*本レポートは、クリプトアナリストである仮想NISHI( @Nishi8maru )氏が、CoinPostに寄稿した記事です。
ビットコイン(BTC)は6月2日から3日にかけて下落し、円建てでは一時100万円近い急落となった。
背景には、世界最大級のビットコイントレジャリー企業であるストラテジー社によるビットコイン売却が市場に波紋を広げたことに加え、米国で審議が進むクラリティー法案の先行きに対する不透明感が依然として払拭されていないことがある。
さらに、史上最大規模のIPOとなる可能性が指摘されているSpaceXの上場観測も投資家心理に影響を与えた。大型IPOへの期待が高まるなか、投資資金が暗号資産市場から株式市場へ向かうとの見方が広がり、相場の重荷となった。
デリバティブ市場のアクティブOI(成行注文による未決済建玉)の推移を見ると、7万ドル付近でロングポジションが大きく積み上がっていたことが確認できる(下画像赤枠)。
7万4,000ドル付近から7万ドル近辺まで下落した局面では、7万ドル節目価格を意識した値ごろ感による買いが活発化し、結果的に多くの投資家がロングポジションを構築したとみられる。しかし、その後の下落継続によってこれらのポジションが一斉に清算され、ロングスクイーズを誘発した可能性が高い。一方で、執筆時点ではアクティブOIの増減は落ち着いており(下画像黄矢印)、強制清算によるポジション整理はおおむね一巡したとみられる。市場の主導権は再び現物市場へ移行しつつある。
また、ハイパーリキッドの価格別清算データを確認すると、6万9,000ドルおよび6万7,000ドル付近に大規模な清算クラスターが存在していた。今回の急落局面では、これらの水準に集中していたロングポジションが連鎖的に解消されたことで、下落スピードが増幅された可能性が高い。
成行注文の売買動向を見ても、先行してデリバティブ市場で売り圧力が発生し、その後に現物市場で売りが追随する構図が確認されている(下画像青枠)。このことから、今回の急落はデリバティブ市場主導で発生した下落であったと考えられる。
今回の下落は、ストラテジー社の売却、SpaceXのIPO観測、クラリティー法案を巡る不透明感など複数の悪材料が重なったことで投資家心理が悪化した側面がある。
ただし、価格下落の直接的な要因は、7万ドル近辺で積み上がったロングポジションが大規模な清算に巻き込まれたことであり、市場構造上の要因が大きかったと考えられる。言い換えれば、ニュースによる下落というよりも、レバレッジポジションの偏りによって値動きが増幅されたオーバーシュートの色彩が強い。
足元では大規模な清算を経て未決済建玉(OI)が減少しており、デリバティブ市場由来の下押し圧力は一定程度解消されつつある。短期的な値動きには引き続き注意が必要であるものの、市場の主導権が現物市場へ戻ることで、相場は徐々に落ち着きを取り戻す可能性が高まっている。