暗号資産(仮想通貨)マーケットメイカーのウィンターミュート(Wintermute)は16日、週次市場レポートを公開した。直近の市場反発について、マクロ環境の好転による安堵感に伴う戻りに過ぎず、相場の本格的な転換を示すものではないとの見方を示している。
レポートは、金融・仮想通貨市場における反発を牽引したのは、マクロ経済における不透明感の払拭だったと指摘した。
一つの主な要因は、5月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比+4.2%と加速したものの市場予想の範囲内で着地し、コア指数が+2.9%へ鈍化したことだ。これにより、インフレがピークに達しつつあるとの期待感が市場に広まった。
より大きな要因は100日以上に及んだイラン紛争が終結に向かっていることだ。国際指標であるブレント原油価格は110ドル台前半から80ドル台後半まで急落し、今週だけでも6.6%下落した。2月下旬から市場に大きな影響を与えてきた地政学的リスクプレミアムは、急速に解消されつつある。
市場全体の資金の動きを見ると、この安堵感がもたらした影響はより明確だ。原油市場から引き上げられた資金は、小型株(ラッセル2000:+4.0%)やアルトコイン(+3.1%)などリスク資産へ流入。ハイテク株中心のナスダック(+2.3%)やビットコイン(+1.9%)を上回る強い反発を牽引するなど、リスクオンの動きが強まった。
マクロ環境の好転を受けて反発した仮想通貨市場だが、ウィンターミュートはその現状について、より慎重な姿勢を示している。
6月初旬に起きた仮想通貨市場急落について、米マイクロストラテジーのマイケル・セイラー会長による32BTCの売却と、それに伴う資本不安が下落要因として語られることが多かった。しかしウィンターミュートは、この見方を明確に否定した。
下落の原因は二つあるという。一つは、インフレ懸念の高まりと強固な雇用統計(NFP)を受け、広範なリスク回避の動きが広がったこと。もう一つは、ビットコインが5月中旬に6万ドル台から8万3,000ドル付近まで大幅に回復した動きが、「弱気相場における一時的な反発(ベアマーケット・ラリー)」に過ぎなかったことが確認された点だ。
このサイクルを振り返ると、2025年10月以降に20%超の下落が3回発生している。初回と2回目は方向性のある売り圧力だったのに対し、今回の8万3,000ドルから6万ドル台への下落局面は性質が異なり、「ベアマーケット・フェイクアウト」(弱気相場における偽のブレイクアウト)だったとウィンターミュートは分析する。この動きは、ロング・ショート両方向のトレーダーを翻弄する結果となった。
パーペチュアル先物(無期限先物)・オプション市場では、方向性のあるエクスポージャーへの意欲が低調だ。こうした状況から、夏場にかけての調整局面が基本シナリオだとウィンターミュートは見ている。
仮想通貨は依然としてマクロ資産であり、市場における過剰な流動性の逃避先として機能しているとレポートは主張する。
その流動性は、ステーブルコイン、ETF(上場投資信託)、DAT (仮想通貨を主要資産として保有・運用する上場企業)という三つの主要経路を通じて市場に流入する。しかし、現物ETFは過去最長の資金流出を記録し、DATの運用資産残高はピーク時の約2,200億ドルから約1,400億ドルへ激減した。いずれの経路にも、現時点で資金流入へ反転する兆候は見られないという。
ウィンターミュートは、この状況が好転するまで、底打ちの判断は時期尚早であると主張する。実際のトレンド反転を判断するには、ステーブルコインの発行・償還動向、ETFの資金フロー、DATの投資活動といった資本の流入経路に構造的な変化が見られる必要があるとしている。
同社は、長期的なリスクとリターンの比率という観点から見れば、6万ドル台前半という現在の価格帯は十分に魅力的であると主張。相場の急落が起きるたびに、「より質が高く、確信度の高い長期保有者層」が形成されていると分析している。
ただし、これは底打ちを意味するものではない。出来高の細る夏枯れ相場の中では、状況次第で5万ドル台まで下落する可能性も排除できないとウィンターミュートは警告する。投資家へのアドバイスとして、「注目すべきは、価格でもニュースの見出しでもなく、資金の動きだ」と結んでいる。


