本記事はCoinGeckoが5月4日に公開した「RWA Report 2026」は、トークン化Real World Assets(RWA)市場の最新動向を参考に分析したレポートです。2024年の規制環境整備を背景に、伝統金融(TradFi)機関の本格参入が進んだ結果、2025年を転換点として市場は大幅に拡大しました。
特に注目すべきは、 「国債トークン中心の時代から、商品・株式・ETFへの多角化が明確に進んでいる」 という変化です。この動きは、単なる市場拡大ではなく、暗号資産と伝統金融の融合が現実のものとなりつつあることを示しています。
本記事では、レポートのデータを基にしながら、日本人投資家の視点でこの転換点の意義を整理します。
市場全体の成長背景──規制明確化がもたらした実需主導の拡大
トークン化RWAの全体時価総額は、2025年初頭の54.2億ドルから2026年3月末時点で193.2億ドルへと 256.5%増加 (約3.56倍)しました。ステーブルコインに対する比率も2.7%から 6.4% へと上昇しています。
この成長の原動力は、2024年以降の規制環境の明確化です。これにより発行体は規制遵守・資産カバレッジ・流通範囲の3点で差別化を図り、CEX各社も機関投資家向けのアクセス向上に注力しました。結果として、トークン化は投機的なものから実需に基づく持続的な拡大へと移行していると考えられます。
日本市場では、2025年度の公募セキュリティトークン(ST)発行額が単年度約1,650億円、累計約3,333億円に達し、2026年度には単年度2,000億円規模が見込まれています。グローバルでのRWAの多角化と国内ST市場の活発化が連動する可能性は高いと考えられており、このセクターは注視するのが良いと思われます。
Tokenized Treasuries──基盤を固めつつ、相対的優位性がやや低下
RWA市場の中心であり続けるTokenized Treasuries(トークン化国債)は、2025年初から+90億ドル増加(+225.5%)し、市場シェアは73.7%から 67.2% へと推移しました。2026年2月11日には単独で100億ドルを超えるなど、機関投資家にとって24時間取引可能な安全資産としての地位は確立しています。
ただし、シェアの低下は「国債一強時代が静かに変化している」ことを象徴します。日本人投資家にとっては、金利変動リスクへのヘッジ手段として依然有効ですが、他の資産クラスとの組み合わせでより柔軟なポートフォリオ構築が可能になった点が重要だと言えます。
Tokenized Commodities──金トークンが牽引し、為替リスク分散の選択肢を拡大
最も印象的な成長を見せたのがCommoditiesセクターです。時価総額は14.3億ドルから 55.5億ドル へと 289.1%増加 し、市場シェアは 28.7% に拡大しました。
特に金裏付けトークン(XAUTおよびPAXG)が89.1%を占め、2026年第1四半期の金スポット取引量は 907億ドル に達し、2025年通年(846.4億ドル)をすでに上回っています。銀トークンも徐々に存在感を増しており、実物資産トークン化の裾野が広がっています。
日本人投資家にとって、これは 円安対策としての実物資産アクセスの大きな進展 です。円ベースで金価格の変動を直接捉えられるトークン形式は、為替ヘッジの観点からも魅力的な選択肢となりつつあります。伝統的な金ETFや現物保有と比較して、24時間取引可能で流動性が高い点は、国内投資家の運用スタイルに適しているとも言えるのではないでしょうか。
Tokenized Stocks & ETFs──グローバル成長株へのアクセスが身近に
2025年中盤から本格化したStocksおよびETFsセクターも着実に成長しています。
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Tokenized Stocks: 4.87億ドル (シェア2.5%) 主力はTesla、Nvidia、Alphabetなどのテック株。CircleやOndo、Backed Finance(xStocks)が市場をリード。
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Tokenized ETFs: 2.98億ドル (シェア1.5%) SPDR S&P 500など人気ETFのトークン化が進展。
2026年第1四半期のStocksトークン取引量は 151.2億ドル と、2025年後半をすでに超えています。これにより、日本にいながら世界の優良株式・ETFにトークン形式でアクセスできる環境が整いつつあります。為替リスクを考慮しつつ、成長株への分散投資を検討する国内投資家にとって、新たな機会を提供する動きと言えます。
RWA Perps市場の活況──流動性向上と運用戦略の多様化
スポット市場だけでなく、デリバティブ市場も活発です。2026年第1四半期のRWA Perps取引量は 5,247.9億ドル に達し、2025年通年(3,130.2億ドル)を大幅に上回りました。オープンインタレストも2025年平均の約5倍に拡大しています。
Hyperliquidがシェア28.6%を占めるなど、特定のプラットフォームでの活況が目立ちます。この動きはRWAの流動性が向上している証左であり、日本人投資家にとってもレバレッジを活用した柔軟な運用戦略の選択肢を広げていると言えます。
日本人投資家がこの転換点から得られる示唆
今回の多角化は、日本人投資家にとっても意義がある内容となります。
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国債トークン中心から金・株式・ETFへ広がることで、 円安局面での分散効果 が期待できる可能性があります。
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24時間取引環境は、伝統金融市場の時間制約を超えた運用利便性を提供します。
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国内セキュリティトークン市場の拡大と連動すれば、グローバルRWAを国内ポートフォリオに自然に取り入れる土壌が整う可能性があります。
RWA市場はもはや「トレンド」ではなく、 暗号資産と伝統金融を繋ぐ実需インフラ へと確実に移行しています。この変化をどう自らの資産運用に活かすか──それが今、問われていると言えるでしょう。
まとめ──実需インフラとしてのRWA市場へ
CoinGecko「RWA Report 2026」が示すように、トークン化RWA市場は国債一強の時代から、商品・株式・ETFへの多角化という新たなステージに入りました。これは規制環境の整備と機関投資家の本格参入により実現した、実需に基づく持続的成長の証と言えるでしょう。
日本人投資家として見れば、為替リスクを意識したポートフォリオ構築の選択肢が広がった注目すべき動きでもあると考えられます。今後も規制整備や技術進化を背景に、この流れはさらに加速すると予想されます。
グローバルなRWA市場の動きを丁寧に追いながら、自身の資産運用にどう活かすかを冷静に検討していく時期に来ていると言えるでしょう。
※本記事はCoinGecko「RWA Report 2026」の内容を基に、筆者独自の解釈を加えて作成したものです。投資勧誘を目的としたものではありません。記載された情報は過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の投資にあたっては、最新の市場状況やご自身のリスク許容度を十分にご検討の上、自己責任でお願いいたします。
参考:CoinGecko『RWA Report 2026』
https://www.coingecko.com/research/publications/rwa-report-2026?utm_campaign=2026-rwa-report&utm_source=x&utm_medium=social&ctcid=0e357c7a-6d38-489f-ac9f-c37f8d8ce8c5
