様々なアップデートが導入されていった結果、イーサリアムL1(メインネット)のガス代がかなり安くなってきていることが話題になっています。
以前は取引やNFTのmintに 多額のガス代が発生 し、気楽に少額の利用に使えるチェーンでは無くなっていました。特に2021年はその高いガス代に慣れてしまって、感覚がマヒしていたように感じます。
2026年3月現在、平均ガス価格は0.3〜0.4 Gwei台と低水準で、日常的な取引が数円で済むケースも増えています。
これを背景に、ENS(Ethereum Name Service)は独自のL2プロジェクトを中止してL1への完全移行を発表しました。 Vitalik Buterin氏も従来のL2の方向性を「時代遅れ」と指摘する など、コミュニティでは「もうL2は必要ない」「L1だけで十分」という意見が広がっています。
ただ、この 「L2不要論」 については、少し疑問を感じます。
なぜなら、L2の本当の役割はガス代を安くする点だけではないからです。
L2の価値は、イーサリアム全体をスケールさせながら、
ひとつにまとまった経済圏として保つ
ところにあります。
そして、この大切な部分に正面から取り組む新しいプロジェクトが登場しました。それが EEZ(Ethereum Economic Zone) です。
L2不要論が気づいていないもう一つの課題
L2ロールアップのおかげで、取引のスピードとコストは確かに大きく改善されました。これは大きな進歩です。
しかし、その一方で新しい課題も出てきています。それは
各L2が独立した状態になっている
ことです。
具体的には:
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流動性がチェーンごとに分かれてしまっている
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各プロトコルが複数のチェーンに別々のバージョンを作らなければいけない
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ユーザーがチェーンを移動するたびにブリッジを使い、時間や手数料がかかる(まれに資産のリスクも伴う)
L1のガス代が安くなったからといって、この分断の問題が自然に解消されるわけではありません。むしろ「安いL1とバラバラのL2」が並存する状況になりやすい点が気になるところです。
「L2いらない」という見方は、このもう一つの側面を見落としているように感じます。
EEZが目指す「真のひとつになるイーサリアム」
イーサリアム財団の資金提供を受けて、GnosisとZiskが共同で進めているのが EEZ です。
このプロジェクトのポイントは、L1(メインネット)とL2が 同期して連携できる仕組み を作ることです。
EEZ対応のロールアップにプログラムを置くと、ブリッジを介さずにメインネットや他のEEZロールアップ上のプログラムを 一つの取引の中で安全に呼び出せる ようになります。すぐに結果が返ってきて、そのまま使える形です。
これにより、流動性を全体で共有したり、チェーンをまたいだ取引をスムーズに進めたり、セキュリティを統一したりといったことが期待できます。つまり、「たくさんの独立した島の集まり」ではなく統合されたイーサリアム経済圏を目指しています。
L1が安くなった今こそこの仕組みの意義がより明確になると考えています。
*なお、EEZは2026年3月発表の新枠組みであり、技術詳細・実装可能性は今後の公開を待つ必要があります。
EEZがもたらす主な利点
イーサリアム全体にとって
ETHはこれからもガス代の支払いや決済、信頼の基盤として中心的な役割を続けます。ロールアップ上の活動はイーサリアムから価値を奪うのではなく、セキュリティを共有しながら拡張される形になります。
プロトコル開発者にとって
複数のチェーンに別バージョンを用意したり、ブリッジ対応を管理したりする手間が大幅に減ります。一度開発すればEEZ全体のユーザーをカバーできる可能性が高まります。
ユーザーにとって
資産やポジション、アイデンティティがチェーンを意識せずに使えるようになり、「ひとつのイーサリアム」という自然な体験に近づきます。ブリッジ操作はほとんど不要になり、ガス代も基本的にETHで支払えるようになる見込みです。
プロジェクトの背景と特徴
Gnosisは2015年8月からイーサリアムインフラの構築に携わってきた長い実績があります。DeFiの基礎となる仕組みやSafe(預託資産580億ドル超のウォレット)などを手がけ、Gnosis Chainも7年間安定して運用してきました。
技術面では、ZiskのJordi Baylina氏を中心に進められています。
このプロジェクトはイーサリアム財団の支援を受け、特定の企業が独占するものではなく、信頼できる共有インフラとして設計されています。
また、EEZは単なるL2の枠組みではなく、L1とL2の間に位置する新しいアプローチです。すべてオープンソースで進められ、誰でも参加できる形になっています。
これからの動き
EEZは現在、インフラストラクチャチームやプロトコル開発者、ブロックビルダー、エコシステム貢献者と協力してアライアンスを広げています。
すでにAave、Titan、Beaver Build、Centrifuge、xStocksなどの有力プロジェクトが初期メンバーとして参加を表明しており、これはEEZが多くの支持を集め始めている証拠と言えそうです。
この取り組みは閉じたグループではなく、イーサリアムエコシステム全体からさらに多くのプロジェクトや開発者を歓迎するオープンな形です。
今後数週間以内に、以下の内容が順次公開される予定です:
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技術アーキテクチャとプロトコル仕様の詳細
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パフォーマンスに関するベンチマークデータ
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開発者向けツールと連携方法
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既存プロトコルがEEZに参加するための具体的なガイドライン
これらの情報が公開されれば、多くのプロジェクトがスムーズに連携できるようになると期待されています。
最後に
イーサリアムのガス代が安くなったことは、間違いなくポジティブな変化です。度重なるアップデートによって改善されてきています。
ただ、それはL2の役割が終わったことを意味するわけではなく、むしろL2がこれまで以上に大きな価値を発揮するための土台が整ったタイミングだと考えています。
EEZは、 L1とL2を『統合されたイーサリアム経済圏』 にするための重要な取り組みの一つです。
断片化が進む中で、統合と連携を取り戻そうとするこの動きは、イーサリアムの今後の方向性を考える上で非常に意義深いものになると感じています。
今後の技術詳細の公開や、新たな参加プロジェクトの動きに、しっかり注目していきたいと思います。
*本レポートは投資勧誘を目的としたものではありません。暗号資産取引には価格変動リスク等が伴います。取引はご自身の判断と責任でお願いいたします
