用すると結果は逆転し、価格に予兆信号が現れる一方でレバレッジ関連の指標には現れなかった。同氏は、単一の事象から導いた予兆信号の傾向を他の事象に当てはめることはできないと指摘した。
7件全体を比較した結果、価格の予兆信号は7件のうち5件で確認された一方、トランプ関税発表を発端とする突発的な2件では確認されなかったという。
同氏は、市場が時間をかけて不安定化に向かう事象では価格に予兆が現れるが、瞬間的な衝撃で発生する事象では予兆が現れないとの見方を示した。
データが利用可能な6件全てに共通した傾向は、成行注文の売買比率の変動が清算連鎖前に低下する現象だった。同氏はこの現象を300件のランダムな市場期間と比較する検証を実施し、統計的に有意な差を確認したという。
ただし同氏は、この現象は6件のうち個別に見ると2件で有意差が確認できず、集団レベルの傾向であり個別事象での警告指標としては不十分だと説明した。