暗号資産市場の全体時価総額は350兆円を超え、米国のマグニフィセント・セブン(ビッグテック7社)に匹敵する規模に達している。
トークセッションの冒頭、あたらしい経済編集長 設楽氏の「トランプ米政権による後押しもある中、現時点で暗号資産はアセットクラスとしてどのような立ち位置にあるか」との問いかけに対し、SBIグローバルアセットマネジメント代表取締役社長の朝倉氏は次のように応じた。「ビットコイン単体でも時価総額は200兆円規模に達している。もはや投機的な商品ではなく、金融資産のポートフォリオに組み込むべき資産クラスの一つと言える。」
日本国内の暗号資産口座数は約1,400万口座で、国内投資家のNISA口座数の約半数に相当する規模となっている。
暗号資産の税制改正は2028年1月に実施される見通しで、暗号資産ETF(上場投資信託)の解禁はそのタイミングになると見られている。朝倉氏は「すでにビットコイン現物ETFが米SEC(証券取引委員会)に承認された米国では、2024年1月の上場からわずか2年で25兆円規模に達した。
日本の投資家だけが世界に置いてかれている状況は早急に改善すべきだ」と語り、ETF解禁が「貯蓄から投資」を加速させる起爆剤になるとの見方を示した。
金融システム開発を手がけるシンプレクスでWeb3・FX領域の事業開発に携わる三浦氏は、「ブロックチェーン技術が成熟期を迎えつつある一方、課題として残るのはプライバシーへの対応だ」と指摘した。
「ブロックチェーンの強みはオープンで検証可能な点にあるが、それがそのままプライバシーとのトレードオフになる。必要な人にだけ情報が見えるような技術が実装されれば、金融インフラとして格段に強固なものになる」と述べた。
資産のトークン化については、朝倉氏が上場済みの公開資産だけでなく、未公開株・不動産・絵画・映画・ワインといったプライベートアセットが証券化され、一般の投資家が手軽に売買できる時代が来ると解説。
「例えば、テイラー・スウィフトのアルバムのトークンを持つとコンサートへの優先権が得られる、バーキンのトークンを持つと購入権が得られるそうした仕組みが広がれば、一度その利便性を体感した投資家は元の市場には戻れない」と語った。
ステーブルコインについても、クロスボーダー決済や即時決済を実現する「最後のピース」として位置づけ、2028年以降は金融取引の裏側でトークン化証券とステーブルコインが標準的に使われる未来が現実味を帯びてくるとした。
AIエージェントが自律的に資産運用を行う未来については、朝倉氏が「平常時であれば最適解を出し続けられるが、市場が急変するレジーム・チェンジの局面では人間の感情が入り込む。その時に『大丈夫だ』と寄り添えるファイナンシャルアドバイザーの存在は、20年後も置き換えられない」と述べた。三浦氏も「最終的な責任は人間が取るという前提でAIの判断権限にラインを引く設計が必要になる」と技術的な課題を指摘した。
20年後のビジョンとして朝倉氏は、2200兆円ある日本の家計金融資産のうち半数を占める現預金が資産クラスの多様化によって自然と投資に向かい、「貯蓄から投資」と声高に言わなくて済む社会の実現を展望した。
三浦氏は「映画監督になりたいといった夢に対してお金が集まる仕組みが生まれるなど、金融がトライする人の可能性を最大化するツールになっていてほしい」と語り、デジタル金融が単なる効率化にとどまらず、個人の選択肢を広げるインフラになる未来像を示した。