コインベース(Coinbase)は21日、同社が設置した「量子コンピューティング・ブロックチェーン独立諮問委員会(Coinbase Independent Advisory Board on Quantum Computing and Blockchain)」の初となる提言書を公開した。
スタンフォード大学、テキサス大学オースティン校、イーサリアム・ファウンデーション(Ethereum Foundation)、アイゲン・ラボス(Eigen Labs)など6機関の研究者が共同で作成した約50ページの文書で、量子コンピュータがブロックチェーンセキュリティに与えるリスクをチェーンごとに体系的に評価している。
提言書が示す最大の論点は、仮想通貨ごとのリスク差異だ。ビットコイン( BTC )のマイニング、ハッシュ関数、チェーン上の過去の取引記録は量子コンピュータによる脅威をほとんど受けないと評価された。
一方、イーサリアム( ETH )、ソラナ( SOL )をはじめとするプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake)チェーンは、ネットワークを保護するバリデータの署名方式に追加の脆弱性があると指摘されている。
PoSチェーンではバリデータがブロック承認のたびに署名を行い、そのデータがオンチェーン上に継続的に蓄積される。将来の量子コンピュータがその署名データから秘密鍵を逆算できる可能性があり、ハッシュ関数ベースのプルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work)とは構造的に異なるリスクを抱える。
全チェーンに共通する脆弱性として挙げられるのが、ウォレット層のデジタル署名だ。資産の所有証明に使われるこの署名は、十分な処理能力を持つ量子コンピュータが実現した場合に解読される恐れがある。
ビットコインでは公開鍵がオンチェーン上で可視状態にあるウォレットに約690万BTCが存在すると試算されており、こうしたウォレットが最も露出度が高いとされる。
イーサリアムはこの課題に対応するレイヤー1アップグレードのロードマップを公表済みで、ソラナ、アルゴランド(Algorand)、アプトス(Aptos)も量子耐性オプションの提供や計画を進めている。
移行に向けた技術的基盤はすでに存在する。米国立標準技術研究所(NIST)は複数の量子耐性暗号方式を標準化済みで、業界での採用準備は整いつつある。
ただし、量子耐性署名は現行と比べてデータサイズが大幅に増大し、トランザクション速度やコスト、ストレージに影響を及ぼす。分散型ネットワーク上で数百万のウォレットを移行させるには全ユーザーの対応が必要となり、従来型金融には存在しない規模の調整課題となる。
コインベースは「緊急になってから対応するのでは遅い」として、今が準備を始める適切な時期だと強調した。
量子コンピュータが現行の暗号を脅かす水準に達するまで少なくとも10年以上かかるとの見方が有力だが、分散型エコシステム全体のアップグレードには数年規模の準備期間が必要とされる。
コインベース自身も暗号標準の迅速な採用に対応できる柔軟なシステム構築を進め、インフラパートナーとのアップグレード準備を推進しているとしている。また、アップグレードを実行しないまま放置されたウォレットの扱いについて、各ブロックチェーンコミュニティが方針を決定し早期に公表することも勧告している。
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