分散型金融(DeFi)レンディング最大手Aaveのガバナンス組織Aave DAOは12日、開発企業Aave Labsに対する2,500万ドル(約40億円)の資金提供を承認した。創設者スタニ・クレチョフ(Stani Kulechov)氏が提唱する成長戦略 「Aave Will Win(AWW)」の資金面における第一弾となる今回の決定は、 同プロトコルの収益構造とガバナンスの在り方を根本から変える転換点として注目されている。
今回オンチェーン投票で可決されたAave改善提案は、賛成522,780AAVE、反対175,310AAVEで約75%の支持を獲得。3月初旬に行われた仮投票では投票構造への懸念も指摘され、52.58%の支持率に留まっていたが、今回の正式決議では大幅にコミュニティの支持を拡大した。
今回の承認により、Aave Labsは総額2,500万ドルのステーブルコイン助成金を受けとる。その構成は、即時割り当ての500万aEthLidoGHOと、6カ月から12カ月かけて分割支給される計2,000万aEthLidoGHOとなっている。また、エコシステム準備金からは別途75,000 AAVE(約680万ドル=約10億円相当)が拠出される。このトークンは、48カ月にわたる段階的なロック解除スケジュールに基づいて付与される。
なお、今回の投票は、より広範なAWWフレームワークのうち上記の資金提供部分のみを対象としている。AaveアプリやAaveキットをはじめとする製品から発生する報酬など、当初のAWWフレームワークで概説されていた成長・開発助成金は、別途ガバナンス提案で取り扱われる予定だ。
クレチョフ氏はX上で、今回「Aave史上最も重要な提案」が圧倒的な賛成多数で可決されたと報告し、今後の成長戦略に関するマスタープランを提示した。プランにはAAVEトークンへの価値集約、製品レイヤーの拡充と市場開拓、ガバナンスの効率化、規制ライセンスの取得と安全性確保などが盛り込まれている。
この新たな枠組みのもとでは、Aave関連プロダクトから生じる収益はすべてDAOに帰属し、開発の実務はAave Labsが担うという明確な役割分担が確立される。
これまでAave Labsは、自社製品から生まれる収益を自己資金として活用していた。aave.comのスワップ機能だけで年間1,000万〜2,000万ドルに上る収益を生み出しており、Aave DAO・Aave Labs間で、ガバナンスの対立が発生した経緯がある。
AWWが実現すれば、Aaveプロ・Aaveアプリ・Aaveカード・Aave Horizon(機関向けRWAサービス)・Aaveキットなど、すべてのAaveブランド製品から生まれる収益の100%がDAOトレジャリーへ直接流入する仕組みに変わり、AAVEトークン保有者への還元が拡大することになる。
預入資産で世界最大級を誇る同プロトコルだが、競争環境の激化やユーザー層の拡大を受け、従来の純粋なDAOモデルから、DAOが統治するグローバル金融インフラへの転換を模索している。
クレチョフ氏は2月の計画発表時、こう強調していた。
今回の投票では、マーク・ゼラー氏率いるAave Chan Initiative(ACI)が最大の反対票(166,200 AAVE)を投じた。ゼラー氏はAave Labsによるガバナンスへの影響力拡大に一貫して懸念を示しており、ACIは2026年7月にDAOとの関係を終了する見通しと報じられている。
主要コントリビューターによる離脱の動きはACIだけにとどまらない。長年、プロトコルに技術的に貢献してきたBGD Labsは中央集権化への懸念を理由に4月1日付でDAOとの関係を終了した。また3年間にわたり、Aaveのリスク分析を担ってきたChaos Labsも6日、予算不足を理由に撤退を表明している。
今回のAWW計画に基づいた資金提供の可決は、Aaveによる戦略的転換の決定的瞬間となった。一方で、今後の分散型組織のガバナンスのあり方を問う試金石ともなっている。


