政府は4月10日の閣議で、金融商品取引法の改正案を閣議決定した。暗号資産(仮想通貨)を法律上の「金融商品」として正式に位置づける歴史的な一歩であり、インサイダー取引や相場操縦といった不公正取引の規制が初めて仮想通貨市場に適用されることになる。
今国会で成立した場合、2027年度中の施行を見込む。
発行者への情報開示義務も柱のひとつで、年1回の開示が義務化される。株式市場の透明性基準が暗号資産市場に持ち込まれることで、国内外の機関投資家が参入しやすい環境が整うとみられる。
今回の改正では、罰則の大幅引き上げも盛り込まれた。無登録で販売した業者への拘禁刑は現行の3年以下から10年以下に、罰金も300万円以下から1000万円以下へとそれぞれ引き上げられる。
今年3月には、高市早苗首相の名を冠した「サナエトークン」が暗号資産交換業の登録なく発行・販売され、金融庁が実態把握に乗り出す事態となった。政府関係者や著名人の知名度を悪用した無登録トークンの横行は社会問題化しており、今回の罰則強化はこうした事案への抑止力として直接機能することが期待される。
片山さつき金融相は、この日の記者会見で「金融資本市場の変化に対応して成長資金の供給を拡大し、市場の公正性・透明性と投資者保護を確保する」と述べた。
業界が長年求めてきた分離課税(20%)は、この金商法移行を前提に2028年1月からの施行が見込まれている。今回の閣議決定はその制度的な一丁目一番地であり、法改正→業界の体制整備→税制施行という3段階の整備が動き出した格好だ。
CoinPostが先日実施した片山大臣へのインタビューでは、大臣自身が「本当に今、ちょうど時代が動いてきているタイミング」と発言。規制整備と税制改革をセットで推進することで、他の先進国に遅れを取ることなく、日本が暗号資産分野における「デジタル元年」を実現するという方針が改めて示されている。
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先日、CoinPostが国内主要取引所のトップらに取材したところ、制度整備への期待と実務上の懸念が交錯する実態が浮かび上がった。
bitFlyer Holdings代表取締役CEOでJBA代表理事の加納裕三氏は「規制が整備されることで、機関投資家や金融機関を含む投資家層が拡大する」と評価。ビットバンク代表取締役社長CEOでJCBA会長の廣末紀之氏も「既存金融業界との接続が進むことで、ETFなどの金融商品の誕生や既存アセットクラスのトークン化(RWA)の流れが加速する」と期待を示した。
SBIホールディングス常務執行役員でJVCEA代表理事の小田玄紀氏は、市場規模の観点から踏み込んだ見方を示す。かつて世界の50%近くあった日本の暗号資産市場シェアが現在1%にまで落ち込んでいるとしたうえで、「一連の改正が進むことで、市場シェアが15〜20%近くになる可能性もある」と述べ、経済・財政への貢献にも言及した。
一方で、業界からは懸念の声もあり、事業者側のコスト負担を懸念する声も根強い。
ARIGATOBANK代表取締役でJCBA副会長の白石陽介氏は「コスト負担と審査の高度化によるIEOや新規上場銘柄数の減少という両面から事業基盤が圧迫され、業界の再編が進む可能性がある」と指摘。廣末氏も「法施行までの時間が限られている中で、態勢整備が間に合わない可能性がある」と警戒感を示した。
イノベーション面での懸念を強調するのはProgmat代表取締役CEOの齊藤達哉氏だ。「規制業者による取引は取引安全性・公平性が最重視されるため、イノベーションの中心地はDeFiがほぼ唯一の選択肢になる」と述べ、DeFi規制が強まった場合に革新的な体験創出が困難になるリスクを示唆した。
Startale Labs CEOの渡辺創太氏も「(日本のイノベーション発展のためは、)アメリカよりも厳しい規制を作らないことが何よりも重要」と釘を刺す。
投資家保護の強化という方向性に異論はないものの、施行に向けた実務整備の速度と規制の設計次第で、業界の姿が大きく変わりうる。2027年度の施行まで残された時間は決して多くない。
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