ゼロ知識証明(ZK)ネットワークを手がけるバウンドレス(Boundless)は14日、AI推論市場に参入すると発表した。同社がZK証明向けに構築してきた分散型GPUネットワークをAI推論用に転用し、2026年夏に正式ローンチする計画だ。
同社は約4000基のGPUで構成するネットワークを運用しており、これをAI推論向けに最適化した上で、マネージド型の推論インフラとして提供する。ハードウェアの最適化やワークロードの振り分け、バッチ処理、スケジューリング、監視、運用サポートまでを一括して担うとしている。
ZK(ゼロ知識証明)とは、ある情報の正しさをその中身自体を明かさずに証明できる暗号技術のこと。ブロックチェーンの取引検証などで使われ、計算負荷の高い証明処理を大量にこなすため、専用の分散GPU網が必要になる。
AI推論の本番運用が広がる中、企業にとってはコストがボトルネックになりつつある。ガートナーの調査によると、AI最適化IaaS支出のうち推論向けが占める割合は2026年に55%、2029年には65%超に達する見通しだという。
バウンドレスは、AI市場の多くが高性能なデータセンター向けGPUを前提に価格設定されている一方、実際には多くの推論ワークロードがコンシューマー向けGPUや、暗号資産(仮想通貨)のマイニング・証明用に調達されたハードウェアでも十分処理できると指摘する。同社は自社が保有する余剰GPU容量を推論向けに調整し、初期のベンチマークではハイパースケーラー比で最大50%のコスト削減を確認したとしている。同社はこの効果が非同期処理のワークロードで特に大きいとみている。
バウンドレスは自社トークン「ZKC」をAIネットワークにも組み込む方針を示した。従来のZK証明ネットワークと同様、AI事業者がネットワークに参加する際にはZKCのステークが求められ、ステーク額に応じて収益機会が変わる仕組みを想定しているという。
シヴ・シャンカール(Shiv Shankar)CEOは、当初はZK証明という一つの計算課題を解決するために構築したネットワークだったが、結果としてGPU容量を分散的に調整する基盤ができ上がり、AIも同様の基盤をより大きな規模で必要としていると説明している。
同社は14日の発表と合わせてAI推論事業への移行を開始したことを明らかにしており、正式な製品ローンチは今夏を予定する。ZK証明ネットワークについては引き続き並行して運営するとしている。